Dalai Lama http://www.dalailamajapanese.com/ en-us Sat, 27 Apr 2024 05:19:51 +0000 Sat, 27 Apr 2024 05:19:51 +0000 『兜率天の百の神々』の法話 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240419 Thu, 18 Apr 2024 23:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240419 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、空は雲で覆われていたが、ツクラカンの中庭を歩かれるダライ・ラマ法王の笑顔は、晴れやかに輝いていた。法王の教えを拝聴するために訪れた300人のモンゴル人を代表する男女2人が前に進み出て、法王にチーズとカード(凝乳)を捧げた。法王はそれらをひとつまみずつ召し上がり、2人にも味見を勧められた。

ツクラカンでの法話会初日に、中庭を抜けてツクラカンに向かわれるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王はしっかりとした足取りで、中庭の真ん中を通る通路を、ツクラカンに向かって歩かれながら、右を向き、左を向いて、通路の両側を埋めつくす人々に挨拶され、時折立ち止まっては、彼らの笑顔をご覧になって手を振られた。法王はその後も、ツクラカンのまわりの回廊を、72カ国から集まったおよそ6,100人の聴衆と交流されながら進まれた。

法王が法座に着かれると、在家信者の一団がモンゴル語で『般若心経』を唱え、続いて、マンダラと仏陀の身・口・意の象徴が法王に捧げられた。

そこで法王は次のように話を始められた。
「私たちはインドという聖なる地に亡命しているため、仏法を説く機会に恵まれています。ツォンカパ大師と私はチベットにある同じアムド地方の出身で、私の出生地は大師が誕生された場所の近くにあります。振り返ってみると、私はチベットで興隆した仏教の伝統を護持しようとしてきました。また、環境を保護し、世界の平和を確保して、宗教間の調和を促すための発言をしてきました。ですから、ツォンカパ大師の生家の近くで生まれた者が、世界のために何らかの貢献をしてきたと言うことができるでしょう」

「今述べましたように、私はツォンカパ大師誕生の地に近接する、西寧の近くで生まれ、私が生まれた当時、この地域は馬歩芳ば ほほうという中華民国の軍閥に支配されていました。ダライ・ラマ13世の転生者を探しているときに、私は馬氏に謁見するために連れて行かれ、私の顔を見た馬氏は “この子には何か特別なものがある” と言いました」

「ここに集まった私たちは、皆、同じ師である仏陀に従う者たちです。私たちは、チベット、モンゴル、ヒマラヤ地方で守り続けてきた、仏陀の完全な教えであるナーランダー僧院の伝統を保持しています。私は、自分がティソン・デツェン王の転生者であることをはっきりと示す夢を見たことがあり、王の指導の下で確立された伝統を守るために最善を尽くしてきました。私を信頼してくださっている皆さんに感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」

ツクラカンで行われた法話会の初日に、説法をされるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「チベット仏教は、シャーンタラクシタ(寂護)大僧院長がチベットにもたらした教えに由来し、そこにはナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)から受け継がれた系譜が含まれています。この伝統に見られる、心と感情の働きについての理解には、科学的で実践的な価値があります。この心と感情の理解は、世界の多くの問題に対する解決策を提供する可能性を秘めているのです」

「私は生きている限り、チベットの仏教王たちの祈願を遂行する決意を固めています。すでに申し上げたように、私の意識はティソン・デツェン王と同じ(心の)連続体に属しているという明確な示唆を得ていますので、私は王の遺産を維持しようと決意しています。そして現在において、ナーランダー僧院の伝統の叡智が人類の福祉に貢献する機会があると感じています」

「今日は『兜率天の百の神々』のテキストを読みますが、これは上師瑜伽(グル・ヨーガ)の実践です。他の宗教の伝統、たとえばヒンドゥー教やキリスト教と同じように、ナーランダー僧院の伝統の仏教も、伝授の系譜を重要視しています」

法王はテキストから “この堕落した時代において、八つの世俗的な関心(世間八法)を放棄することで、あなたは、余暇と機会のあるこの生を有意義なものにされました” と書かれた偈頌を読まれた。

そして法王は次のようにアドバイスされた。
「ツォンカパ大師が望まれたであろうように、私たちは、仏陀が説かれたことを勉強し、その後、修行を通じて教えを自分自身の心の中で統合しなければなりません」

300名のモンゴル人のグループのリクエストによる、ダライ・ラマ法王の法話会初日のツクラカンの光景。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「“最も崇敬されているスマティ・キルティ(ツォンカパ大師)の教義の真髄が永遠に照らされますように” という偈頌は誇張でも偏った見方でもありません。ツォンカパ大師の分析の明晰さと包括性は唯一無二のものであり、その広範で詳細な解説のすべては、戒学・定学・慧学の三学に包括することが可能です」

法王は『ミクツェマ』として知られるツォンカパ大師への礼讃偈を唱えられた。


  • 無所縁の慈悲の大蔵観自在
  • 汚れなき智慧の王なる文殊師利
  • 魔軍をば残らず降臨させる秘密主(金剛手)と
  • 雪国(チベット)の智慧者として冠たるツォンカパ大師
  • ロサン・タクパの御足に祈願いたします

  • すべての生において、勝利者たるツォンカパ大師が
  • 大乗の私の直接の精神の師となられますように
  • そして、そのようにして、勝利者が礼讃された卓越した道から
  • 一瞬たりとも、逸脱することがありませんように


「ツォンカパ大師の護法尊はダムチェン・チューギャルでしたが、私はこの護法尊が、いつもそばにいて、私のことも助けてくださっていると感じています」

法話会の初日に、『兜率天の百の神々』のテキストを読まれるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私たちは勉学と修行を通して仏陀の教えを守り続けています。最近では、科学者や、仏教以外の伝統的な宗教を信仰している人々も、仏陀の教えに関心を寄せています。彼らは、私たちの感情に取り組む助けとなる、これらの教えを高く評価しているのです」

法王は、ツォンカパ大師の瞑想をするとき、大師の右側の蓮の花の上には剣が立っており、左側の蓮の上には経典が置かれていると観想するように、と述べられた。剣は大師の智慧がいかに無明を切り裂くかを示し、経典は大師の知識の完全さと深遠さを明らかにするものである。

「私たちは国を失い、亡命してきましたが、この時間は有意義なものでした。すべての皆さんが、教えを実践するために、最善を尽くすよう強く望んでいます。タシデレ」

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台湾地震へのお悔みを表明 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240403 Tue, 02 Apr 2024 23:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240403 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は本日、中華民国台湾の蔡英文総統に書簡を送り、今朝台湾東部沖で発生した強い地震により人命が失われ、広い範囲で家屋の倒壊やライフラインが破壊されたことへの悲しみを表明された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「この地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、負傷者の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。また、貴殿ならびにご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げたいと思います」

「負傷者の救助・救援のために台湾政府ならびに関係諸機関が取られた迅速な対応を、私は称えたいと思います」

最後に法王は、「祈りを込めて」と記して書簡を締め括られた。

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スワミ・スマラナンダ師の逝去に哀悼の意 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240327 Wed, 27 Mar 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240327 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は今朝、コルカタ市郊外に本部を置くラーマクリシュナ・マート・アンド・ミッション(僧院ならびに奉仕団:通称ラーマクリシュナ・ミッション)に書簡を送り、法王が精神的な兄とされるスワミ・スマラナンダ師の逝去に対する悲しみを表明された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「スマラナンダ師のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、ラーマクリシュナ・ミッションの皆様ならびに信奉者の皆様に心よりお悔やみを申し上げたいと思います」

「師が精神的指導者として他者の利益のために献身するという意義深い人生を送られたのは、実に素晴らしいことです」

「今は亡きスマラナンダ師を信奉する大勢の皆様、そして友人の皆様と共に、私も精神的な兄に対する敬意を表したいと思います」

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思いやりのある行動 —リーダーシップについての対話— 2日目 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240321 Thu, 21 Mar 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240321 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、ダライ・ラマ・フェローのグループとのリーダーシップについての対話の2日目を、以下の言葉で開始された。
「みなさんに今日もお会いできて嬉しいです」

法王公邸で行われた、法王とダライ・ラマ・フェローのグループとの対話の2日目の開始時に話をするソナ・ディミジアン氏。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

そこでソナ・ディミジアン氏は以下のように話を始めた。
「私たちは、今日も法王にお目にかかり、法王が対話にご参加くださることに身の引き締まる思いでいます。昨日の法王との対話から示唆を得て、私たちは、人類がひとつであること、人類が共有する人間的な価値観や、奉仕に人生を捧げること、怒りにどう対処するか、危害を加える人々とどう向き合うかについて、長い議論を交わしました。とても有意義な対話ができ、それによって私たちの心が開かれたと感じています。本当にありがとうございました」

フェローたちが再び歌い出し、昨日と同じように「心を開いて、愛で溢れさせてください」と詠唱した。

ブラジルのフラビア・ネヴェス・マイア氏、南アフリカのヴヨ・ヘンダ氏、ケニアのスティーブン・オグウェナ氏が法王に、リーダーシップの実践における愛と思いやりの役割について質問し、法王は以下のように回答された。

対話の2日目に、法王に質問をするブラジルのフラビア・ネヴェス・マイア氏。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「過去においては、リーダーになるには権力と狡猾さが必要でしたが、そのような時代は終わりました。今のリーダーシップに必要な資質は、一般の人々のことを考慮し、特に共同体の貧困層に目を向けるなど、あたたかい心を持つことです。今日において、利己的な目的だけを追い求めることは、非常に心が狭い行動であると言わざるを得ません」

「民主主義が世界中に広まるにつれて、人々は、何が起こっているのかをよりよく知るようになりました。以前はほとんど注意を向けずにいたこと、全体像を見ることが不可能であったことについての情報が入るようになり、今では一般市民が社会の幸福度について真剣に関心を寄せています」

「民主的な国々では、視野が狭く、偏りのあるリーダーシップではなく、人民による人民のための政治を行う政府を見ることができます。この方がずっと健全であり、権力はもはや少数の人の手の中にあるわけではありません」

そこでソナ・ディミジアン氏が以下のことに言及した。
「昨日法王が、人類がひとつであることについて話されたとき、私は法王とデズモンド・ツツ大主教との間の友情を思い出しました」

法王はこれに対して次のように答えられた。
「私が人間性について語るとき、私たちは皆、お母さんのお腹の中から生まれてきたという、共通の経験をしていることを思います。昔は、神秘的な力や癒しの能力を持った人が存在すると考える人々がいましたが、今はそうではなく、私たちは皆同じであることを知っています。ダライ・ラマには神秘的な力があると信じる人たちもいましたが、私はすべての皆さんと何ら変わるところのない、普通の人間です。私たちには皆、肯定的な感情もあれば否定的な感情もあります」

対話の2日目に質問に回答されるダライ・ラマ法王。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「人々の心に影響を及ぼすのは教育であり、教育によって視野を広げることが可能なのです。教育がなければ、地位の高い人ほど心が狭くなります。教育の特性のひとつは、人々がより広い視野をもつことを可能にすることです」

「私自身の場合は、チベットでダライ・ラマと認定され、玉座に上げられたことで、他の人々との間に距離ができてしまいました。難民となってからは、私はあらゆる階層のあらゆる人々と接触することができるようになり、そのことによって、人類がひとつであり、すべての人間が本質的に同じであることを教えられました」

「自分を特別な存在だと考え、他の人から切り離すことは古い考え方です。私自身の場合、難民としての生活が役立ち、私を現実に引き戻してくれたと感じています」

次の質問者は、恵まれない人々への教育の提供に尽力している、デリーで働くルチ・ヴァルマ氏とジンバブエのアディ・マヴェンゲレ氏であり、法王は質問の途中で以下のように述べられた。

対話の2日目に、法王に質問をする、恵まれない人々への教育の提供に尽力している、デリーで働くルチ・ヴァルマ氏とジンバブエのアディ・マヴェンゲレ氏。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「教育は明らかに格差のある分野であり、貧しい人々が教育を受けられる機会はより限られています。重要なのは、すべての人が同じように教育を受ける機会を持てるようにすることです」

ルチ氏とアディ氏は法王に「人類がひとつであることを認識する方法を、私たちや他の人々は、幼い子どもたちから学ぶことができるでしょうか」と尋ねた。

法王は次のように指摘された。
「一般的に、ほとんどの社会では、人々は年長者を尊敬し、年長者の方が物事をよく知っているかのように思い、子どもたちの経験にはあまり耳を傾けません。しかし、子どもたちがどのように考え、お互いにどのように関わっているかを観察してみるならば、そこには学べるものがあると私は信じています。さらに、子どもたちに敬意を持って接することは、子どもたちの自信にもつながります」

ネパールで活動するアメリカのスバム・サプコタ氏とブータンのティム・ファン氏は法王に、より思いやりのあるリーダーの育成に学校がどのように貢献できるかについて質問した。

対話の2日目に、より思いやりのあるリーダーの育成に学校がどのように貢献できるかについて法王に質問をする、ネパールで活動するアメリカのスバム・サプコタ氏とブータンのティム・ファン氏。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王は以下のように述べられた。
「仏教徒はすべての有情の幸福を祈り、その中にはすべての人間も含まれています。この観点からすると、すべての人間は同じであると認識することは、教育の担うべき重要な側面です。ここで役立つかもしれない一つのシンプルな考察をお話しするならば、すべての人間は幸せになりたいと願っている点において、皆同じであるということです。私たちは皆、お母さんのお腹の中から生まれ、母乳を与えてもらうことによって生き延びていけるのです。もちろん、後にダライ・ラマと認定されても、これは私にも当てはまることです」

「人間は皆同じだということを心に留めておくことができれば、幸せになることができるでしょう。自分を特別な存在だと思い始めたら、そのイメージを守るために努力しなければならなくなります。私は他の人たちに会うとき、“ここいるこの人も、私と同じ人間なのだ” と考えています」

「チベットにいた頃は、形式を遵守する制度のため、私と他の人たちとの間には距離がありました。しかし、いずれにせよ、ダライ・ラマという高い地位にある人がいるという考えは、単に人間が作った概念に過ぎません。今のように普通の人々と接することができる方が、私にとってはずっと幸せなのです」

「私が冬の宮殿であるポタラ宮殿、あるいは夏の宮殿であるノルブリンカ宮殿のいずれかに閉じ込められていたにせよ、形式の遵守には多くの見せかけが伴いました。その点で、インドに亡命したことは私に心の平和をもたらしてくれ、難民として、私はより自由になったと感じています。私がより広範に伝えたいメッセージは、人間であるということに関して、私たちは皆同じであり、対等な立場で他人と関わる方が、ずっと健全なことだということです」

対話の2日目に、法王のお話に耳を傾けるグループのメンバーたち。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

ソナ・ディミジアン氏は、人間としての基本的な価値観を子どもたちに伝えようとするとき、教師への支援が大変少ないことが課題のひとつであり、生計を立てることに精一杯の親たちについても、しばしば同じことが言えると指摘し、法王に以下のように尋ねた。
「このような困難な状況の中で、彼らはどのようにして動機を維持できるでしょうか。法王は世界の多くの苦しみを前にして、いかにして動機を保たれているのでしょうか」

これに対して法王は次のように答えられた。
「ひとつの問題は、多くの社会に階層構造があることです。自分は他の人々と同じなのだという考えに慣れ親しみ、その考えが心に染み込めば染み込むほど、自信と勇気を持てるようになります。チベットでは、聖なる存在としてラマを特別扱いしてきましたが、それはラマたちを他者から孤立させるだけでした。厳格な階層構造は時代遅れな形態にしか過ぎません」

「すべての人間が本質的に同じであるという考えを広めることはとても重要です。私たちは世話をされ、愛情を注いでもらう必要があるだけでなく、自らも他者を気遣い、世話をする能力を持っているのです」

フランク・バッテン・リーダーシップ・スクールのイアン・H・ソロモン学部長が閉会の辞を述べ、法王のお言葉とお加持に、そして法王庁がこの対話を円滑に進めてくれたことに感謝した。ソロモン学長はまた、法王の多くの友人が滞在するシャーロッツビルとヴァージニア大学からの挨拶文を披露した。そして学長は、ヴァージニア大学、コロラド大学、スタンフォード大学がダライ・ラマ・フェローのリーダーシップ・プログラムを主催していることを誇りに思っていると述べ、次のように続けた。

対話の2日目に、閉会の辞を述べるフランク・バッテン・リーダーシップ・スクールのイアン・H・ソロモン学部長。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「世界中の人々が、自分たちの間にある分裂を克服するためのリーダーシップを緊急に必要としています。私たちは、協力を通じて人類が共有する人間性を強化する必要があります。法王が、平和と思いやりのための世界の大使でいてくださることに感謝いたします。法王は、私たち全員が見習うべき模範を示してくださっています。リーダーシップは社会を改善することができ、誰でもリーダーシップを発揮することができます。個人やダライ・ラマ・フェローのようなグループ、組織、そして国家でさえもリーダーシップを発揮することができるのです。私たちが迫られている選択は、世界を変え、正義をもたらすために自分自身と他者に責任を持つことです」

「助けを必要とする人々を心あたたかく助ける法王は、私たち皆にとってのリーダーシップのお手本であられます。ダライ・ラマ・フェローたちもまた、人の役に立つために、そのような選択をしています。フェローたちが参加するプログラムは、行動と奉仕についてのものですが、それは競争よりも思いやり、心の狭さよりも心のあたたかさに関連しています。私たちはここ数日、フェローたちの質問や好奇心の中にそれを見てきました」

「私たちは皆、幸せになりたいと願い、苦しみを避けたいと願っているにもかかわらず、“私たち” と “彼ら” という観点からお互いを見ています。ダライ・ラマ・フェローたちは、すべての人間はひとつであることに基づいて、この溝を埋める手助けをすることができます。もう一度フェローたちに歌ってもらいましょう」

2日間にわたる対話の参加者たちとの写真撮影に臨まれるダライ・ラマ法王。2024年3月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

フェローたちはハーモニーを奏でながら、体を揺らし、優しく歌ってこの対話を締めくくった。


  • 間違った行いと正しい行いという
  • 観念を超えたところに
  • 野原がある
  • そこで会いましょう
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思いやりのある行動 —リーダーシップについての対話— 1日目 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240320 Wed, 20 Mar 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240320 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は今朝、ダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加している14人の若いリーダーたち、および彼らに同行する招待客と会見された。ダライ・ラマ・フェローは、社会変革の新進気鋭の指導者を対象としたユニークな1年間のリーダーシップ・プログラムで、瞑想的な活動と意図的な自己変革を、それぞれの地域社会に有益な変化をもたらす取り組みと統合するように企画されている。

ダライ・ラマ法王とダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加する若いリーダーや同行する来賓との対談会を開幕するコロラド大学のフィリップ・P・ディステファノ学長。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法王が会議室の席に着かれるとすぐに、コロラド大学のフィリップ・P・ディステファノ学長が会議を開始した。彼は、思いやりのあるリーダーシップについて話し合うために、友人や同僚と共にここに来たことを法王に告げた。またディステファノ学長は、2016年にコロラド大学が法王をボルダーにお招きし、2021年10月にはインターネットを介して更なる対談を行ったことを、法王に思い出していただくよう振り返った。

ディステファノ学長は、「法王と、コロラド大学、スタンフォード大学、バージニア大学からのダライ・ラマ・フェローの皆さんとご一緒できることをうれしく思います。これは、明日のリーダーを育成するとてもよい機会です」と述べた。

司会のソナ・ディミジアン氏は、自己紹介の一環として、法王のアドバイスが、心理学や神経科学の彼女の研究と家族への指針となったことを法王に伝えた。

「私たちは再び法王にご指導を仰ぎたいのです。若者たちは、世界に目を向ければ、競争や紛争、戦争や苦しみを目の当たりにし、一方、内面に目を向ければ、苦しみ、悲しみ、絶望と向き合っています」とディミジアン氏は法王に語った。

法王公邸での法王とダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加する若いリーダーや来賓との会議において、自己紹介を行う司会者のソナ・ディミジアン氏。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

さらにディミジアン氏はこのように述べた。
「2004年にダライ・ラマ・フェロープログラムが開始されて以来、50ヵ国から200人以上のフェローがこのプログラムに参加しています。彼らは、法王の教えを実行に移し、外面と内面の両方に向けられている焦点を組み合わせて、世界に変革をもたらしたいと考えています。彼らの心は開かれています」

ディミジアン氏によると、彼女が今朝、法王公邸の門に到着すると、ダライ・ラマ・フェローのグループが入場を待つ間、一緒に歌を歌っているところを見つけたという。ディミジアン氏の到着をきっかけに、彼らは再び歌を歌い始め、「心を開いて、心を開いて、愛で溢れさせてください」と詠唱したことを法王に報告した。そしてディミジアン氏は、思いやりの心をどのようにしたら行動に移すことができるかについて、彼らに一言、助言をいただけないかと法王に尋ねた。

それを受けて法王は、次のように述べられた。
「まず、ここで皆さんとお目にかかれることがどれほど幸せかをお伝えしたいと思います。基本的に私たちは皆、母親から生まれ、最大限の愛情を母親から注がれました。それは自然な反応であり、他の動物にも同様の行動が見られます。このことは、私たちが皆、共通して持っている経験であり、本質的には同じであることを意味しています。私たちは、母親の優しさのおかげで生きのびていくことができるのです。これは、覚えておくべきとても大切なことです」

「幼い頃は、母親から受けた愛情の感覚がまだ私たちの中に鮮明に残っていますが、成長して学校に行くようになるにつれ、その記憶がしだいに薄れていきます。母親の優しさに対する感謝の気持ちを、死ぬまでずっと保ち続けることができれば、どんなにか素晴らしいことでしょう。そのためのひとつの方法は、思いやりと温かい心を育む努力をすることです」

ダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加する若いリーダーや同伴する来賓に語りかけるダライ・ラマ法王。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

続けて法王は、次のように述べられた。
「私はどこへ行っても、どなたにお会いしようとも、笑顔で温かく挨拶をしています。そうすることで、だれもが私の友人になってくれます。大切なのは、他者に対して温かい心で接することです。心の温かさは、私たちの本質の一部だと私は信じています。それは、心に平和をもたらし、友人を引き寄せることになります。母から私たちへの本当の贈り物は、彼女の笑顔と愛情深い心の温かさなのです」

ソナ・ディミジアン氏は、二人一組になって法王に質問を投げかける7人のダライ・ラマ・フェローを紹介できることにワクワク感を覚えると述べた。その7人のフェローは、ベトナムのカン・グエン、ナイジェリア/ルワンダのダミロラ・ファソランティ、ケニアのマンシ・コタック、イギリスのセレーネ・シン、ケニア/アメリカのブリタニー・リチャードソン、インドのシュルティカ・シルスワル、アメリカのアンソニー・デマウロである。彼らは、共有される普遍的な人間の価値の認識を促進するために何ができるかを法王に尋ねた。また、奉仕や他者をケアすることを生き方として選択するよう人々を鼓舞するためにはどのようにしたらよいか、法王に助言を求めた。さらに、怒りや苛立ちを感じている時に、リーダーとしてどのように思いやりの心を働かせることができるかを知りたいと述べ、抑圧者に対しても思いやりの心を保ちながら不正義に抵抗する方法について法王に質問した。

法王公邸での会合で、法王に質問するダライ・ラマ・フェロープログラムに参加する若いリーダーたち。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「もし、私たちが母親から受けた愛情という基本的な感覚を持ち続けていれば、誰とも争う理由はないでしょう」と法王は答えられた。
「しかし、私たちは他の人々との共通点を考えるのではなく、お互いの違いに目を向けがちです」

「私はどこへ行っても、自分自身を一人の人間だと思い、微笑みかけます。私は、自分がダライ・ラマで、他の別の人間であるとは思っていません。新しい人に会うたびに、彼らは私と同じだと感じます。たとえ名前が違い、肌や髪の色が違っていても、それらは二次的な違いにしかすぎません」

「私はただ、出会う人々を人間として、そして兄弟姉妹として見ています。そして、違いについてあれこれ考えるのではなく、私たちが同じであることについて考えています。チベットの北東部に住んでいた幼い頃、私は近所の子供たちと遊びました。彼らとは同じ子供として接していましたが、彼らの多くはイスラム教徒の家庭の出身で、私の家庭は仏教徒であることに偶然気づいたのは後になってからでした」

「忘れてはならない重要なことは、結局のところ、私たちは皆、同じ人間だということです。私たちは、偏見や否定的な差別心に囚われて、基本的な人間の価値や寛大さ、優しさの感覚を見失いがちです。しかし、どのような宗教、文化、人種であろうとも、根本的なレベルで、私たちは皆、人間であるという点で同じなのです。“ダライ・ラマ” であることを意識しすぎると、他の人たちとの間に一線を画してしまいがちですが、それよりも私は、共通する人間性のほうにより関心をいだいています」

ダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加する若いリーダーと同行する来賓たちが、法王と共に会合を行う会場の様子。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「すでに申し上げたように、幼い子供たちは開かれた心を持ち、友好的です。彼らは、自分と他人を区別しません。成長してはじめて、私たちは他者との違いを意識するようになるのです。これは対立をもたらす危険性をはらんでいます。それに対してバランスをとる方法は、私たちが皆、どのように同じであるかを考えることです。このことを私たちは常に思い出さなければなりません。根本的なレベルで、人類としての一体感を認識し、私たちの顔には皆、二つの目、ひとつの鼻と口があるように、私たちは人間であるという点でお互いに同じであることに気づかなければなりません」

「肌の色や国籍などが異なる人々が子孫を残し、妊娠可能で健康な子供を産むことができるという事実は、私たちが人間として基本的に同じであるということを裏付けています。私たちは、補完的に異なるアイデンティティを持っており、例えば私はチベット人で、僧侶であり、ダライ・ラマという名前がありますが、最も重要な点は、私は人間であるということです」

「私たちは社会的な存在であり、互いに繋がり合っていますが、そのような外面的なことだけでは、対立の芽を摘むのに十分ではないようです。人類としての一体感、つまり、人間として私たちは皆、同じであるということの確信を内面化することが重要であり、その利点のひとつは、私たちをよりリラックスさせてくれることです」

ソナ・ディミジアン氏は、法王がこのグループを歓迎し、叡智を分かち合ってくれたことに感謝した。そして最後に、ヴィジャイ・カトリ氏に閉会の挨拶をするよう求めた。

法王と、ダライ・ラマ・フェローのプログラムに参加する若いリーダーや来賓たちとの会合で、閉会の挨拶を行うヴィジャイ・カトリ氏。2024年3月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「この一週間は変容に満ちたものでした」とカトリ氏は挨拶を始めた。
「ことわざにあるように、“心とはただの満たされるべき器ではなく、燃やされるべき炎なのです”。私たちは、法王と関わり合い、思いやりと温かい心について法王から学びました。この心のこもった贈り物に感謝いたします」とカトリ氏は挨拶した。

それに対して法王は、次のように応答された。
「先ほども申し上げたように、私たちは幼い頃、互いに何の偏見や疑いも持つことなく、他の子供たちと遊びます。このようにオープンで公平な態度こそ、私たちが守らなければならないものです。私たちはお互いを “私たち”、“彼ら” という観点で見てしまいがちですが、これが衝突につながる可能性を引き起こしてしまいます。だからこそ、私たちにはどれだけ多くの共通点があり、“私たち” ではない “彼ら” と見なしている人たちも、皆、同じ人間であることを常に思い起こすことが役に立つでしょう」

ソナ・ディミジアン氏は、法王の平和で喜びに満ちた一日を祈り、明日もまた、このグループが法王にお目にかかれるのを楽しみにしていると述べた。

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神変祈願大祭の法話『ジャータカ』 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240224 Sat, 24 Feb 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240224 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ツクラカンとその中庭は、毎年恒例となっているダライ・ラマ法王の『ジャータカ』(本生譚)の法話を聞くために集まった、チベット人とヒマラヤ地方の人々、そして、それ以外の地域からやって来たおよそ8,000人の聴衆で埋め尽くされた。今日はチベット暦1月の満月の日で、祈願大祭が頂点を迎える “供養の日” に当たる。

“供養の日” の法話を行うため、ツクラカンの中庭を通って法座まで歩かれるダライ・ラマ法王。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

法王は、法王公邸からツクラカンに続く門より、中庭の先にある、ツクラカンの階下に設えられた法座まで歩かれた。チベットの管楽器であるギャリンを吹く僧侶たちと、香炉を揺らしながら歩く僧侶が法王を先導し、別の僧侶が大きな黄色い儀式用の傘を法王の背後から差しかけた。法王が法座に着かれると、法座の左側には高僧の集団が、右側には中央チベット政権(CTA / the Central Tibetan Administration)の職員が着座した。法王の隣に置かれたテーブルには満開の白い蘭が飾られていた。

経頭が『般若心経』の読経を始め、続いてツォンカパ大師の『菩提道次第集義』から、仏陀、文殊菩薩、弥勒菩薩、ナーガールジュナ(龍樹)への帰敬の偈頌が唱えられ、その間にお茶とデシ(甘く味付けしたお祝いのご飯)が参列者に配られた。中央チベット政権・文部省のターラム・ドルマ・チャングラ大臣は、マンダラを捧げて法王に教えを説いてくださるように勧請し、ギュト密教僧院およびナムギャル僧院の僧院長が大臣に続いた。そして、帰依の偈頌と発心の偈頌が参列者全員によって誦経された。

ツクラカンの中庭で行われた “供養の日” の法話会で、マンダラ供養を先導する経頭。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

ダライ・ラマ法王は次のように話しを始められた。
「今日皆さんは、法話を聞くためにこの中庭に集まりました。今日の世界では、内面的な成長に関心を持つ人の数が増えています。物質的なことに重点をおく生活を送ってきた人に、そのような傾向が顕著に見られます。人々は心を訓練することに興味を抱いているのです」

「神の存在を受け入れる宗教的伝統は良いものですが、仏教は心の働きの完全な解明において際立っており、そのことが科学者たちの関心を引き寄せています。心を訓練することで心の平和を得ようとする私たちのアプローチは、現実的かつ科学的であり、それはチベットとその周辺地域で守られてきた伝統です」

「私には、創造主である神への信仰によって心の平和を見いだそうとする信心深い友人たちがいます。一方で私たちは、心の平和を得るためには心を使い、心を訓練することが必要であると信じています。西欧では、宗教を信仰しない人たちが、仏陀が説かれた執着や怒りを減らす方法に注目しています。実際、怒りに対する主な対治は慈悲心をもつことです」

「インドの導師チャンドラキールティ(月称)は、著作の『入中論』の冒頭で大悲を称えておられ、悟りに至る修行道の最初においても、途中においても、成就を得る時においてさえ、慈悲の心に礼拝すべきであると述べられています。慈悲は利益の収穫をもたらすものなのです」

「私たちの日常生活においても慈悲の心は極めて重要です。暴力に訴え、他者に危害を加える今日の世界で、慈悲の心は重要な仲介役を果たします」

ツクラカンの中庭で参列者に説法をされるダライ・ラマ法王。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

「私は慈悲の修行を自分の修行の根本に据え、それを空性の理解と結びあわせています。この修行により、煩悩に振り回されることのない心の平和が訪れ、その結果として、健康と長寿がもたらされるのです」

法王は、チベットに伝わった仏教であるナーランダー僧院の伝統は、信仰ではなく論理と根拠に依拠したものであり、そこには心の働きについての理解が含まれていると説明された。そして法王は感情が引き起こす問題について把握することの重要性を強調された。

法王は、チベットの仏教王であるソンツェン・ガンポ王は、中国の皇女を娶られたにも関わらず、チベット文字作成の手本を決める際には、インドのデーヴァナガリ文字を採択されたので、王はとても決意の固い方だったのだろうと述べられた。その後ティソン・デツェン王の時代にはシャーンタラクシタ(寂護)がチベットに招聘され、ナーガールジュナなどナーランダー僧院の導師たちの著作を、論理と根拠を使って厳密に学ぶ方法が導入された。

法王は、論理と根拠を用いれば用いるほど、仏陀の教えをより深く理解することができることを強調され、学んだことについて何度も考え抜くことは強力な方法であると繰り返された。そして法王は、ナーランダー僧院の伝統の基礎をなす勉学と分析を結びあわせる方法は、世界の宝の一つであると述べられた。

「大変動に直面しているこの世界において、怒りや自負心、傲慢さは心を乱すものであると理解することが大切です。世界の多くの地域で、人が人に危害を加え傷つけています。私たちが保持して来た伝統の核心である慈悲の教えによって、必ずや彼らに利益をもたらすことができるでしょう。教えを実践することで、この伝統は生きたものとして保たれてきました。私たちの中国人の友人たちは、チベット人が基本的に善い心を持った人々であることを認めています。世の中の状況は変わっても心の平和は変わりません」

法話会に参列するためツクラカンの中庭に集まった8,000人の聴衆。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

「ですから、私たちは自分たちのしている行いとその価値を、可能なときにはいつでも説明するように努めるべきなのです。私たちには心の平和を生み出す伝統があり、それは世界に平和をもたらすために不可欠な要素です。怒りの感情にのみこまれている時には心に平和がなく、愛と慈悲に心動かされている時にはそれがあることを認識することが重要です」

「私は菩提心を高めることと空性を理解することを自分の修行の核心としており、そのことによって心の平和がもたらされていると述べました。皆さんも慈悲と智慧を育み、あたたかい心を自分の修行の基礎に据えるよう強く勧めます」

「今から私は、一切ヨーガの菩提心生起に皆さんを導きたいと思います。これは私が毎日している修行で、皆さんにとっても有益なものだと思います。人間として私たちは皆同じです。誰もが幸せを願い、悲しみを望まず、悪いニュースではなく、良いニュースを聞きたいと思っています。善い心の持ち主は人から好かれ、自負心が強く傲慢な人を進んで称讃する人などいないでしょう」

「『入中論』の最初で、チャンドラキールティが慈悲に礼拝されているのは、それが悟りの種であるのみならず、成長に必要な水であり大地でもあるからです。私は慈悲を自分の主な修行としており、それは慈悲によって心の平和と堅固な健康がもたらされるからです。動物でさえ慈悲の真価を知っています」

「朝目覚めるとすぐに、私は菩提心について省察します。そして、事物が客観的に存在するように見えても、よくよく考察してみるならば、見える通りにはそれらが存在していないことについて思いを馳せます。私は毎日これらの原理について熟考しています」

法話中の法座の光景。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

「ここで、他者のために真に役立とう、という菩提心について瞑想しましょう。菩提心は短期的にも長期的にも、他者にとっても自分にとっても役立つものです。今、この善き心、利他的な心が、自分の胸の位置にある白い月輪に変容したと観想します」

「次に、自分とは何かをあれこれと考え、堅固で独立した自己があるように見えていることを思い起こします。そのような自己を見つけようと探してみると、どこにもそれを見出すことはできず、自己とは言語と観念によって名付けられただけの存在であることに気づきます。そこで、堅固で独立したものなど何もない、というこの理解が、胸の位置の月輪の上に立つ、白い金剛杵に変容したと観想します」

「悟りがすぐに起こることはありませんが、地道に修行していけば、いつか夜明けは訪れるでしょう」

法王は一切ヨーガの菩提心生起のマントラである “オーム・サルヴァ・ヨガ・チッタ・ウバタヤミ” を唱えるように聴衆を導かれた。そして法王は、弟子たちの心が安定し、一切ヨーガの菩提心が堅固になるように、法王に続いて “オーム・スラテ・サマヤ・サトヴァム・ホー・シッディ・ヴァジュラ・ヤタ・スカム” を復唱するように求められた。

それから法王は、以下の観音菩薩の礼讃偈と、観音菩薩の六字真言 “オーム・マニ・ペーメ・フーム” を唱えられた。


  • すべての仏陀に大いに称讃されている
  • 一切の高貴な徳性を身につけられ
  • 瞬きせずに見つめる本尊となづけられた
  • とこしえの悲心をもつあなたに礼拝します


続いて法王は、文殊菩薩への下記の礼讃偈とその真言である “オーム・アラパツァナ・ディ” を唱えられた。


  • 三界の闇を切り裂く
  • 智慧の灯火で飾られた
  • 若々しいお姿の
  • 文殊菩薩に礼拝します


最後に法王は、この供養の日の慣習である、釈尊の前世譚『ジャータカ』の一節の朗読を始められた。今回の物語は、釈尊が菩薩として、シビ族の王であった時の話である。王は臣民が害悪を断ち、正義を受け入れるように推奨していた。

法王の説法に耳を傾ける聴衆。2024年2月24日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ)

その王国にはとび抜けて魅力的な若い女性がおり、ウンマダヤンティ(男を狂わせる女)と呼ばれていた。女性の父親は王に娘を嫁がせたいと申し出たが、王は助言者たちの勧めに従ってそれを断ったので、彼女は宮廷の役人と結婚した。しかし、王が戦闘用馬車で街に出かけた際、彼女と出会い、熱烈な恋におちてしまった。

ウンマダヤンティの夫は、彼女を自分の贈り物として献上すべく王への説得を試みたが、王の返答は次のようなものであった。「それはできない。理由は以下の如くである。第一に私の功徳がすべて失われてしまうだろう。そして私は不死の身ではないのだから。第二に私の邪悪な行いが世間に知れ渡ることになるだろうから。最後に、妻と別れたあなたは悲しみの火に焼かれ、その炎は枯れ草を焼き尽くすようにあなたを燃やすであろうから」

法王はそこで朗読を止められた。感謝のマンダラが法王に捧げられ、『仏法の興隆を願う祈願文』が詠唱された。法王は微笑んで聴衆に手を振りながら、安定したゆっくりとした足取りで公邸に続く門まで歩かれ、そこからゴルフカートに乗り込んで公邸へと戻って行かれた。


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フィンランドのストゥブ元首相の大統領選勝利を祝福 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240213 Tue, 13 Feb 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240213 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、フィンランドで行われた大統領選挙の勝利者となったアレクサンデル・ストゥブ元首相を祝して同氏に書簡を送られた。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「長年にわたり、私はフィンランドを何度も訪問できたことを大変光栄に思っています。訪問の際には、愛と思いやりの心を育むこと、人類はひとつの人間家族であるという意識を高めること、宗教間の調和を認識することの重要性など、私がお伝えしたかったことに対してあらゆる職業や階級の方々が強い関心を示してくださったことに、私は深く感謝しています」

「今日、世界のさまざまな地域で多くの人々が暴力的紛争に苦しんでいることは、極めて悲しいことです。暴力と武器のない世界を求める活動家を自認する者として、私は、国際社会が対話と外交を通じて紛争を解決するために協調的な努力を重ねることで、より平和で思いやりのある世界の構築に貢献できるよう切に願ってきました」

そして法王は、次のように書簡を締め括られた。
「フィンランド国民の願いの実現において、貴殿があらゆる試練を乗り越えることができるよう祈りを捧げたいと思います」

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台湾次期総統の頼清徳氏を祝福 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240114 Sun, 14 Jan 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240114 インド、ビハール州ブッダガヤ

13日に投開票された台湾の総統選挙を受けて、ダライ・ラマ法王は次期総統の頼清徳氏に書簡を送り、あたたかな祝福を捧げられた。書簡のなかで、法王は次のように述べられた。

「実際、今回台湾で行われたように、民主主義が発揮されるのを目にすることは、自由と尊厳のなかで生きることを熱望する私たち全員を勇気づけるものです」

「私は、台湾を訪問した際に皆さんに歓待していただき、民主主義がいかに強く根付いているかを目の当たりにしたことをよく憶えています。台湾の皆さんは、豊かで健全な民主主義を発展させただけでなく、経済や教育の面でも大きな成果を上げ、また同時に豊かな伝統文化をも守ってこられました」

「台湾の仏教徒の皆さんの仏法に対する強い信仰心を、私は心から称えています。私は僧侶として、仏陀の教えや精神的な指導を求める彼らの声に応じられるよう最善を尽くしたいと考えています」

「台湾と中華人民共和国の良好な関係は、極めて重要です。地方、国家、国際社会、いずれのレベルであれ、困難な問題を解決する最善の方法は対話である、というのが長年にわたる私の信念です」

法王は書簡の終わりに、頼氏があらゆる困難を乗り越えて、台湾の人々の希望と願望を実現できるよう祈念された。

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ブータンの次期首相を祝福 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240112 Fri, 12 Jan 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240112 インド、ビハール州ブッダガヤ

1月9日にブータンで行われた総選挙の結果を受けて、ダライ・ラマ法王は、次期首相となるツェリン・トブゲイ氏に書簡を送り、あたたかな祝福を捧げられた。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「私たちチベット人は、ブータンの人々と歴史を共有してきた関係にあります。私は、民主主義の価値観に全力で取り組んでいる者として、この数年間、先見の明のあるブータン国王のリーダーシップの下で民主的な統治がなされ、ブータンが称賛に値する発展を遂げるのを見守ってきました」

「今日、ブータンは伝統的な宗教と文化を守りながら、近代的発展の道を歩んでいます。貴殿の在任中も、これは堅固に続くことでしょう。ブータンとチベットの両国民は、チベット仏教という独特の形態を共有しています。この宗教的伝統は、単に信仰に基づいているだけでなく、人類全体に実際的な利益をもたらすことができるものです」

「仏陀のお言葉の翻訳である100巻から成るカンギュル(経典)と、仏陀に続く導師たちによる註釈書の翻訳である200巻を超えるテンギュル(論書)には、より平和な世界をもたらすために不可欠な心と感情のはたらきに関する豊富な知識が含まれています」

最後に法王は次のように述べて、書簡を締め括られた。
「ブータンと国民の幸福のために貴殿がなされるあらゆる努力が実りますよう祈りを捧げたいと思います」

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能登半島地震について励ましのメッセージ http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240102 Tue, 02 Jan 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240102 インド、ビハール州ブッダガヤ

ダライ・ラマ法王は、日本の岸田文雄首相に書簡を送り、昨日能登半島を襲った大地震により、亡くなられた方、行方不明になった方々も多く、家屋の倒壊やライフラインへの被害が発生していることへの悲しみを表明された。書簡の中で法王は、次のように述べられた。

「亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族、並びに被災された方々に、お悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います」

「今、日本政府が、救助や支援を必要としている人々のためにできる限りのことをしておられることに対して、私は感謝しています。毎日『般若心経』を唱えている一人の僧侶として、日本の仏教徒の皆さまも、このような時に『般若心経』を唱えるのはとてもよいことだと思います。こうした読経は、亡くなった方々のためになるだけでなく、さらなる災害を回避することにもつながるからです」

「私は今、仏陀が悟りを開かれたインドの聖地、ブッダガヤにいます。この聖地に集まった僧侶たちや巡礼中の人々と共に、この大地震によって被災された日本の方々のために『般若心経』を唱えたいと思います」

このように述べて、再度、法王は書簡の締め括りに祈りを捧げられた。

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長寿祈願法要 http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240101 Mon, 01 Jan 2024 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240101 インド、ビハール州ブッダガヤ

今朝、ダライ・ラマ法王は、サールナートの高等チベット学中央研究所(CIHTS / Central Institute of Higher Tibetan Studies)とその卒業生、そしてパオンタ・サーヒブのチベット人居住区の人々からのリクエストによるダライ・ラマ法王の長寿祈願法要に出席するため、ガンデン・ペルゲ・リン(ナムギャル僧院)からカーラチャクラ・グラウンドへと向かわれた。黄色い三日月形の帽子を被り、ホルンを演奏する僧侶たちが法王の歩かれる道を先導した。頭上には、金色の傘がはためいており、法王は沿道に並ぶ人々に微笑みながら手を振られた。

カーラチャクラ・グラウンドへの沿道に並んで、長寿祈願法要に出席されるダライ・ラマ法王の到着を待つ僧侶たち。2024年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は檀上から、集まった人々に向かって再び微笑んで手を振られ、その多くの人々が法王に手を振り返した。そして、法王は高僧たちに挨拶され、法座の後ろの大きなタンカに描かれたナーランダー僧院の17人の成就者たちと、その前に置かれた仏陀釈迦牟尼像に礼拝されてから法座に着かれた。

ガンデン僧院座主によって主宰されたこの法要は、ナムギャル僧院の経頭により先導され、“世界を鎮める者” である仏陀への礼拝で始まった。次に、チベットにおける観音菩薩の一連の生を呼び起こす祈願文であるトゥルシク・リンポチェの『神饌なる祝福の雲(Clouds of Ambrosial Blessings)』が唱えられ、この長寿祈願法要は白ターラー菩薩を中心に行われた。

その後に、ガンデン僧院座主が法王に長寿の杖を贈り、法王はそれを受け取られた。七支供養が唱えられ、トルマと呼ばれる大きな供物の菓子が法王に捧げられた。その一部を印として法王が受け取られ、そして経頭が長いマンダラ供養を捧げた。

次に、ガンデン僧院座主が仏陀の身口意の象徴、水瓶、五智如来、7つの王者の宝、8つの吉祥なるもの、8つの吉祥文様の象徴などを捧げた。供養が行われる中、支援団体に所属する人々の行列が、経典を中心とした贈り物の数々を抱えて、法座の前を通り過ぎた。その中には、最近、パーリ語やサンスクリット語からチベット語に新たに翻訳された本も見受けられた。

カーラチャクラ・グラウンドでのダライ・ラマ法王の長寿祈願法要の最中に、儀式の供物を捧げるガンデン僧院座主。2024年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ガンデン僧院座主、ジャンツェ学堂法主、サキャ・コンマ・リンポチェに続いて、支援団体の代表者が法座に近づき、敬意を表した。法王はその一人ひとりに、カタと呼ばれる白い絹のスカーフと守護の赤い紐を手渡された。

法王の二人の家庭教師とジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師によって作られたダライ・ラマ法王の長寿祈願文が読経された後、法王は参列者に向けて話をされた。

「今日、釈尊が悟りを開かれた金剛座があるこの聖地に集まり、私に長寿祈願法要を捧げてくださった仏法の兄弟姉妹の皆様、僧侶、尼僧、在家者の方々、そして仏陀の教えに関心を持つ皆様に、私の人生を振り返り、私がこの世界で為し得たことの喜びをお伝えしたかったのです。さらに私は100歳を超えるまで、有情を利益し続けるつもりでいます」

「最近、隣人たちがお互いを “私たち”、“彼ら” という視点で見るようになった結果、ロシアの周辺や、世界の他の地域で紛争が勃発しています。これは分断を生み出し、人間として私たちは皆、一つの人間家族に属しているのだという事実を見落としてしまいます。人類としての一体性を正しく認識し、私たちは皆、人間として同じであるということを理解することができれば、私たちは調和と友情の中で生き、お互いに助け合うことができるようになるでしょう。そして、このことを人々に知らせることが私の責任であると考えています」

カーラチャクラ・グラウンドで行われた長寿祈願法要で、聴衆に向かって話をされるダライ・ラマ法王。2024年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

さらに法王は次のように話を続けられた。
「私たちは皆、生まれた時から母親の愛情に包まれて育ち、また母親は、私たちに母乳を与えて育ててくれました。そして成長するにつれ、私たちは皆、幸せになりたい、苦しみや痛みをさけたいと望むようになります。それゆえ、私たち一人ひとりにとって、愛情がどれだけ大切かを忘れてはなりません。だからこそ私たちは、できる限りお互いに助け合う必要があるのです」

「“私たち”、“彼ら” という視点に基づいて、分断を生み出す必要はなく、私たちは、共に平和に暮らさなければなりません。私たちが人間として全く同じであるということに比べれば、肌の色や信仰の違いなどは大した違いではなく、私たちが生まれた時には、国や宗教というレベルで分けられることもありません」

「今日は元旦ですので、皆様に『タシデレ』とご挨拶したいと思います。昨年起こった問題や対立にこだわるのをやめて、今年はより平和な年になるよう努めなければなりません。私たちは、今を生きている80憶人すべての人々が一体であるという感覚を育むことで、今年の始まりを良きものにすることもできるのです。仏教徒として、私たちはすべての有情の幸福を祈りますが、少なくとも私たちは、この世界の生きものを助けるために、できる限りのことをするべきです。何よりも大切なことは、仲間を同じ人間として認識することであり、そうすることで、より平和な世界を築くことができるのです」

「私たちは今にも増して、異常気象に直面することになるでしょう。暑すぎる場所もあれば、洪水に見舞われた場所もあり、干ばつに見舞われた場所もあります。私たちは、これらの災難が収まるように祈らなければなりません」

カーラチャクラ・グラウンドで行われたダライ・ラマ法王への長寿祈願法要で、儀式を見守る人々や通訳を聴く人々。2024年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私はよく、温かい心を持つことがいかに大切かを指摘していますが、私たちの善良な心は、智慧と良識によって導かれなければなりません。それには、短期的な目標だけでは不十分で、長期的に何が最善かを判断する必要もあります。有意義な人生を送る鍵は、できる限り他の人々を助けることです」

最後の感謝のマンダラ供養に続いて、無量寿仏への祈りが捧げられた。

最後に、法王の3日間の教えと本日の長寿祈願法要を支援するために何を受け取り、何に費やされたかの収支報告が、チベット語、そして次に英語で読まれた。ノルブ・ツェリン氏の家族、ニャナン・タシ・トンドゥプ氏の家族、ソナム・ギャツォ氏の家族、ラデン神変祈願大祭基金が法話に多大な支援を与えてくれた。高等チベット学中央研究所とその卒業生、シャル僧院、パオンタ・サヒーブのチベット人居住区、ゲルク派大学、ラデン神変祈願大祭基金は今日の法要に大きく寄与してくれた。

法王が説かれた法話に感謝するとともに、地元のブッダガヤ行政、警備にあたった地元警察、そして広範囲にわたり貢献したナムギャル僧院のメンバーに感謝の意を表した。また、名前を挙げればきりがないほど多くの人々の協力により、すべてがスムーズに進んだことにも感謝が述べられた。

『菩提道次第広論』と、法王が創作された『教えが興隆するための祈願文』(ロサン・ギャルテンマ)、『真実の言葉の祈願文』(デン・ツィク・モン・ラム)にある廻向文を着実に唱え、最後に『普賢菩薩行願讃』を唱えて、法要の幕が閉じられた。

カーラチャクラ・グラウンドで行われた長寿祈願法要を終え、ゴルフカートに乗って聴衆に手を振りながらチベット僧院に戻られるダライ・ラマ法王。2024年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は聴衆にもう一度手を振り、仏像に礼拝されてから、ゴルフカートに乗って僧院に戻られた。

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ポーランドのトゥスク新首相を祝福 http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231214 Thu, 14 Dec 2023 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231214 インド、西ベンガル州シリグリ

ダライ・ラマ法王は、ポーランドの新首相に返り咲いたドナルド・トゥスク氏に書簡を送り、次のように祝福の言葉を述べられた。

ワルシャワで開催された第13回ノーベル平和賞受賞者世界サミットに参加されたダライ・ラマ法王とドナルド・トゥスク首相。2013年10月23日、ポーランド、ワルシャワ(写真:ポーランド共和国閣僚評議会)

「ポーランドは長年にわたり、国内だけでなく海外においても民主主義の価値を促進するため多大な努力を重ねてこられました」

「私はポーランドを何度も訪問させていただき、そうしたなかで貴殿にお目にかかり、私たちが尊敬する友人であるレフ・ワレサ元大統領をはじめとするリーダーの方々と何度も会って話をする機会をいただいたことは、私にとって大変光栄なことでした」

「ポーランドを訪問した際には、あらゆる地位や職業の方々が、思いやり、許し、寛容、知足、自己抑制といった人間の基本的価値を培い、宗教間の調和を促進するための私の取り組みに関心を寄せ、支持してくださいました。私は、彼らが友情とチベット人との連帯を示してくださったことに深く感謝しています」

「今、世界は厳しい状況にあります。しかしながら、人類はひとつの人間家族であり、互いに依存し合っているという認識もまた高まっています。それゆえに私は楽観的な視座を持ち、やがて物事は良い方向に変化すると考えています」

「ポーランドは、世界の平和と安全の推進において重要な役割を果たせる国です。私は、貴殿がポーランドの首相として、また欧州理事会議長としてのご経験を活かして、暴力や武器のないより良い世界の構築に貢献されることを確信しています」

「貴殿が、目の前に立ちはだかるあらゆる困難を乗り越えて、ポーランドの人々の要望と願望を実現することができるよう祈りを捧げたいと思います」

法王は、このように述べて、祈りと共に書簡を締め括られた。

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シッキム州ガントクにご到着 http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231211 Mon, 11 Dec 2023 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231211 インド、シッキム州ガントク

今朝、ダライ・ラマ法王はシッキムに向かうため、デリーから西ベンガル州バグドグラに飛行機で移動され、バグドグラ空港では、シッキム州の宗教部門担当大臣であるソナム・ラマ師が法王を出迎えた。その後法王はヘリコプターでガントクに到着され、リビン・ヘリポートでは、シッキム州首相のプレム・シン・タマン氏、首席次官のヴィジェイ・ブシャン・パタク氏、インド警察長官のアムレンドラ・クマール・シン氏、シッキム州政府の数人の閣僚と高官、並びにガントク、ダージリン、カリンポンのチベット人議員らが法王を歓迎した。

ガントクに到着され、シッキム州首相のプレム・シン・タマン氏に挨拶をされるダライ・ラマ法王。2023年12月11日、インド、シッキム州ガントク(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王はヘリポートから車で移動され、通り道の沿道には十を超える地元の僧院から集まった僧侶たちが整列し、その多くは儀式用の帽子をかぶってチベット式のシンバルや太鼓、ホルンを鳴らして法王を歓迎した。車が主要道路に差し掛かると、吉祥をもたらすと言われるタシ・ショルパの踊り手たちが歓迎の舞踊を披露し、シッキム人やチベット人など地元の人々が道に列をなして法王を出迎えた。彼らは顔に笑みを湛え、合掌した手には歓迎を表す白や黄色のカタ(儀礼用のシルクのスカーフ)、花、線香を捧げ持っていた。チベット人女性のいくつかのグループは、喜び溢れる歌や踊りで法王を出迎え、別のグループは「法王さまにご長寿を!」と元気よく叫ぶリーダーの声に続いて法王の訪問を歓迎した。

ガントクのホテルに向かわれる法王を歓迎するため、沿道に列をなす地元の人々。2023年12月11日、インド、シッキム州ガントク(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が宿泊先のホテルに到着されると、ホテルに続くドアの外では、シッキム警察の警備隊がささげ銃(武器を捧げ持っての敬礼)を行い、法王は敬礼を返された。ドアの前には伝統的な “チェマル・チャンプー(チベット人の主食である大麦粉のツァンパ、バター、大麦酒の供物)” を捧げる人々が並び、法王がロビーに入られると、シッキム州政府の残りの閣僚と高官たちが法王を歓迎した。スイートルームの玄関では、法王の次兄であるギャロ・トンドゥプ氏が法王を出迎えた。その後、州首相の家族が法王の元を訪れて敬意を表した。

シッキム州知事のラクシュマン・プラサード・アチャリヤ氏に仏像を贈呈されるダライ・ラマ法王。2023年12月11日、インド、シッキム州ガントク(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

昼食が終わるとすぐに、法王はシッキム州知事のラクシュマン・プラサード・アチャリヤ氏の表敬訪問を受けられた。

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カレル・シュヴァルツェンベルク氏の逝去に哀悼の意 http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231115 Wed, 15 Nov 2023 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231115 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

チェコの政治家、外務大臣、政治的指導者を歴任したカレル・シュヴァルツェンベルク氏の逝去を受けて、ダライ・ラマ法王は、同氏の妻のテレーズ・シュヴァルツェンベルク夫人に書簡を送り、哀悼の意とともに祈りを捧げられた。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

ダライ・ラマ法王とカレル・シュヴァルツェンベルク氏。2016年10月18日、チェコ共和国、プラハ(撮影:ジェレミー・ラッセル / 法王庁)

「シュヴァルツェンベルク氏は、貴国のために尽力され、充実した有意義な人生を送られました。私は、彼がヴァーツラフ・ハヴェル大統領府の長官を務め、後にチェコ共和国の外務大臣の頃からお目にかかる機会をいただいてきました。実際、私がプラハを訪問したある時には、彼は外務大臣でしたが、ブリュッセルに向かう彼の飛行機に乗せてくださったこともありました。私は、彼の心遣いに感謝したものです」

「私にとって彼は同志であり、彼の揺るぎない友情と支援に今も心から感謝しています」

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ネパール地震の被災者へ哀悼の意を表明 http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231106 Mon, 06 Nov 2023 00:00:00 +0000 hhdloffice http://www.dalailamajapanese.com/news/2023/20231106 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王はネパールのプシュパ・カマル・ダハル首相に書簡を送り、3日にネパール西部を襲った大地震によって尊い人命が失われ、多くの負傷者が発生したことに対する悲しみを表明された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「ご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げるとともに、この大地震の被害を受けられたすべての皆様のために祈りを捧げたいと思います」

「私は、被災された方々に必要な援助と支援を提供するために、ネパール政府ならびに関係諸機関があらゆる手を尽くしておられることを知っています」

「ネパールの皆様との連帯のしるしとして、救助と救援活動のための寄付をさせていただきたいと考えています」

法王は書簡の締め括りに祈りを捧げられた。

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