インド、ジャンムー・カシミール州ラダック地方レー
焼け付く太陽の陽射しをいくらか和らげる断続的な曇り空の下、レー市郊外にある静かなシワツェル(チベット語で“幸福の庭”という意味)の法王公邸に滞在されているダライ・ラマ法王は、今朝ジョカン寺に車で移動された。法王を歓迎しようと集まっていた制服姿の学生たちは笑顔で合掌し、ラダックおよびチベットの人たちとともに道路を埋め尽くしていた。
法王はレーの市街地で車から降りられ、ジョカン寺まで歩かれる途中で歓迎の人びとと握手や挨拶を交わされた。また、法王は、ゲートの内側で車椅子に座っている高齢者やからだの弱い人たちに声をかけられて、本堂へ向かう途中で旧友たちと挨拶を交わされた。本堂に入られると、弥勒菩薩、仏陀釈迦牟尼、観音菩薩などの尊像の前で礼拝され、須弥壇に向かって座られた。法王は仏陀への祈願文を唱えられ、聴衆にお茶が配られた。参加者の多くがともに祈願文を暗唱したことを法王は喜ばれ、続いて唱えられた『般若心経』も暗唱しているかどうかと尋ねられた。
法王が話されるチベット語はラダック語に通訳され、法王は次のように述べられた。
「年々、建設や開発が進んでいます。多くの店や学校が建てられ、ラダックは発展し続けています。しかしながらヨーロッパやアメリカなどで見られるように、高度な物質的発展は部分的にしか成功していません。なぜならば、そのような発展に関連して、競争心やプライド、傲慢さが生じ、それが恐れや不安、不幸をもたらすからです」
「仏教徒の兄弟姉妹の皆さん、あなた方もまた、論理的な考え方に基づいて仏教哲学を説かれたナーガールジュナ(龍樹)やディグナーガ(陳那)、ダルマキールティ(法称)のような偉大な導師たちに従う弟子のひとりです。
ラダックの皆さんには、老若を問わず、仏教について詳しい解説をされているこれらの偉大な導師たちの教えを正しく学んでいただきたいと願っています。特に若い世代の皆さんに、私は大きな期待を寄せています。では今から、仏陀の真言を一緒に唱えましょう」
その後一連の行事が終了し、ジョカン寺を後にされる際に、法王は微笑まれ、冗談を言われたり、ご友人と挨拶を交わされたりしながらシワツェルの法王公邸へ戻られた。