インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州 カングラ
ダライ・ラマ法王は今日、ご招待に応じてお住いのダラムサラ近郊に位置する古代都市カングラを訪問された。カングラでは、バラジ病院ならびにシュリー・バラジ・メディア・イノベーションズ創設者のラジェシュ・シャルマ博士、ヒマーチャル・プラデーシュ州政府の都市住居計画担当大臣スディール・シャルマ氏からのお出迎えを受けられ、病院付属の新しいメディアビルに案内された。このビルが二か国語ニュースアプリ「ヒマーチャルアビアビ.com(himachalabhiabhi.com)」の拠点になる。
アプリ始動に先立ち、法王はアニル・パトワ氏のインタビューに臨まれた。翌週に予定されているナレンドラ・モディ首相の訪中で、首相がどのような発言をすると予測されるかという質問に対し、法王は次のようにお答えになった。
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アニル・パトワ氏のインタビューを受けられるダライ・ラマ法王。2015年5月9日、インド、カングラ(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |
「首相はご自身が発言すべきことを一番よくご存じだと確信していますが、インドとチベットの1000年以上にわたる特異な関係に言及されるかもしれません。私たちの知識はすべてインドから伝わったものですから、特別な師弟関係が存在するのです。現在、私はチベット文化の保護を大変心配しておりますが、チベット文化とは本質的には古代インド文化なのです。私たちは仏法と、仏陀がインドで説かれた教えを守っています。それは首相ご自身もデリーで仏陀御生誕祭に出席されてご覧になった通りです。そしてチベットで私たちが守る伝統はシャーンタラクシタ(寂護)によりチベットに伝わったナーランダーの伝統に帰属するものなのです。
また、環境についてもお話になるかもしれませんね。ブラマプトラ川をはじめ、チベットを源流とする河川は10億人以上の人の暮らしに影響しますから」
次に転生されるときにはどのような姿を選ばれるかという問いに対し、法王は冗談めかして「女性かもしれませんよ」とお答えになってから、以前フランスのジャーナリストに対し、ダライ・ラマが女性に転生する可能性は十分にあると話したことを語られ、チベットで高度な転生により女性に生まれ変わった前例を挙げられた。
「私自身はどこに転生するかはわかりませんが、常にこの祈りの言葉を覚えています。
この虚空が存在し続ける限り
有情が存在する限り
私も存在し続けて
有情の苦しみを取り除くことが出来ますように
ダライ・ラマ1世は学識のある修行者で、たいへん立派な方でした。今の私と同じくらいの年齢になられ、ご自身は年老いたとおっしゃると、弟子たちは、きっと浄土へ召されるでしょうと言いました。しかし1世は弟子たちに、それはご自身の望みではないとおっしゃったのです。人々の苦しみを取り除くことのできる場所に留まることを望まれたのです」
中国当局が平和主義者の法王に対してなぜ今のような誤った見方をしているのかという質問に対し、法王は、中国は政治的な見解からしか物事を見ようとしないからだとお答えになり、文化大革命を例に挙げられた。文化大革命は、そのさなかにはたいへん高く評価されたが、終結後には評価できる面、できない面があったと言われた。その後かなり時間を経てからは、文化大革命は全く破壊的な運動だったと言われている。この事例から、物事を現実的に評価することがいかに難しいことかがわかる。
さらに法王は、中国人13億人は信頼できる情報を得る権利があり、それがかなえば善悪の判断を自らできるようになると述べられた。この状況に比べるとインドは自由が栄える素晴らしい国であると称賛された。またご自身は今日生きる世界70億人の一人であるとお考えになりながらも、これまでの56年間をインドで暮らしてきたとお話しになった。
「私はインドのために働く使者で、インドの子です。しかし、そのインドで私が最も長く過ごしているのはヒマーチャル・プラデーシュ州です。私はヒマーチャルの人々の繁栄が末永く続くようにお祈りします」

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新しいニュースアプリ「ヒマーチャルアビアビ.com(himachalabhiabhi.com)」を開始されるダライ・ラマ法王。2015年5月9日、インド、カングラ、シュリ・バラジ・メディア研究センター(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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ラジェシュ・シャルマ博士、スディール・シャルマ氏と並ばれ、法王はポータルハブへのテープカットをされ、続いて室内に並ぶパソコンに案内されておかけになり、アニル・パトワ氏よりニュースアプリ「ヒマーチャルアビアビ.com(himachalabhiabhi.com)」の始動方法の説明を受けられた。
壇上から約200名の招待された聴衆に向けて、法王は、ニュースアプリを始動させたのは初めてのご経験であることや、コンピュータを使い慣れておられないことをお話しになった。
「しかし、コンピュータは21世紀の時代を構成する要素です。21世紀には人々の考え方が変化しています。紛争を止めるための武力行使に、人々が反対するようになっています。そして自然環境にも問題意識を持ち、貧富の差を縮める方法を模索し取り組もうとする人が増えています。不正はいたるところにはびこっていますが、それに気づく人が増えれば、それをおかしいと思う人も増えるでしょう。何が起こっているか、人々が気付くようになったからです。私たち人間には知能という特別な資質があります。それを活用するためには、より多くの、よりよい情報へのアクセスが必要です。
世界でもっとも人口の多い民主国家インドでは、メディアは非常に重要な役割を担っています。教育もそのひとつです。しかし頭脳を鍛えることだけでは幸せに暮らせる保証にはなりません。人々にはカルナ、すなわち大悲を養う教育が必要です。そうすれば、個々の人々が幸福な社会で幸福な家族の中に暮らすことができるでしょう」