インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ
今朝、ここ数日にわたり北インドを襲っていた豪雨は止み、太陽が顔を出した。ツクラカンの中庭には韓国と東南アジア10カ国から1,000人を超える人々が集まり、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願して自国の文化伝統芸能を披露した。
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色とりどりの布で飾り付けられた中庭は、マリーゴールドの花輪が吊るされ、蘭の花がずらりと並び、床には絨毯が敷かれていた。法王が公邸の門に到着されると、主催グループの代表たちが法王を出迎えた。ツクラカン下のベランダに配された法座までの通路には、獅子舞の衣装をまとった踊り手たち、そして法王のために後で踊ることになるアーティストたちが並んでいた。法王はいつものように、喜びに満ちた表情で左右に集まった人々に手を振り、通路の先頭に座るパーリ語の伝統(テーラワーダ)の僧侶たちには立ち止まって挨拶された。
シンガポールのチベット仏教センター会長のシスター・ウィニーは、法王、僧院の僧伽の方々、その他すべての来賓たちに敬意を表してから、ここに集う人々が法王の長寿とご健康、ずっと法輪を回し続けて(仏法を説き続けて)くださるように祈っていると述べた。そして、法王が世界に与えられてきた善行を称えて、“思いやりの年” を象徴するメダルを法王に捧げた。
本イベント共催者の一つで、タイのチェンライにあるライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)座主のプラメティワチロドム・V・ワチラメティ師が率いる約30名のテーラワーダの僧侶たちが、法王の長寿と世界平和を願う祈願文をパーリ語で唱える中、主催者代表の14名がマンダラと仏陀の身口意の象徴を捧げた。
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式典参加者全員を代表して、ベトナム仏教僧伽(Vietnam Buddhist Sangha)執行委員会副委員長であり、ベトナム中央委員会副委員長でもあるティク・ナット・トゥ師が共同声明を読み上げた。法王は、世界で最も著名で尊敬される仏教指導者であり、平和、普遍的責任、自己規制、そして宗教と社会の調和という理想を体現されているとし、法王がノーベル平和賞、米国議会名誉黄金勲章、テンプルトン賞など、数々の賞を受賞されたことを想起させた。
続けて、法王は生涯をかけて仏教の伝統を強化する一方、同時に異なる宗教間の対話を促してきたことが述べられ、揺るぎない非暴力や環境保護、チベット文化保全への法王の使命は、世代を超えて人々にインスピレーションを与えてきた。
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ゆえに、アジアの仏教指導者と仏教徒たちはダライ・ラマ法王の90歳の誕生日を祝うためダラムサラに集い、法王は「仏教界の普遍的な仏法王」であると満場一致で宣言した。また、法王の崇高なビジョンと法王が体現されている限りない思いやりを実現し、真に調和のとれた平和な世界を築くことに精進することを再確認した。
次に、主催者代表の7名、僧伽代表の7名、その他の仏教指導者たちが、様々な贈り物を法王に捧げた。マンダラ供養に関連する礼賛偈が英語で唱えられ、観音菩薩を称える次の偈頌から始まった。
雪山に周りを囲まれたこの場所に
すべての利益と幸福の源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ猊下の
御足の蓮華が輪廻の終わりまで健やかにとどまられますように
その祈願文は次のように締めくくられた。
仏陀の尊き教え、あらゆる仏教の伝統における顕教と密教の教えが
末永く受け継がれますように
私たちの尊き指導者、偉大なるダライ・ラマ法王の大慈悲の御業と
揺るぎない人生に倣い
世界のあらゆる精神的・物質的幸福が幾百劫にも渡って栄えますように
共同主催者として、シンガポールのチベット仏教センターのほか、以下の名が紹介された。韓国のラブスム・シェドゥプリン(Labsum Shedrup Ling)、マレーシアの道浄禅林(Persatuan Lamrim Buddhaksetra Retreat Centre)、マレーシアの金剛乗仏教徒協議会(Vajrayana Buddhist Council of Malaysia)、タイのライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)、インドネシアのカダム・チューリン(Kadam Choeling Indonesia)、インドネシアのタンゲラン・バンテン州立スリウィジャヤ仏教大学(Sriwijaya State Buddhist College of Tangerang Banten Indonesia)。
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その一方で、主要な支援者14名からなる2番目のグループがマンダラ供養をし、150名の信者が法王に贈り物を捧げた。
この時、主催者を代表して本式典の議長が法王に聴衆へ話をしてくださるように依頼すると、法王は次のように話を始められた。
「おはようございます。私の人生における経験をいくつかお話ししたいと思います。私はチベット北東部のアムドに生まれました。まだ幼い頃に中央チベットのラサに移り、そこで色の定義などを扱った論理学の入門書『仏教基礎学』から仏教の勉強を始めました。その後、論理学と認識論、中観哲学、戒律(ヴィナヤ)、論書(アビダルマ)を学びました。もっとも、この伝統における宇宙論の提示方法にはあまり興味がなかったのですが。般若波羅蜜についても学びました。仏教哲学を学ぶ中で、心理学や心の認知的側面、つまり私たちの心が対象とどのように関わっているのかについても探求しました」
「私は熱心に学び、智慧の仏である文殊菩薩に、この学びを支えてくださるよう祈りました。様々な古典論書を学んでいる間、家庭教師や問答の助手の方々には大変助けられました。学びに加えて、生活の一部として瞑想を通して菩提心(悟りを得たいという熱望)も育みました」
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「学び終えると試験を受けたのですが、中央チベット三大僧院であるセラ僧院、デプン僧院、ガンデン僧院への訪問も含まれており、多くの著名な学者と問答を行いました。それが終わると、ラサのジョカン寺で最終試験を受けました」
「アムドの人里離れた村の出身でありながら、全課程を履修し、最終試験を受られたことは幸運だと感じました。この期間、私の問答の助手たちには大変お世話になったのですが、助手の一人はあまり賢くなかったので、彼との問答ではその点を利用できることに気づきました」
「いずれにせよ、仏教の勉強を終えてゲシェ(仏教博士)の学位を取得できたことは、私にとって非常に重要なことでした。加えて、三つの実践修行(三学)、すなわち持戒、禅定、智慧(戒学、定学、慧学)の実践にも取り組みました」
「最終試験を終えて間もなく、当時起こっていた騒乱のため、チベットから逃れなければなりませんでした。夏の宮殿であったノルブリンカを去る前に、六臂マハーカーラ像のあるお堂へ行き、その前で祈りを捧げました。そして、悲しみつつも密かにノルブリンカを脱出し、祖国を離れる旅が始まりました。しかし同時に、自由な国インドへ向かうので自信も感じていました」
「1959年、インドに到着すると、ジャワハルラール・ネルー率いるインド政府から温かい歓迎を受けました。ネルーは私やその後に来た人々にとても親切で、多大な援助をしてくださいました」
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「亡命後、学ぶ過程で得られた知識や経験を、世界と共有する素晴らしい機会を得ました。物質だけでなく、心と感情についても学びました。テキストには、さまざまな心の状態や物質の状態の微妙な違いが著されています」
「とにかく生涯を通じて私の主な実践は、利他の心である菩提心を生起し、空の正しい見解を培うことでした」
「今日は、私の長寿祈願のために集まってくださり、ありがとうございます。特に僧侶の方々には、この法要のために来ていただき感謝申し上げます。私たちは娯楽のためではなく、精神的な理由で集いました。先ほど申し上げたように、私は日々菩提心と空の見解を育むことを心がけています。また、僧侶としての戒律を守り、堅持しています。さらに、長年学び続けてきた般若波羅蜜と中観哲学についても深く考えています」
「1954年に中国を訪れ、毛沢東主席にお会いしましたが、ある時、毛主席が宗教は毒だと言いました。そのとき、彼の無知に対して思いやりの感覚が生じました。亡命し、インドで自由を得て以来、仏教を学びたいと願う人々、特に心と感情の働きについて学びたいと願う人々に、私の知識、経験、そして仏法の実践について分かち合ってきました。チベットの伝統を学びたいと願う人々はますます増えています。私は彼らのために最善を尽くしてきたと感じています」
「先ほど申し上げたように、みなさんは精神的な理由と私の90歳の誕生日を祝うためにここに集まりました。私の長寿を願って祈願や供養をしてくださったこと、そして仏法の修行をし、他者、特に僧侶への奉仕に尽力してくださったことに、心より感謝申し上げます。私も仏法を通じて他者に奉仕すると決意しています。ダライ・ラマとして、人々の心が前向きな状態になる手助けができたことを幸運だと感じています」
「祈願法要、そして私の90歳の誕生日を祝ってくださり、ありがとうございます」
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次に、タイ、ベトナム、インドネシア、ラオス、ミャンマー、カンボジア、マレーシア、シンガポールの東南アジア8カ国から、優雅な文化伝統芸能が披露された。タイからは孔雀の舞、ベトナムからは歌による長寿祈願、インドネシアからは平和と調和を祈願する舞が演じられた。ラオスからは2名の女性が愛の花を表現する踊りを舞い、ミャンマーの男女のダンサーは古代の弓形ハープ「サウン」の伴奏に合わせて踊った。カンボジアからの3名の女性は、金色の冠と装飾品を身に着け、同じく金色の花を手に舞を披露した。
マレーシアの男女のダンサーたちは、団結と包摂性を表現するために、活気に満ちた動きで素早く回転しながら踊っていた。最後に、シンガポールから来た8人のダンサーチームが、軽快な太鼓の音に合わせて神話上の獅子に扮し、エネルギッシュなパフォーマンスを披露した。それぞれの獅子舞の衣装の中には、見事に息の合った2人のダンサーが入っていた。パフォーマンスの最中、1頭の獅子が法王の長寿を願う祈願文が書かれたものを掲げ、法王に捧げた。
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素晴らしく楽しいパフォーマンスの数々に、観客からは温かい拍手が送られた。
シンガポールの代表より、収入額および支出額について簡潔な財務報告が行われ、残額はダライ・ラマ基金に寄付することが宣言された。主催者に感謝の意が表され、次の廻向文が述べられた。
「この法要による功徳がダライ・ラマ法王の長寿と真の世界平和の確立に役立ちますように」










