高野山高野山全体が濃い霧と静寂に包まれた早朝、ダライ・ラマ法王は滞在先である金剛峯寺を出られ、高野山大学松下講堂黎明館に向かわれた。 この日、法王は「21世紀における仏教徒の使命」と題して9時から講演を行なわれることになっていたが、開始時刻より20分以上早く会場に到着され、少しでも早く登壇して聴衆の質問に応えることを望まれた。法王が、席を埋めつつある聴...
高野山小雨の降る肌寒い灰色の朝、ダライ・ラマ法王は大阪を出発された。曲がりくねった狭い道を上った先には、立ち上る霧と赤い紅葉に彩られた高野山が顕れた。高野山は弘法大師空海によって1200年前に開かれた高野山真言宗の聖地で、現在117の子院が並ぶ。 法王をお乗せした車は、聳え立つ木々の間を縫って進んだ。厳かでピンと張りつめた空気はチベットを思わせる。二時...
大阪 昨日の昼食休憩後、ダライ・ラマ法王はシャーンティデーヴァ(寂天)の『入菩薩行論』の法話会を再開された。 法王はテキストの大切な部分を要約して説明され、その中で以下のことを強調された。すなわち、もしこのテキストを最初から最後まで通して勉強する時間がないならば、テキストの中で最も大切な章は忍耐について説いている第6章と、自分と他者は平等であると瞑想...
大阪 本日ダライ・ラマ法王が、落成したばかりの清風学園新校舎の大師ホールに到着されると、会場を満席にした約千人の法話参加者が法王を歓迎した。ダライ・ラマ法王秘密集会実行委員会委員長の菅智潤氏の挨拶に続いて、会場の清風学園理事長の平岡英信氏が歓迎の辞を述べた。 「当初は秘密集会の灌頂を授ける予定でした。しかし9月にはヨーロッパを二週間訪れ、ダラムサラに...
大阪肌寒い今朝の曇り空の下、ダライ・ラマ法王は、大阪市天王寺区の清風学園清風中学・高等学校に到着されると、平岡英信学園長のお出迎えを受けられた。約3,000人の生徒と職員たちは、校庭で法王のご到着を興奮気味に待っていた。法王はステージへ向かわれる途中、何度も足を止めて生徒たちと挨拶を交わされた。法王が着席されると、生徒たちは『般若心経』を読誦した。 最...
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1993年4月 ワシントンD.C. 人々は数千年にわたり、厳格な規律手法を用いた権威主義的組織だけが人間社会を統治できると信じ込まされて来ました。しかし、人間には生まれつき自由を願う性質があります。ですから自由を求める勢力と抑圧する勢力は、歴史上ずっと戦いを続けてきました。今日どちらが勝利を収めつつあるかは明らかです。左右の独裁体制を打倒して人民が権力を奪...
ダライ・ラマ14世 テンジン・ギャツォ 以下は、2005年11月12日にワシントンDCで開催された神経科学学会の年次総会でダライ・ラマ法王が行なわれた講演に基づいてまとめられた。 この数十年の飛躍的な進歩は、人間の脳と人間のからだをひとつの全体として科学的に理解するようになったことです。さらには新たな遺伝学の出現にともない、神経科学者たちの知...
2006年3月27日、ダラムサラで行われた大祈願祭(モンラム)の法話が終わった後、チベット本土から来訪した多数のチベット人たちにダライ・ラマ法王はいくつかの論点を熱心に語られた。その一つは、チベット人、そして仏教徒は仏教の教育、普及、実践において質を最重要視するべきであるという内容であった。以下はその概要を編集者が英訳したものである。 知識という基準で私た...
もし教育と報道に特別な責任がある分野があるなら、それは我々の自然環境だと私は信じています。この責任とは、正しいか間違っているかという問題ではなく、生き残れるかどうかということに関係しています。自然界は我々の家です。かならずしも畏怖すべきものや神聖なものではありません。単に我々が住む場所です。 そのため、私たちは自然を大切にしなければなりません。これは常...
今宵は、仏教では自然がどう捉えられているかお話しましょう。 ナーガールジュナ(龍樹)は、実体の無い空(くう)が可能な体系においては、あらゆる働きもまた可能であり、働きが可能であるがゆえに、空もまた可能である、と説いています。ですから、自然とは何かといえば、自然は究極、空です。では、空とは、サンスクリット語で言うシュニヤーターとは、何のことでしょう。...
よくチベットでは、山には神々が住んでいると思われています。例えば、アムニェ・マチェンというチベット北東部にある山には、私の故郷アムド地方で最も大切な神様の一人マチェン・ポムラが住んでいると信じられています。アムド地方の人は皆マチェン・ポムラを自分達の特別な友人のように思っていて、多くの人がその山の麓を巡る巡礼に行きます。 一般にチベット人は、まわりにある高...
20世紀の幕切れが近づくにつれ、世界はいよいよ小さくなってきました。今や世界中の人々は、ほとんど単一のコミュニティーに属しているようなものです。政治的、軍事的な同盟関係が、大規模な多国間の集団を形成し、産業と国際貿易が、全世界規模の経済を育ててきました。距離的な隔たり、言語や民族の壁といった昔ながらの障害は、世界的なコミュニケーションの発達につれて、影が薄く...
環境変化の科学的な予測を普通の人間が完全に理解するのは難しいことです。気温上昇、海面上昇、がん発生率の上昇、とてつもない人口増加、資源の枯渇や種の絶滅などについて耳にすることがあります。すべての生き物が依存する自然生態系の重要な要素の破壊が、人間の活動によって早まっています。 これらの脅威的な発展は個々でも劇的であり、同時に驚くべきものです。世界人口は今世...
少年だった頃、私は仏教の勉強を通して、環境に対して思いやりを持って接することの大切さを教わりました。仏教徒が実践している非暴力の教えは、人間のみならず、一切有情――心を有する生きとし生けるすべてのもの――を対象としています。心があるところには、苦痛やよろこび、うれしさといった感情があります。有情はみな、苦しみを望んでいません。幸せを望んでいるのです。私は、一...
信仰の自由国際協会(IARF)ラダック・グループによって準備された、共存と世界平和・異なる宗教間の調和の維持に関するこのインターフェース・セミナーに出席することを、私は大変嬉しく思います。協会の歴史、活動、目的、そして今世紀においての適合性について、詳細な説明を本当に有難うございました。講演者が既に述べられたことについて、私は何も付け足すことがありません。し...
私は、世界人権宣言採択・署名50周年を世界規模で記念することを知り、大変勇気づけられました。また、国連人権高等弁務官事務所が、一般の人々がその権利を十分理解することができるように、世界人権宣言を世界中で調査し普及することを目指していることを知り、とても喜んでいます。 人権は普遍的な重要性を持っています。なぜなら、自由、平等、尊厳を望むことは人間本来の性質で...
もちろん、戦争と巨大軍事組織が世界で起きている暴力の最大なる源です。その目的が攻撃的か防御的かにかかわらず、これらの巨大組織は人を殺すだけのために存在しています。我々は、戦争の現実性を注意深く考えるべきです。我々の多くは、戦闘は刺激的かつ魅力的なものであり、男性が彼らの能力と勇気を証明するための機会であると考えるような状態にされています。軍隊は合法であるため...
1993年4月 ワシントンD.C. 1. 人々は数千年にわたり、厳格な規律手法を用いた権威主義的組織だけが人間社会を統治できると信じ込まされて来ました。しかし、人間には生まれつき自由を願う性質があります。ですから自由を求める勢力と抑圧する勢力は、歴史上ずっと戦いを続けてきました。今日どちらが勝利を収めつつあるかは明らかです。左右の独裁体制を打倒して人民が権...
朝に目覚めてラジオを聞き、新聞を読むならば、暴力、犯罪、戦争、災害といった悲しいニュースに必ず接する毎日です。どこかで起こる何か恐ろしい出来事の報道がない日など一日も思い起こせません。今日のように近代化された時代であろうとも、人々の尊い命が安全であるといえないことは、明らかです。過去のいかなる時代といえども、今日の私たちほど、多くの悲しいニュースに接した経験...
はじめに チベット内外のチベット人をはじめとするチベット仏教の追随者である僧俗すべて、ならびにチベットおよびチベット人に関わりのあるすべての方々に申し上げます。雪の国チベットでは、過去に出現した王、大臣、学者、成就者たちの恩を受け、三乗(声聞・独覚・菩薩)および四部タントラ(作・行・瑜伽・無上瑜伽)に集約される完全なる仏勝者のお言葉と思想からなる教説と...
2011年3月19日亡命生活が始まって以来、私は30年以上にわたり民主的な統治制度の確立に真摯に取り組んできました。「我々の民主主義はダライ・ラマ法王の贈り物だ」と亡命チベット人は言います。10年前、カロン・ティパをダライ・ラマによる候補者指名ではなく民主的に選出する制度が導入されました。ダライ・ラマによる候補者指名は正しいものではなかったからです。カロン・...