和歌山県 高野山(シェーラブ・ウーセル記 / phayul.com)
弘法大師空海によって816年に開創された高野山は日本仏教の聖地のひとつであり、高野山大学の招聘によって今回ダライ・ラマ法王の4日間のご訪問が実現した。
「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」の準備と前行法話が予定されていたこの日、忙しい一日の日程を始める前に、法王は早朝の短い時間を弘法大師の御廟がある奥の院参拝に当てられた。
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高野山真言宗の開祖弘法大師の御廟に向かう小道の途中、橋を渡られるダライ・ラマ法王と主催者たち。2011年11月1日、高野山、奥の院(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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ダライ・ラマ法王は、高野山真言宗管長・総本山金剛峯寺座主の松長有慶猊下に同道されて、弘法大師が今も深い禅定に入られたまま人々を救済されているという入定信仰がある弘法大師の御廟に向かわれた。
巨大な杉の木々に囲まれて、故人を偲ぶために建てられた供養塔や仏像が立ち並ぶ狭い石畳の小道は弘法大師の御廟へと続いており、昔ながらの佇まいが自然と溶け合って調和を醸し出している。
樹齢何百年もの杉木立の間を歩きながら、ダライ・ラマ法王は赤い前掛けをつけたお地蔵様や石碑の前で立ち止まっては祈りを捧げられ、好奇心旺盛なご様子で松長猊下にいろいろと質問をされていた。
何千もの燈籠が立ち並ぶ奥の院の燈籠堂の中で、法王は集まった数人の信徒たちと共に祈りを捧げられ、金剛界マンダラの儀軌次第の中から『金剛頂経』の百八名讃を唱えられた。
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高野山大学で法話をされるダライ・ラマ法王とナムギャル寺の僧侶たち。2011年11月1日、高野山大学松下講堂黎明館(撮影:チベットハウス・ジャパン)
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この日の午後、北インドのダラムサラにあるナムギャル寺のチベット人僧侶たちは、高野山大学松下講堂黎明館で、「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」のために法王をステージにお迎えした。日本の歴史の中では、密教の灌頂は真言宗の相承の系譜として秘密裡に授けられてきたものである。
ナムギャル寺の僧院長をはじめとする10名の僧侶たちは、複雑な金剛界の砂マンダラを制作するために、弘法大師信仰とその伝統の中心である高野山に一週間先立って到着していた。
灌頂の準備の儀式(序会)を始めるにあたって、法王は宗教が持つ意味と21世紀において高まりつつある宗教の重要性について簡潔に説明された。
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ダライ・ラマ法王による「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」の準備の儀式(序会)の一環として受者にクシャ草(吉祥草)が配られる。2011年11月1日、高野山大学松下講堂黎明館(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「宗教の根本的な目的は、人の心に平和と幸せをもたらすことです。外面的な世界における偉大な発展は得られたものの、お金と物質的な向上だけでは幸せにはなれないということを私たち人間は理解しつつあります。」チベットの精神的指導者である法王は、千人を超える受者たちに向かってこのように語られた。
「人間の意識についての科学的な研究によると、ネガティブな感情は私たちの健康に悪い影響を与えることが報告されています。恐怖、怒り、憎しみ、行き過ぎた利己主義は私たちの免疫機能を低下させてしまうのです。」
灌頂の儀軌次第に従って注意深く受者たちを導きながら、利己主義をなくし、慈悲深い心を育むことの「基本的な必要性」について、法王は通訳を通して非常に詳しく説明された。
法王は明日、「チベット密教 金剛界マンダラの本灌頂(本会)」を授与される予定である。