インド、ラダック地方レー、シワツェル
今日は西暦でダライ・ラマ法王の91歳の誕生日にあたり、その祝賀式典がラダック地方レーのシワツェル法話会場で行われた。法王が公邸から演壇へ向けてマイクロバスで向かわれると、白いカタ(儀礼用の絹のスカーフ)を手にした敬虔な人々が道沿いに並んでお迎えした。法王は微笑みを浮かべながら、人々に手を振って応えられた。演壇の近くでは、雪獅子(スノーライオン)やヤクの着ぐるみ、民族衣装をまとった女性の踊り手たちが法王を歓迎した。トゥクセ・リンポチェが出迎える中、ラダックの伝統的な太鼓奏者たちが歓迎のリズムを響かせた。
![]()
法王は満面の笑みをたたえて演壇の端に立ち、集まった約2万5000人の大聴衆に挨拶をされた。続いて、この日の祝賀行事のめでたい幕開けを記念し、バターランプに火を灯された。その後、ラダック仏教協会(LBA:Ladakh Buddhist Association)のツェリン・ドルジェ・ラクルク会長、中央チベット政権(CTA:Central Tibetan Administration)のペンパ・ツェリン首席大臣、そしてティクセ・リンポチェの3名から、仏陀の身・口・意を象徴する品々が法王に捧げられた。
トルマ(儀式用のケーキ)を思わせる形のバースデーケーキが法王に捧げられた。法王はケーキカットの代わりに、そのケーキをひとつまみとって召し上がられた。
![]()
ツェリン・ドルジェ氏は、集まった人々に向けて次のように述べた。
「慈悲の心から、あらゆる誤った見解を取り除く教えを私たちに授けてくださった釈迦牟尼仏に五体投地し、礼拝いたします。そして、ジェツン・ジャンペル・ンガワン・ロブサン・イェシェ・テンジン・ギャツォという御名を持たれるダライ・ラマ法王、僧伽(サンガ)の皆さま、主賓の方々、社会正義・エンパワーメント大臣、チベット最高司法委員会のイェシェ・ワンモ委員長、亡命チベット議会議長のドルマ・ツェリン氏、そして中央チベット政権のペンパ・ツェリン首席大臣にご挨拶を申し上げます」
「本日、会場にお集まりの皆さまは、法王の91歳の誕生日をお祝いするために参集されました。この機にラダック仏教協会およびラダックに暮らすチベット人を代表し、ダライ・ラマ法王にご挨拶を申し上げるとともに、お誕生日のお祝いを申し上げます。法王が今こうして私たちの間におられることは、まさに私たちの幸運であります。法王が長寿で健やかにお過ごしになり、あらゆる願いが叶いますよう祈念いたします」
![]()
続いて、法王はチベット博物館のテンジン・トプデン館長に招かれ、iPad をタップしてご自身に関する一連の短編アニメーション映画を公開された。これらは、ニューヨークのチベット・ハウスが制作したグラフィック伝記『Man of Peace: The Life and Legacy of His Holiness the 14th Dalai Lama(平和の人 — ダライ・ラマ法王14世の歩みと遺産 —)』に着想を得たものである。
![]()
続いて、ペンパ・ツェリン首席大臣が、中央チベット政権内閣(カシャック)の声明を読み上げた。
「偉大なるダライ・ラマ14世法王猊下のめでたき91歳の誕生日に際し、内閣はチベット内外のチベット人を代表し、法王に深甚なる敬意を表し五体投地を捧げます。この偉大な慶祝の機会を、喜びと敬虔の心をもって祝っているご来賓の皆さま、サンガの皆さま、そして世界中の人々に、私たちは温かいご挨拶を申し上げます」
「昨年、内閣は『慈悲の年』を世界的に祝うことを公式に発表しました。これは、法王の計り知れないご慈悲に対する感謝の表れであると同時に、法王が掲げておられる4つの主要な使命に対する世界的な認識を高めることを目的としたものでした。第1の使命は、基本的な人間価値を広めること。第2は、異なる宗教間のより大きな調和を育むこと。第3は、雪国チベットの固有の言語と文化を守り、その自然環境の保護に貢献すること。そして第4は、古代インドの智慧に対する理解と認識を復興させることです」
「これらの使命は、すべての生きとし生けるものと世界のために、永続的な平和、調和、そして幸福を育むための卓越したビジョンを体現しています。中央チベット政権は、これらの使命をより広く知ってもらうために広範なプログラムを実施してきました。同時に、タルチョ(祈祷旗)の掲揚、屠殺される運命にある動物の救済、カンギュル(経典)の読誦、真言の読誦といった、宗教的・人道的・地域社会への奉仕活動も行われました。さらに、高齢者や障害のある方々への食料、衣類、寝具の寄付など、公共奉仕と慈悲の精神に基づく多くの善行が実施されました」
![]()
「ヒマラヤ地域全域において、数多くの団体や組織が『慈悲の年』を記念して植樹活動や環境美化キャンペーン、その他の取り組みを実施してきました。また、米国を中心に世界各都市でダライ・ラマ法王の誕生日を『慈悲の日』として公式に宣言したことは、まことに心温まる事柄であります。これは、慈悲や非暴力、異なる宗教間の調和、人間の価値についての法王のメッセージが普遍的な意義と魅力を保ち続けていることを力強く示すものです」
続いて、ラダック仏教協会が、ラダックの学校改革における功績を称え、ラダック連邦直轄領教育局長バヌ・プラバ氏を表彰した。法王は、額装された表彰状を授与し、仏陀像を贈られた。
続いて、ドルジェ・スタクモ&グループにより、法王と誕生日を祝う一連の歌が披露された。その歌詞は、法王を次のように歌っていた。
「手に白い蓮華を持つ御身よ、すべての生きとし生けるものを慈悲のまなざしで見守られる、我らの守護者パドマパーニ(蓮華手観音菩薩)。平和を掲げる我らのラマよ、太陽のような御身に、私たちは深く礼拝いたします。その智慧と慈悲は、虚空のように広大で、大海のように深遠です」
![]()
法王は、会衆に向けてお言葉を述べられるよう招かれた。
「今日、ここラダックでは、人々が揺るぎない信仰と献身、そして強い精神的な絆を保っています。また、世界各地から多くの方々がここに集まっておられます。皆さんは、私が長く生きられるよう祈ってくださっていますが、私のほうからも祈っています」
「世の中には、精神的な信仰を持たない人々もいます。私が1954年から55年に中国を訪問した際、毛沢東は私に『宗教は阿片のようなものだ』と言いました。しかし、仏法(ダルマ)の実践とは、単に神々を祀ったり、祈りを唱えたりすることだけではありません。本来の意味は、心を変容させ、心を善行の実践へと向けていくことにあります。仏法を実践することの意義は、心を静め、心を鍛えることにあります」
「私自身、朝目覚めるとすぐに、(先ほど述べた)この祈りを唱えます。これはジェ・ツォンカパが『菩提道次第広論』の結びの回向文で記したものです。“仏法がまだ広まっていないところ、あるいは広まったものの衰えてしまったところにおいて、大いなる慈悲に動かされて、私がそれを復興し広める者となりますように”」
![]()
「ウ・ツァン、カム、アムドというチベットの3地域に住む私たちチベット人は、皆、仏法の敬虔な信者です。この仏陀の教えは私たちの文化的伝統の一部となっており、そのおかげで私たちは自らの心を律し、内なる平和を育むことを学んできました」
「旅をする中で、仏法が中国の人々に大きな影響力を持っていることを目にしてきました。私たちチベット人は亡命の身となり、インド各地の居住区で暮らしていますが、インドの隣人たち、そして他の地域の人々も、次第にチベット人を理解し、評価してくれるようになりました。どうか私とともに、この祈りを唱えてください。“大いなる慈悲の心をもって、仏陀の教えを明らかに照らし出し、かつて広まったものの衰えてしまったところにおいて、私がそれを復興し広める者となりますように”」
「誰もが世界の平和を祈っています。私もまた、目覚めるとすぐに、菩提心の瞑想実践を通じて、仏法と衆生のために祈りを捧げています。先ほどの祈りを私は毎日唱えていますが、その願いが成就しつつあると感じています。中国の人々の間で仏教が復興し、広く浸透しつつあります。そして世界の他の多くの地域でも、人々が愛と慈悲の教えに関心を寄せています。温かい心、すなわち他者に利益をもたらそうとする思いは、どこにおいても人々が賞賛するものです」
「私は朝目覚めるとすぐに、利他の心である菩提心と空の智慧について瞑想します。どこへ行こうとも、温かい心を持ち、他の人々にもその心を育むよう勧めています。人々の間に温かい心を広めようと努めています。“大いなる慈悲の心をもって、幸福、安寧、利益につながるこの宝(仏法)を明らかに照らす者となりますように”」
![]()
「こうして私は91歳の誕生日を迎え、91歳に達しました。これまでの人生を振り返ると、他者を助けようとするこの利他的な思いこそが、私の修行の中心にあり続けました。これは、私が毎朝目覚めた瞬間に思い起こすことでもあります。世界のどこへ行っても人々が私を敬ってくれるのは、私が大切にしているこの温かい心、他者に利益をもたらしたいという思いがあるからこそだと思われます」
「私は91歳ですが、夢の示すところによれば、私はどうやら130歳まで生きるかもしれません。ですから、仏陀の教えを通じて中国の人々を助け、また世界中の人々が善良で前向きな人生を送れるよう手助けしたいと願っています。これが私の切なる願いです。ありがとう」
ラダック語通訳が、法王のお言葉をラダック語に訳した。その後、チベット亡命議会(Tibetan Parliament in Exile)のドルマ・ツェリン議長が、議会声明を読み上げた。
![]()
「チベット本土および亡命地に暮らすすべてのチベット人を代表し、チベット亡命議会は、慈悲の体現者であり、世界の気高い守護者にしてすべての生きとし生けるものの友である、偉大なるダライ・ラマ14世法王猊下に心からのご挨拶を捧げるとともに、限りない喜びと深い敬意、そして歓喜の念を表します。チベットの人々にとって、帰依処も、守護者も、擁護者も、法王猊下をおいて他におりません。猊下こそが私たちの希望であり、守護者であり、庇護者であられます。感謝の念を込めて、私たちは次の祈りの言葉を捧げます」
「感謝の念を込めて、私たちはチベットの人々の大義のために、心を一つにして取り組まなければなりません」
SOSチベット子ども村の生徒たちが、法王の誕生日を祝って歌と踊りを披露した。レーとカルギルのイスラム教徒コミュニティを代表して、アシュラフ・アリ・バルチ氏がお祝いの言葉を述べた。ミパム・ウーセル氏の演出によるラダック・シアター・オーガニゼーションは、アングリマーラの物語に基づく短い劇を上演した。アングリマーラは、千人の指を集めて数珠を作ろうとする凶暴な盗賊であった。しかし、仏陀に出会ったことで仏法に感化され、暴力は何の成果ももたらさないこと、そして慈悲こそが弱さではなく強さの証であることを理解したのである。
![]()
法王は、ラダックの各グループによる歌と踊り、そしてそれに続いたソナムリンのチベット人居住区の住民たちによる演目を目にされて、たいへんご満悦のご様子であった。また、インダス川の対岸にあるチュショト村の人々による吉祥の献呈も楽しげにご覧になっていた。
ラダック僧院協会(LGA:Ladahk Gompa Association)のゲシェ・ロブサン・タシ副会長は、謝辞の中で、法王のご長寿を祈願した。そしてリンポチェ方、サンガのメンバー、首席大臣、そしてインド政府関係者に敬意を表し、法王が本日の祝賀式典にご臨席の上、司ってくれたことに対して深い感謝の意を表した。
「法王のお声を耳にし、私たちは喜びに満たされております。仏陀が予言された通り、法王は観音菩薩であられます。雪国チベットこそ、法王が住まわれる地です。どうか、これからも幾度となくラダックへお越しくださいますようお願い申し上げます」
![]()
そして、スピーチをした方々、祝賀式典を盛り上げる演目を披露した方々に感謝の意を述べた。また、この式典を成功させるために尽力したすべての関係者に謝意を表し、最後に次の祈りの言葉を捧げて締めくくった。
その後、法王は終始ほほ笑みをたたえながら公邸へと戻られた。法王がお帰りになった後も祝賀式典は続き、伝統的な “ハッピー・バースデー・トゥー・ユー…” の歌がチベット語の詞で楽しく歌われていた。










