ダライ・ラマ法王14世日本公式サイト https://www.dalailamajapanese.com/ en-us ビハール州首相への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251120 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251120 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、先に行われたビハール州議会選挙における国民民主同盟(NDA)の勝利を受け、ニティシュ・クマール州首相に書簡を送り祝意を表して次のように述べられた。

ダライ・ラマ法王とビハール州のクマール州首相。2023年12月21日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「長年にわたり、私がビハール州、特にブッダガヤを訪問した際に受けた友情と惜しみないご厚意に、深く感謝しています。また、歴史あるナーランダーの伝統を通じて受け継がれてきた古代インド思想への理解と関心を広めるという私の取り組みに対しての継続的なご支援と励ましにも、心からお礼を言いたいと思います。ご承知のとおり、インドが長年培ったきた “カルナー(慈悲)” と、それに基づく “アヒンサー(非暴力)” の実践は、世界の人々にとって大いに励みになる模範となっています」

「近年、ビハール州は生活のあらゆる分野で著しい発展と繁栄を遂げてきました。こうした成果は、貧しく困窮する人々の生活を真に改善するものでるならば、より一層意義深いものとなります。これから直面されるであろう課題において、貴殿が引き続き成功を収め、ビハール州の人々の希望と要望に応えていかれることを祈念いたします」

法王は、祈りと祝福の言葉を添えて書簡を結ばれた。

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台湾の僧たちの『了義未了義善説心髄』詠唱 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251119 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251119 インド・ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今日ダライ・ラマ法王は、法王公邸の謁見室で、台湾の鳳山寺、月稱光明寺、尼衆南海寺の3つの僧院から訪れた、180名を超える台湾の僧侶と尼僧に面会された。法王が着席されると、台湾の僧侶たちは中国語で法王の長寿祈願文を唱えた。続いて参列者を代表する5人の僧侶が、法王にマンダラと仏陀の身・口・意の象徴を捧げた。次に、台湾の僧侶たちは、ツォンカパ大師の『了義未了義善説心髄』(Drang Nges Legs Shey Nyingpo)をチベット語で暗誦した。

法王公邸で行われた法王への謁見の冒頭で、伝統的な供養を行う台湾から訪れた僧侶の代表者。2025年11月19日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

そこで法王は次のように述べられた。
「世界中の様々な伝統仏教の中でも、チベットで継承されてきた教えほど深遠なものは、おそらくないでしょう。そしてその教えの中でも『了義未了義善説心髄』は最も優れたテキストの一つです。私自身もこのテキストを全て暗記しましたが、最近は時々その一部を忘れてしまうことがあります。しかし、皆さんの詠唱を聴きながら、その意味を鮮明に思い起こし、特別な喜びを感じることができました。これは大変素晴らしいことで、今日、ここで暗誦してくださった皆さんに感謝します」

「時の経過とともにチベット国内の状況は著しく悪化しています。この地に亡命してからずっと、私は偉大な典籍の勉強を可能な限り続けてきました。そのための善き条件を整え、障害を取り除いてくださった法友の皆さんに感謝しています。先ほど申し上げた通り、私たちは世界で最も純粋に保たれた仏教の教えの蔵をチベットで守り続けてきたのです」

台湾の僧侶たちとの謁見で参列者に話をされるダライ・ダマ法王。2025年11月19日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「近年の中国においても仏教への関心は非常に高まっています。ですから、私たちがチベットで学んだ仏教の教えを、少しずつ中国語で中国本土に広めていくことができたら素晴らしいと思います。私たちチベット人は美味しい中華料理を味わってきたのですから、今こそ、私たちが長年学んできた、論理と広範な解説に基づくこの教えを、友人たちと分かち合う時ではないでしょうか。中国本土では多くの変化が起こっており、仏教に関心を抱く人々がとても増えています。本日は『了義未了義善説心髄』を暗誦できる台湾の皆さんにここでお目にかかれて、大変嬉しく思います。いずれ中国でも、この優れたテキストを教えたり学んだりする機会が必ず訪れることでしょう。皆さん、ありがとうございました」

謁見が終了し、台湾から訪れた僧侶との記念撮影に臨まれるダライ・ラマ法王。2025年11月19日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、テキストを暗誦した台湾の僧侶とその支援者たち、そしてモンゴル人の団体を合わせた合計250名一人ひとりと謁見された後、会場を後にされた。台湾の僧侶と尼僧たちは、ターラー尊への祈願文を詠唱して法王を見送った。

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アイルランド大統領への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251112 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251112 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、アイルランド大統領に就任したキャサリン・コノリー氏に書簡を送り、次のように祝意をの述べられた。

「世界が大きな試練に直面するこの困難な時代において、長きにわたる公職のご経験は必ずや役立つことでしょう」

「今回の選挙が貴女の功績を称えるものであることに加え、アイルランドが再び女性大統領を選出されたことを大変嬉しく思っています。ご承知のとおり、思いやりに関しては女性が他者の感情に敏感であるという科学的証拠もあります。もし我々のリーダーの中に女性がさらに多くいたならば、世界はより寛容で平和になるであろうと私は信じています」

法王は次のように書簡を締め括られた。
「アイルランド国民の希望と願いを実現するにあたり、これから直面されるであろう課題において、貴女があらゆる成功を収められることをお祈り申し上げます」

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モン・タワンの人々によるダライ・ラマ法王の長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251111 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251111 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今日、会場となるツクラカンの中庭は豪華な花々であふれていた。法王公邸の門からツクラカン階下にあるベランダの玉座まで吉祥模様の赤い絨毯が敷かれ、その上に花びらが蒔かれていた。中庭には、モンパの伝統衣装に身を包んだ約550名の人々が座っていた。

モン・タワンの人々による長寿祈願法要に出席するためツクラカン中庭に到着されたダライ・ラマ法王。2025年11月11日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が門に到着されると、主催者であるモンパ全学生ユニオンとモンユル青年会のメンバーが代表の僧侶ガワン・ノルブ師に率いられて法王に挨拶をした。法王は、通路入口の花のアーチから広場中央まで歩まれ、法王のご長寿と幸福を願う人々に微笑みながら手を振られた。会衆は優しい歌声で法王を歓迎した。

法王が着席されると参加者にもお茶が振る舞われ、法王のために十六羅漢の偈頌に基づく長寿祈願文が唱えられた。ツォクと呼ばれる供物が捧げられると、法王はそれを一口取って召し上がった。続いて、経頭が法王に長寿祈願のマンダラ供養を捧げ、テンドゥン文化保存協会(Tendhon Cultural Preservation Society)会長で僧侶のガワン・ノルブ師もマンダラ供養と身口意の象徴を捧げた。

『不滅の歌』― 法王の二人の家庭教師によるダライ・ラマ法王長寿祈願 ― が唱えられる中、主催者のメンバーが法王の近くに進み出て加持を受け、その傍では供物を手にした人々の列が進み出ていた。

法王は聴衆に、次のように述べられた。
「私は先代ダライ・ラマの転生者として認定され、主にリン・リンポチェから学びつつ、他の方々からも教えを受けました。私はチベットのアムド地方に生まれましたが、困難な状況下でインドに辿り着いてからは世界中の様々な国を訪れ、人々から喜びをもって迎えられました。そして教えと衆生利益のために生涯の大半を費やしてきました。インドに来てからの日々、常に私は仏の教え、そしてチベットの人々のことをいつも心に留めています。また私はブッダガヤを始めとするインドの仏教聖地を巡り、チベットから来た仏教徒たちの利益に貢献していますが、いずれは中国の仏教徒たちに対してもそうできるだろうと感じています」

ツクラカンの中庭で行われた法王の長寿祈願法要にて、聴衆に語りかけるダライ・ラマ法王。2025年11月11日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私はずいぶん高齢になりましたが、とても健康ですので、教えを伝えることができます。真の意味で、仏教の教義を伝え、それを信じる人々に奉仕する機会に恵まれ続けています」

「チベット、ラサのノルブリンカ離宮を後にした時、私は教えと衆生のため、特にチベットの人々のために祈りました。ツァンポ川を渡った時は悲しい気持ちでいっぱいでしたが、渡し守たちが『今はラサを離れるかもしれませんが、悲しまないでください。チベットの宗教と政治のためになさった善行は、どこにいようと無駄にはなりません』と慰めてくれました。なんという心優しい人たちでしょう。私の心は元気を取り戻し、ついにインドに辿り着きました。その後、インド国内の様々な土地、さらには世界各地を訪れることになりましたが、私は常に純粋な動機を保ち続けてきました。どんな時も心を純粋な動機だけに集中させ、肉体的にできることはできる限り行いました。私が純粋な動機から逸脱することはありませんでした。肉体的な困難に直面することもありましたが、どんな場面でも努力をし、目の前の困難に勇気をもって立ち向かいました」

「旅のおかげで、私の名は広く知られることになりました。仏教の教えを伝えることで、大勢の人々に少しはお役に立てたと思っています。私は、懸命に努力をしてきましたが、これからもそうするつもりです。初めてインドに到着した時、人々は私を見て喜んでくれました。それは今も変わりません。どこに行っても、人々は私を見て喜んでくれます」

「モン・タワンの皆さんはここに来て、私のために心から長寿祈願をし、観音菩薩に願いをかけました。この祈願は私への信仰と信頼の証しです」

「私は朝起きてから夜眠りにつくまで、そして眠っている間も、“私を信じる人々に仏陀のご加持がありますように”と祈ります。このようにして私は、衆生と教えに利益があるよう、変わることなく祈り続けています」

長寿法要にて法王の言葉に耳を傾けるモン・タワンの人々。2025年11月11日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「今日、皆さんが信仰に導かれてここに集まってくださいましたことに感謝します。私たちがここまで唱えてきた祈りに加え、観音菩薩、文殊菩薩、ターラー尊の真言を口伝したいと思います」

法王は、まず最初に、観音菩薩の祈願文を唱えられた。


  • 美しく清らかな白きお身体は一点の汚れもなく
  • 正等覚者仏陀の頭荘厳を戴き
  • 慈悲の御心で衆生をご覧になる
  • 観音菩薩に礼拝します


法王は、観音菩薩とチベットの人々の特別な絆について述べられると、聴衆に向かって、法王に続いて観音菩薩の真言 “オーム・マニ・ペーメ・フーム” を三回唱え、さらにこの真言を法王と一緒に数珠一周分唱えるよう言われた。

次に法王は、文殊菩薩の祈願文を唱えられた。


  • 若きお姿を顕し
  • 世界の闇を晴らす
  • 偉大なる智慧の灯の光
  • 文殊菩薩に礼拝します


「私たちには、他者を利益したいという純粋な動機があるかもしれません」と法王は述べられた。「しかし智慧に根差した洞察力がなければ、何が役に立ち、何が役立たないのかを本当の意味で知ることはできません。智慧があれば現実の意味を分析できます。慈悲が智慧と結びつくことは、自分にとっても他者にとっても、何よりも素晴らしいことです」

モン・タワンの人々による法王の長寿祈願法要の様子。2025年11月11日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私の場合、心が明晰なのは、私が文殊菩薩の真言を唱えてきたおかげだと思います。今でも、子供たちがやって来ると、私は彼らにこの真言を教えています。この真言を唱えると、分析的で明晰、迅速、深遠かつ論理的な智慧が得られます」

最後に法王は、ターラー尊は悟りを開いた者たちの徳行と八つの恐怖からの守護を体現している点において、他のどの本尊とも異なると述べられた。そして、法王の後に続いてターラー尊の真言を三度唱えるよう聴衆に言われた。

会長をはじめとする全モンパ学生ユニオン(All Monpa Students Union)から法王に、長寿祈願を受け入れてくださったことへの感謝のマンダラが供養された。続いて、一偈の長寿祈願と『真実の言葉の祈り』が唱えられた。

参加者全員が、法王の玉座に近づいて加持を受けるための列に並ぶ傍らで、様々な歌手が法王の長寿を願う感動的な歌を披露した。法王が公邸に戻られた後も人々は中庭にとどまり、喜びに満ちた祝賀の詩を歌い続けていた。

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ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251031 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251031 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ダライ・ラマ法王が法王公邸の門に到着されたとき、さわやかな秋の空気が漂い、頭上には澄み切った青空が広がっていた。本日の長寿祈願法要を主催するタンロプ・コミュニティの代表者たちが法王を出迎え、法要会場のツクラクカンまで先導した。タシ・ショルパの踊り手たちが踊りを披露し、民族衣装をまとった女性たちが歌を捧げて法王を歓迎した。

長寿祈願法要に出席するため、ツクラカンに向かわれるダライ・ラマ法王。2025年10月31日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

本日の祈願法要は、タンロプ・コミュニティによって現在執り行われている “グル・ブムツォク”(グル・パドマサンバヴァ(蓮華生)への十万回のツォク供養(集団的な儀礼修法))の一環として行われた。この儀軌はチベット暦の10日目に当たる明日、頂点を迎える。この祈願供養の積集に加え、主催者たちは法王公邸の塀を伝統的な色彩である、白と赤茶色に塗り直した。

堂内では、ガンデン僧院シャルツェ学堂僧院長、デプン僧院ゴマン学堂僧院長、ギュトゥ僧院長、ガンデン座主、シャルパ法主、ナムギャル僧院長、タムトク・リンポチェ、そしてラギャラ・リンポチェの若き転生者が法王を歓迎した。本日、タムトク・リンポチェは、ダライ・ラマ5世が著された無量寿仏の長寿の儀軌の導師として、約3千5百人の参列者を先導する。タムトク・リンポチェの右側にはナムギャル僧院の金剛阿闍梨が、左側には同僧院の前金剛阿闍梨が着席した。

ダライ・ラマ法王の長寿祈願の儀軌の導師を務めるタムトク・リンポチェ。2025年10月31日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

儀軌の途中でタムトク・リンポチェは、彩色された絹布を巻きつけ、鏡で飾られた長寿の矢を取り上げ、善き成就を集める所作として、自身の前方の空間で矢を動かした。その後、タムトク・リンポチェはその矢を法王に渡し、法王も同じ所作を繰り返された。

三人の僧侶が法王に、ツォクの供物を載せた大きな皿を捧げ、法王はその一部を受け取って召し上がった後、差し出された甘露に指を浸して口に運ばれた。

長寿祈願法要で行われた法王へのマンダラ供養。2025年10月31日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

タムトク・リンポチェは主催者代表と共に、法王にマンダラ及び仏陀の身・口・意の象徴、長寿の水瓶と長寿の丸薬を捧げ、法王は少量の甘露と丸薬を口に運ばれた。そして、長寿にまつわる様々な色のトルマ(チベット人の主食であるツァンパで作った儀式用の菓子)のセットが法王に献上された。続いて、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財の象徴が載ったそれぞれの盆が法王に捧げられた。

ガンデン座主のジェツン・ロブサン・ドルジェ・リンポチェ、シャルパ法主のジェツン・ンガワン・ジョルデン・リンポチェ、及び主催者の代表たちが仏陀の身・口・意の三つの象徴をそれぞれ法王に捧げた。その間会場では、ジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師が記された『不滅の甘露の旋律―最勝なる勝利者であり、全智なる方―ダライ・ラマ法王14世の長寿祈願文』の読誦が行われていた。

法王の長寿祈願法要で法王に供物を捧げるタンロプ・コミュニティのメンバー。2025年10月31日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ツクラカンの中庭の奥まで延びたタンロプ・コミュニティのメンバーの行列が、仏像や経典などの供物を捧げ持って堂内を巡った。行列の最後尾にはチベットの旗と、白い衣をまとった老人が続いた。法王の2人の家庭教師が詠まれた『不滅の歌―ダライ・ラマ法王の広範な長寿祈願文』が誦経された。

堂内の端に立つ3人の若者が、ダムニェンとギターを伴奏に、法王の長寿を願う現代風な歌を披露した。

法王の長寿を願う歌を披露する3人の若者。2025年10月31日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

最後に、法王が長寿の請願を受け入れてくださったことへの感謝を込めて、感謝のマンダラが法王に捧げられた。そして主催の代表者たちが法座に近づき、法王のお加持と儀礼用のスカーフ(カタ)、そして守護の紐を授かった。

締め括りの祈願の中には、アティーシャ全集に収められた『教えが興隆するための祈願文』が含まれていた。しかし、アティーシャはこれを『月の経典の心髄』の中に見出されたと言われている。続いて『真実の言葉』と、法王の長寿を祈願する、広く知られた以下の短い長寿祈願文が詠唱された。


  • 雪山に周りを囲まれたこの浄土には
  • すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
  • 観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
  • 法王の御足の蓮華が何百刧もの間健やかにとどまられますように


 

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高市首相の選任を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251022 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251022 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

「世界が大きな試練に直面する今、日本の歴史におけるこの重大な局面で国をリードするにあたり、これまでの数十年にわたるご公務の経験がきっと大いに役立つことでしょう。日本は、核兵器による攻撃で計り知れない苦しみを経験した歴史を持つ国として、世界平和の構築に一貫して積極的に取り組んでこられました。また、核軍縮の力強い提唱者でもありました。特に、世界各地で不確実性や混乱が広がる時代だからこそ、対話と外交を通じて問題を解決するための協調的な努力が極めて重要となります」

「ご自身の功績に加え、日本が初の女性首相を選出したことを大変喜ばしく思います。私は、女性がより思いやり深く、他者の感情に敏感であると信じています。この資質は、私自身の愛情深かった母から初めに学んだものです。思いやりに関して言えば、女性のほうが他者の痛みに敏感であるという科学的根拠もあります。ですから、我々の指導者にもっと女性がいたならば、世界はより寛容で平和な場所になるだろうと、私は固く信じています」

「日本と世界がより幸せになるために、これから直面するであろう様々な課題や機会において、首相が成功を収められるよう願っています」

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第39回 心と生命の対話 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251017 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251017 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今週、ダラムサラで「第39回心と生命の対話」が開催された。120名を超える科学者、学者、瞑想実践者、ビジネスリーダー、政策立案者などが、ダライ・ラマ法王公邸下のダライ・ラマ図書公文書館の建物に集まり、心の本質と人工知能(AI)の可能性と課題について考察した。チベットの教育機関や文化機関からのゲストも参加した。

心と生命研究所(Mind & Life Institute)と同研究所ヨーロッパ支部(Mind & Life Europe)、そしてダライ・ラマ基金の共催で開催された本イベントについて、ダライ・ラマ基金事務局長、そしてダライ・ラマ図書公文書館長であるジャンペル・ルンドゥプ氏が次のように紹介した。

この対話は、ほぼ40年にわたるこれまでの対話と同様、東洋の智慧の伝統と西洋の発見に橋を架けるという法王のビジョンに触発されたものである。1987年に開催された心と生命の初会合は、現在では世界的なプラットフォームとなっている基盤を築いた。心と生命研究所は、神経科学、物理学、宇宙論、生物学、そして瞑想の智慧といった専門知識を持つ仏教学者と科学者を集めてきた。脳、心、そして倫理の間には関連性が確立されており、研究所の活動は、僧侶や尼僧たちに、伝統的なカリキュラムに加えて科学の学習を取り入れるきっかけを与えてきた。

心と生命研究所の理事長トゥプテン・ジンパ氏は、開会の辞の中で、この対話は、ダライ・ラマ法王の90歳の節目かつ、この記念として「思いやりの年」とされた期間に行われており、修行の供養とみなすことができると述べた。

ダライ・ラマ図書公文書館で開催された「第39回心と生命の対話」で開会の辞を述べる心と生命研究所理事長のトゥプテン・ジンパ氏。2025年10月14-16日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:心と生命研究所)

最初の対話は、チリの優秀な科学者フランシスコ・ヴァレラ氏と起業家アダム・エングル氏によって企画された。彼らは科学者を法王に送ることで、法王が科学への関心を追求できる場を提供し、仏教と科学という二つの探究的な伝統が互いに知り合う機会を創り出した。

ジンパ氏は、法王が科学者と交流する際には二つの大きな目的があると述べた。一つは、科学的探究の地平そのものを広げ、物質的な枠組みを超えることである。法王は、実際の瞑想体験を含む心の側面に焦点を当てたいと願っておられる。一方、科学は脳画像化を実現する高度な技術を開発し、それによって脳機能が理解できるようになった。心と生命研究所は、人間の体験と意識に関する部分的な理解を超えた調査研究の開拓に大きな役割を果たしてきた。

法王の二つ目の目的は、科学がどのように人類に貢献できるかを見極めることであり、法王は、そのためには思いやりの動機を持つことが不可欠だと考えておられる。

ジンパ氏は、洞察は対話を通して生まれるという法王の根底にある信念、つまり真に洞察に満ちた発見に魅了されたと報告した。西洋では、学術会議はしばしば独白のようなものだと言う。科学者は論文を発表し、いくつかの質問に答え、席に着く。しかし心と生命の対話は、集団的な対話から明確な理解が生まれることを想定していて、人々が集団的に考え、共に声に出し、考えるための空間を創り出す。そしてこの対話の本質は他分野にわたっている。

ジンパ氏は、今年の対話のテーマが「心、人工知能(AI)、そして倫理」であったことを大変嬉しく思っていると述べた。なぜなら、人間がAIとどのように共存していくかは、現代を決定づける問いとなるからである。議論や討論の場が騒々しい声に支配されないようにするために、人類の知識の最も深くて最も多様なリソースを掘り下げなければならないとした。人類の未来が危機に瀕しているのである。

彼は、この関係において心と生命の対話の「魔法」がどのように展開していくのかを見るのが楽しみだと付け加えた。AIへの関心は認めつつ、研究にアクセスできないため、何が真実で何が誇大広告なのか確信が持てないと感じている。

対話は2時間ずつのセッションが6回にわたって行われた。4人の発表者によるパネルディスカッションには、以下のメンバーが集められた。ワシントン大学のエミリー・M・ベンダー氏、ジャンチュブ・チョーリン尼僧院のアニ・チョヤン氏、プリンストン大学のモリー・クロケット氏、ミシシッピ大学のロバート・カミングス氏、京都大学のマルク=アンリ・デロッシュ氏、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)のジェイソン・ガブリエル氏、メンフィス大学のショーン・ギャラガー氏、米国の東西センター(East West Center)のピーター・ハーショック氏、AIデジタル政策センター(Center for Al and Digital Policy)のマーヴ・ヒコック氏、心と生命研究所理事長のトゥプテン・ジンパ氏、ギュト密教学堂のカンセル・リンポチェ、ハギング・フェイス(Hugging Face)のサーシャ・ルッチオーニ氏、パドヴァ大学のキアラ・マスカレッロ氏、エディンバラ大学のケイト・ネイブ氏、エルサレム・ヘブライ大学のアナト・ペリー氏、ガンデン僧院ジャンツェ学堂のゲシェ・ロドゥ・サンポ師、インペリアル・カレッジ・ロンドン、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)のマレー・シャナハン、ブリュッセル大学のリュック・スティールズ、セラ僧院ジェ学堂のゲシェ・タブケ師、フローニンゲン大学のマリーケ・ファン・フォークトである。

各発表者による10分間のプレゼンテーションの後、パネリストによるディスカッションが行われた。その後、短い休憩を挟んでから、聴衆からの質問を受け付けた。

10月16日(木)午後の最終セッションでは、プログラム企画委員会メンバーであり発表者でもあるリュック・スティールズ氏が、会合の主要テーマを詳細にまとめた。まず、AIが人々の苦しみを軽減し、公平性と社会の調和を促進して地球上の繁栄を支える可能性について議論がなされた。次に、AIが健康と福祉、仕事、教育、政治、気候変動対策に及ぼすリスクについて考察がなされた。最後に、AIが有害な影響を回避して地球上の生きとし生けるものすべての幸福に資するために、人間はどのような倫理的資質を人工知能に注入すべきか、また注入できるかについて検討がなされた。

これらの主要テーマは5つのセッションに分かれおり、最初のセッションは哲学的観点からの心について、次はもつれを解きほぐすことと有意義な人間関係についてであった。3番目のセッションは集合的なナラティブ(物語)と将来の可能性について、続いて多様性と倫理に関するセッション、そして最後に教育に関するセッションであった。

これらのセッションから、4つの問いが提起された。1つ目は、AIは今現在何をしていて、私たちはAIを使って何ができるのか、という問いである。2つ目は、AIの活用が私たち自身や社会にどのような影響を与えるのかという点である。これらはAIの現状に関する問いである。しかし、発表者たちは未来にも関心を持っており、未来は人間によって創造できる、そして創造しなければならないという共通の認識があった。この会合は、AIが将来何を実現できるのか、そしてどのようにそこに到達するのかという方向性を定める重要な機会となった。

では、AIは今何をしているのだろうか?チャットボットの様々な例があったが、今回の会合では主に私たち人間に関わる応用に焦点が当てられた。他の多くの会議では、AIがデータサイエンスやデータ分析などで何ができるかが議論されてきた。今回のポイン トは、人間に関する話題に焦点を当てることであった。

いくつか警告があった。まず、大企業の広報部が作り出す誇大広告に惑わされすぎないことで、冷静さを保ち、AIに対して批判的な見方をすべきである。

ショーン・ギャラガー氏は、「チューリングテスト(人工知能が人間のように振る舞えるかを判別するテスト)の誤謬」とも言える点を指摘した。それは、何かをシミュレートすることと、実際にそうであることの間には大きな違いがあるということである。そのため、チャットボットが「あなたに同情します。」と言ったとしても、それは単なる言葉であり、そのシステムが思いやりを持っている、あるいは憐れみを感じていると騙されてはならない。

ジンパ氏は、言葉の使い方には注意が必要だと助言した。人間の場合に意味を成す言葉を、他の状況や存在に当てはめ始めると、危険な状況に陥る可能性がある。モリー・クロケット氏は、テクノロジーへの楽観主義や人間への悲観主義に囚われないようにすべきだと述べた。私たちは、このすべてにおいて人間の優位性を忘れてはならない。人間は現在の機械の能力をはるかに超えており、この状況は今後もしばらく続くだろう。

エミリー・ベンダー氏は、擬人化された AI については、私たちが見たものや言われたことをあまり深読みしすぎないよう、注意深くならなければならないと指摘した。

今、どのような影響があるのか、と問われれば、もちろんその影響は甚大であり、今後さらに拡大していくだろう。ジンパ氏は新たな現実の創造について語った。好むと好まざるとにかかわらず、私たちがその一部となる新たな現実は、AIが作り出す舞台で私たちがどれだけのことを演じる覚悟があるかにかかっている。特定のテキストの受信者や特定のチャットボットのユーザーなどが、自分が相手にしているのがAIであることに気づくと態度が変わるという指摘がある。この点に気をつけることが重要である。

発表者や聴衆の参加者は、AIが子供や若者に与える影響について特に懸念を示した。AIはすでに世の中にあるものの、それが精神発達にどのような影響を与えるのかは分かっていない。十分な研究が行われておらず、私たちは皆、モルモットのようなものである。私たちの子供や孫に関しては、さらに注意を払う必要がある。

サーシャ・ルッチオーニ氏は、もう一つの大きな問題である資源利用に注目した。誰もが省エネに努めている一方で、その努力を完全に無駄にする技術が開発されてしまったのである。

AIの将来像について、リュック・スティールズ氏は、よく耳にする言葉の一つは「思いやり」で、目指すべきものであると述べた。もう一つのキーワードは「責任」で、権力には責任が伴うからである。透明性の向上、価値観への配慮、そして教育者への影響力の拡大が不可欠であると合意された。ゲシェ・ロドゥ・サンポ師は、AIは回避するためではなく、繋がるために使うべきだと提言した。AIは愛することはできないが、より良い愛を育むのに役立つと述べた。AIは、対立ではなく、変化と内なる成長をもたらすために活用すべきである。このことを念頭に置けば、私たちは未来を共に創造することができるが、そのためには行動を起こさなければならない。

法王公邸にて「第39回心と生命の対話」の参加者と記念撮影をされるダライ・ラマ法王。2025年10月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

心と生命研究所と同研究所ヨーロッパ支部の発表者とゲストが今日、法王との接見に出席した際、法王は次のように話された。

「このような対話を時々行うことができたら、本当に素晴らしいことです。仏教の観点からも、このような対話を行うことは儀式などを行うよりも非常に有益です。状況が安定していれば、心と生命は未来に続いていくことができるでしょう」

「私自身、ラサにいた頃は哲学の伝統を学び、問いかける側、問いに答える側の両方の視点を取り入れて問答の練習をしていました。学ぶ時は、頭脳を使います。私も学んでいるときは頭脳を使っていました。もちろん、子供の頃は先生に罰せられるかもしれないという恐怖心もありました」

「科学者は、仏教の伝統に根ざした論理と認識論、そして批判的思考を活用でき、そこから恩恵を受けることができます」

「最近、毎朝目覚めると菩提心を育み、私を信頼してくれる人たちすべてのご多幸を祈っています。私の人生はすべて他者の幸福のために捧げています」

「私は僧衣を纏った宗教指導者ですが、講演ではよく科学を取り上げます。これは、私たちが行う批判的思考が科学的探究に匹敵するからです」

「私たちは母親から生まれた瞬間から経験を積み重ね、意識に根ざした感情を持っています。ですから、人生は心によって支えられているので、心のはたらきを理解することが重要なのです」

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2025年のノーベル平和賞受賞者を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251011 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251011 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は本日、今年のノーベル平和賞を受賞したマリア・コリナ・マチャド氏に宛てて書簡を記され、ベネズエラ国民の民主的権利を推進するための断固とした取り組みと、平和で平等な社会の実現に向けた決意が高く評価されたことを祝福され、書簡の中で次のように述べられた。

「民主主義の発展に献身する中で、貴女は他者への奉仕において揺るぎない勇気を示されました」

「貴女の模範的行動は、民主主義と自由を守るために、私たちは声を上げる必要があるということを思い起こさせてくださいます」

「共通の目的のために人々を結びつける活動において、貴女は平和で調和した状態を実現できるという希望を体現されています」

法王は、祝福の祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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カンタベリー大主教に指名されたサラ・マラーリー氏への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251005 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251005 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、現ロンドン主教であるデイム・サラ・マラーリー氏が次期カンタベリー大主教に指名されたことを受け、10月4日付で書簡を送られた。その中で心からの祝意を表して、次のように述べられた。

「今日、世界は多くの困難に直面しています。基本的な人間の価値が問われている時代です。宗教の指導者として、私たちには基本となる人間の価値に再び人々の関心が集まるようにするための、特別な責任があると確信しています。全ての伝統的宗教は、許し、忍耐、慈悲を説き、それらを育む方法を示しています。そのような実践的な良き徳性は、他者と実りある形で分かち合えるものです」

「貴女が英イングランド教会の初の女性指導者となられることを大変喜ばしく思います。ご存知かもしれませんが、科学的な証拠によれば思いやりという点で、女性は他者の感情に対してより敏感です。したがって、より多くの指導者が女性であれば、世界はより理解と平和に満ちた場所になるだろうと私は固く確信しています。あなたの任命は希望の光です」

このように述べると、法王は祝福の祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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ダラムサラでの法話会 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251004 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251004 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、澄んだ青空にダウラダ山が堂々と聳え立つ中、ダライ・ラマ法王はツクラカンの階下入り口へと車を走らせた。台湾からの1,300人を含む約5,800人の聴衆を前に、法王はそれぞれの顔をじっくりと時間をかけて眺めてから、微笑み、手を振られた。大勢の聴衆が法王に微笑みを返し、中には目に涙を浮かべる人々もいた。

ツクラカンに到着されたダライ・ラマ法王を見つめる台湾からの聴衆。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が着席されるとすぐに、台湾人僧侶の先導で『般若心経』が中国語で唱えられた。つづいて仏陀の身口意の象徴と曼陀羅供養が法王に捧げられた。

「私たちは皆平等です」と法王は語り始められた。「なぜなら、誰もが幸せを求め、苦しみを避けたいと思っているからです。そして、どうしたらその目的を実現できるのかを聴くために、今日皆さんはここに集っています。世界には多様な宗教の道がありますが、チベットではナーランダー僧院の伝統に従い、ナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)、その弟子たちの著作を学びます」

「私に関して言えば、私はチベット、ドメ地方のクンブムに生まれました。ダライ・ラマの転生者と認定されてからはラサに移り住み、リン・リンポチェやティジャン・リンポチェといった家庭教師の方々から学びました。まずは主要五科の根本経典を暗記し、その後、それらを解説している偉大な注釈書を読み、また教えを受けました。仏教の教えの伝統は、理性と論理に従うという点に特徴があります。また、そこには心と感情に関する精緻な解説も含まれます。これが、私たちが純粋なままに守り伝えてきた伝統です。

「今日では、歴史的に仏法と縁のない西洋の人々も私たちの伝統に興味を示しています。その中には科学者もおり、彼らは特に心と感情に関する知識を得ることに熱心です。ここに集まった私たちは皆、仏陀とその教えをまとめた八万四千の法門の信奉者です。私はこれを宝物のように思っています。

「私は子供の頃に仏教を学び始めて以来、智慧の完成(般若波羅蜜)、中観哲学、論理学と認識論、倶舎論、戒律を学んできました。私は学び始めた初期の段階から、論理学入門で学んだ内容を基に、問答に取り組みしました。そうした精緻な検証と分析に基づく学習方法は、仏陀が説かれた内容を真に理解する上で非常に効果的です」

「密教には、心と感情の働きに関する詳細な解説に加え、意識に関するさらに深遠な解説があり、多様な心の状態における様々なレベルの心の微細さが提示されています」

ツクラカンで行われた法話会で聴衆に語りかけるダライ・ラマ法王。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏教ではすべての有情への慈悲が説かれますが、私にとってチベット人は特別なつながりのある人々です。私はこれからも、チベット人に対してできる限りの奉仕をしていくつもりです。チベットでは今なお中国共産党が支配を続けていますが、仏教とナーランダーの伝統に興味を持つ中国人が増えてきています。中国は歴史的には仏教国でしたから、仏教が復興する可能性があるかもしれません。私はその可能性の実現に向けて後押しをしてきましたし、今後も残りの人生をかけて続けるつもりです」

法王は、菩提心の生起と、菩薩戒を授ける儀式を執り行うと述べられ、聴衆に、仏陀、その七人の後継者、文殊菩薩と弥勒菩薩、さらにインドとチベットの偉大な聖者方を眼前に思い描くように指示された。つづいて七支分の祈願が唱えられ、さらに法王は、ご自分に続いて三度唱えるよう弟子である聴衆に指示してから、帰依と菩提心の偈頌を唱えられた。


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします

仏陀・仏法・僧伽〔の三宝)に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします

最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は聴衆に、幼かった頃の自分は仏の教えにあまり熱心ではなかった、と語られた。しかし歳を重ねるにつれ、心を変容させる修行がいかに有益であるかがわかるようになった。有神論の伝統に従う人々は神に信頼を寄せるが、チベットや中国の仏教徒にとっては、仏陀・法・僧伽への帰依が最も重要である。法王は、チベットの僧院を訪れた際に非常に信仰心の深い修行者たちに出会い、彼らの敬虔さは法王ご自身に勝ると感じられた、と振り返られた。

ダライ・ラマ法王から菩薩戒を受ける聴衆たち。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

仏教の伝統のもう一つの側面は、カルマについてであり、それは私たちが生み出すあらゆる種類の善悪の業と、意識の微細さの様々なレベルに関連している、と法王は述べられた。チベットに受け継がれてきた仏教の伝統は、非常に広大かつ深遠な、素晴らしい伝統であるとつづけられた。

「私たちは皆、自分が自分と他者を区別していることを知っています。また、自分たちの伝統は、他者の伝統とはどこか違うとも考えています。私たちがすべきことは、すべての宗教的伝統の価値を認めることです。他の伝統について分析した際に、自分たちの基準とは合わない面があったとしても、だからといって、それらの伝統に敵対する理由にはなりません」

「宗教を真摯に実践するには、心を律し、感情を制御する必要があります。そして、どの伝統も信者たちの心を鎮める力を秘めています。そうであれば、仏陀の信者は、他のすべての宗教的伝統を尊重するべきです。そのような理由から、他の伝統を敬うことが大切なのです」

「私が中国共産党の支配下で暮らしていた頃は、怒りを覚える状況が繰り返し起きました。私はその後1959年にチベットを逃れました。感情を制御し、心を変容させることのできる手段を与えてくれる仏教の伝統に、私は心からの感謝と信頼を抱いています」

「温かな心と菩提心を育み、それを身近な人々と共有できたなら、心がゆったりと安らいで、周囲の人たちも幸せになることでしょう」

「私は北京滞在中に、何度か毛沢東に会いました。ある時、彼は真剣な顔をして『宗教は毒だ』と私に言いました。私は何も言いませんでしたが、精神の修行がどれほど有益であるかを彼が知らないことを、気の毒に思いました」

ツクラカンでの法話会を終え、ゴルフカートで公邸へお帰りになるダライ・ラマ法王。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、仏陀・法・僧伽の三宝への帰依の偈頌を繰り返し唱えることに加え、真言も唱えることで心に善いインスピレーションを与えられる、と勧められた。そして、自分に続いて唱えるよう聴衆に指示してから、仏陀釈迦牟尼、ターラー尊、観音菩薩、文殊菩薩の真言を口伝された。

法王は、さらに薬師如来の真言を伝授なさった後、人は時として望みを成就する上で障害に直面することがあるが、そういう時は馬頭尊の真言を唱えるとよい、と勧められた。つづけてグル・パドマサンバヴァの真言をお唱えになり、最後に、本日の聴衆の大多数が自身をゲルク派だとみなしていることから、ツォンカパ大師への礼讃偈『ミクツェマ』の伝授をされた。


御身は、空性了解を伴う大悲の宝蔵、観自在
無垢なる智慧に自在なる文殊師利
あらゆる魔軍を砕破する秘密主(金剛手)
雪国(チベット)の智者の冠たるツォンカパ
ロプサン・タクパの御足に祈願いたします


最後に、経頭が『不滅の歌』と呼ばれる、法王の二人の家庭教師、リン・リンポチェとティジャン・リンポチェによって記されたダライ・ラマ法王のご長寿を願う祈願文を唱え、法話会を締めくくった。法王はツクラカンを出られ、エレベーターに向かう道すがら、法王と目を合わせたいと願いながら通路に並んでいた人々に微笑みかけたられた。中庭に着くと、法王はゴルフカートに乗り込み、公邸への帰路に就かれた。

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長寿祈願法要と文化伝統芸能式典 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250920 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250920 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ここ数日にわたり北インドを襲っていた豪雨は止み、太陽が顔を出した。ツクラカンの中庭には韓国と東南アジア10カ国から1,000人を超える人々が集まり、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願して自国の文化伝統芸能を披露した。

長寿祈願法要と文化伝統芸能を披露する式典に出席するため、ツクラカンの中庭に到着されたダライ・ラマ法王。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

色とりどりの布で飾り付けられた中庭は、マリーゴールドの花輪が吊るされ、蘭の花がずらりと並び、床には絨毯が敷かれていた。法王が公邸の門に到着されると、主催グループの代表たちが法王を出迎えた。ツクラカン下のベランダに配された法座までの通路には、獅子舞の衣装をまとった踊り手たち、そして法王のために後で踊ることになるアーティストたちが並んでいた。法王はいつものように、喜びに満ちた表情で左右に集まった人々に手を振り、通路の先頭に座るパーリ語の伝統(テーラワーダ)の僧侶たちには立ち止まって挨拶された。

シンガポールのチベット仏教センター会長のシスター・ウィニーは、法王、僧院の僧伽の方々、その他すべての来賓たちに敬意を表してから、ここに集う人々が法王の長寿とご健康、ずっと法輪を回し続けて(仏法を説き続けて)くださるように祈っていると述べた。そして、法王が世界に与えられてきた善行を称えて、“思いやりの年” を象徴するメダルを法王に捧げた。

本イベント共催者の一つで、タイのチェンライにあるライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)座主のプラメティワチロドム・V・ワチラメティ師が率いる約30名のテーラワーダの僧侶たちが、法王の長寿と世界平和を願う祈願文をパーリ語で唱える中、主催者代表の14名がマンダラと仏陀の身口意の象徴を捧げた。

ダライ・ラマ法王の長寿と世界平和を願う祈願文をパーリ語で唱える上座部仏教の僧侶たち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

式典参加者全員を代表して、ベトナム仏教僧伽(Vietnam Buddhist Sangha)執行委員会副委員長であり、ベトナム中央委員会副委員長でもあるティク・ナット・トゥ師が共同声明を読み上げた。法王は、世界で最も著名で尊敬される仏教指導者であり、平和、普遍的責任、自己規制、そして宗教と社会の調和という理想を体現されているとし、法王がノーベル平和賞、米国議会名誉黄金勲章、テンプルトン賞など、数々の賞を受賞されたことを想起させた。

続けて、法王は生涯をかけて仏教の伝統を強化する一方、同時に異なる宗教間の対話を促してきたことが述べられ、揺るぎない非暴力や環境保護、チベット文化保全への法王の使命は、世代を超えて人々にインスピレーションを与えてきた。

参加者全員を代表して共同声明を述べるベトナム仏教僧伽執行委員会副委員長、ベトナム中央委員会副委員長のティク・ナット・トゥ師。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ゆえに、アジアの仏教指導者と仏教徒たちはダライ・ラマ法王の90歳の誕生日を祝うためダラムサラに集い、法王は「仏教界の普遍的な仏法王」であると満場一致で宣言した。また、法王の崇高なビジョンと法王が体現されている限りない思いやりを実現し、真に調和のとれた平和な世界を築くことに精進することを再確認した。

次に、主催者代表の7名、僧伽代表の7名、その他の仏教指導者たちが、様々な贈り物を法王に捧げた。マンダラ供養に関連する礼賛偈が英語で唱えられ、観音菩薩を称える次の偈頌から始まった。


雪山に周りを囲まれたこの場所に
すべての利益と幸福の源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ猊下の
御足の蓮華が輪廻の終わりまで健やかにとどまられますように


その祈願文は次のように締めくくられた。


仏陀の尊き教え、あらゆる仏教の伝統における顕教と密教の教えが
末永く受け継がれますように
私たちの尊き指導者、偉大なるダライ・ラマ法王の大慈悲の御業と
揺るぎない人生に倣い
世界のあらゆる精神的・物質的幸福が幾百劫にも渡って栄えますように


共同主催者として、シンガポールのチベット仏教センターのほか、以下の名が紹介された。韓国のラブスム・シェドゥプリン(Labsum Shedrup Ling)、マレーシアの道浄禅林(Persatuan Lamrim Buddhaksetra Retreat Centre)、マレーシアの金剛乗仏教徒協議会(Vajrayana Buddhist Council of Malaysia)、タイのライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)、インドネシアのカダム・チューリン(Kadam Choeling Indonesia)、インドネシアのタンゲラン・バンテン州立スリウィジャヤ仏教大学(Sriwijaya State Buddhist College of Tangerang Banten Indonesia)。

ダライ・ラマ法王に供物を捧げる東南アジア諸国および韓国の仏教徒たち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

その一方で、主要な支援者14名からなる2番目のグループがマンダラ供養をし、150名の信者が法王に贈り物を捧げた。
この時、主催者を代表して本式典の議長が法王に聴衆へ話をしてくださるように依頼すると、法王は次のように話を始められた。

「おはようございます。私の人生における経験をいくつかお話ししたいと思います。私はチベット北東部のアムドに生まれました。まだ幼い頃に中央チベットのラサに移り、そこでしきの定義などを扱った論理学の入門書『仏教基礎学』から仏教の勉強を始めました。その後、論理学と認識論、中観哲学、戒律(ヴィナヤ)、論書(アビダルマ)を学びました。もっとも、この伝統における宇宙論の提示方法にはあまり興味がなかったのですが。般若波羅蜜についても学びました。仏教哲学を学ぶ中で、心理学や心の認知的側面、つまり私たちの心が対象とどのように関わっているのかについても探求しました」

「私は熱心に学び、智慧の仏である文殊菩薩に、この学びを支えてくださるよう祈りました。様々な古典論書を学んでいる間、家庭教師や問答の助手の方々には大変助けられました。学びに加えて、生活の一部として瞑想を通して菩提心(悟りを得たいという熱望)も育みました」

参加者に向け、話をされるダライ・ラマ法王。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「学び終えると試験を受けたのですが、中央チベット三大僧院であるセラ僧院、デプン僧院、ガンデン僧院への訪問も含まれており、多くの著名な学者と問答を行いました。それが終わると、ラサのジョカン寺で最終試験を受けました」

「アムドの人里離れた村の出身でありながら、全課程を履修し、最終試験を受られたことは幸運だと感じました。この期間、私の問答の助手たちには大変お世話になったのですが、助手の一人はあまり賢くなかったので、彼との問答ではその点を利用できることに気づきました」

「いずれにせよ、仏教の勉強を終えてゲシェ(仏教博士)の学位を取得できたことは、私にとって非常に重要なことでした。加えて、三つの実践修行(三学)、すなわち持戒、禅定、智慧(戒学かいがく定学じょうがく慧学えがく)の実践にも取り組みました」

「最終試験を終えて間もなく、当時起こっていた騒乱のため、チベットから逃れなければなりませんでした。夏の宮殿であったノルブリンカを去る前に、六臂マハーカーラ像のあるお堂へ行き、その前で祈りを捧げました。そして、悲しみつつも密かにノルブリンカを脱出し、祖国を離れる旅が始まりました。しかし同時に、自由な国インドへ向かうので自信も感じていました」

「1959年、インドに到着すると、ジャワハルラール・ネルー率いるインド政府から温かい歓迎を受けました。ネルーは私やその後に来た人々にとても親切で、多大な援助をしてくださいました」

式典でのツクラカン中庭の檀上の様子。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「亡命後、学ぶ過程で得られた知識や経験を、世界と共有する素晴らしい機会を得ました。物質だけでなく、心と感情についても学びました。テキストには、さまざまな心の状態や物質の状態の微妙な違いが著されています」

「とにかく生涯を通じて私の主な実践は、利他の心である菩提心を生起し、空の正しい見解を培うことでした」

「今日は、私の長寿祈願のために集まってくださり、ありがとうございます。特に僧侶の方々には、この法要のために来ていただき感謝申し上げます。私たちは娯楽のためではなく、精神的な理由で集いました。先ほど申し上げたように、私は日々菩提心と空の見解を育むことを心がけています。また、僧侶としての戒律を守り、堅持しています。さらに、長年学び続けてきた般若波羅蜜と中観哲学についても深く考えています」

「1954年に中国を訪れ、毛沢東主席にお会いしましたが、ある時、毛主席が宗教は毒だと言いました。そのとき、彼の無知に対して思いやりの感覚が生じました。亡命し、インドで自由を得て以来、仏教を学びたいと願う人々、特に心と感情の働きについて学びたいと願う人々に、私の知識、経験、そして仏法の実践について分かち合ってきました。チベットの伝統を学びたいと願う人々はますます増えています。私は彼らのために最善を尽くしてきたと感じています」

「先ほど申し上げたように、みなさんは精神的な理由と私の90歳の誕生日を祝うためにここに集まりました。私の長寿を願って祈願や供養をしてくださったこと、そして仏法の修行をし、他者、特に僧侶への奉仕に尽力してくださったことに、心より感謝申し上げます。私も仏法を通じて他者に奉仕すると決意しています。ダライ・ラマとして、人々の心が前向きな状態になる手助けができたことを幸運だと感じています」

「祈願法要、そして私の90歳の誕生日を祝ってくださり、ありがとうございます」

ダライ・ラマ法王に舞を披露するラオスのダンサーたち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

次に、タイ、ベトナム、インドネシア、ラオス、ミャンマー、カンボジア、マレーシア、シンガポールの東南アジア8カ国から、優雅な文化伝統芸能が披露された。タイからは孔雀の舞、ベトナムからは歌による長寿祈願、インドネシアからは平和と調和を祈願する舞が演じられた。ラオスからは2名の女性が愛の花を表現する踊りを舞い、ミャンマーの男女のダンサーは古代の弓形ハープ「サウン」の伴奏に合わせて踊った。カンボジアからの3名の女性は、金色の冠と装飾品を身に着け、同じく金色の花を手に舞を披露した。

マレーシアの男女のダンサーたちは、団結と包摂性を表現するために、活気に満ちた動きで素早く回転しながら踊っていた。最後に、シンガポールから来た8人のダンサーチームが、軽快な太鼓の音に合わせて神話上の獅子に扮し、エネルギッシュなパフォーマンスを披露した。それぞれの獅子舞の衣装の中には、見事に息の合った2人のダンサーが入っていた。パフォーマンスの最中、1頭の獅子が法王の長寿を願う祈願文が書かれたものを掲げ、法王に捧げた。

踊りを披露するマレーシアのグループ。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

素晴らしく楽しいパフォーマンスの数々に、観客からは温かい拍手が送られた。

シンガポールの代表より、収入額および支出額について簡潔な財務報告が行われ、残額はダライ・ラマ基金に寄付することが宣言された。主催者に感謝の意が表され、次の廻向文が述べられた。

「この法要による功徳がダライ・ラマ法王の長寿と真の世界平和の確立に役立ちますように」

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インド、モディ首相の誕生日を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250917 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250917 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドのナレンドラ・モディ首相の誕生日を祝して書簡を送られ、同氏の健康を祈念するとともに、次のように記された。

「インドに最も長く滞在している客人として、私はこの国が年月を重ねる中で成し遂げてきた目覚ましい発展と繁栄を、直接この目で見てきました。近年における自信と力強さの高まりに心より祝意を表します。インドの成功は世界全体の発展にも寄与しているのです」

「私は自らを、インドの誇り高き使者であると考えています。世界最多の人口を擁する、世界最大の民主主義国家であるインドの卓越した、そして深く根づいた宗教の多様性に対する敬意を、私は折に触れ語ってきました。インドは世界に調和と安定の模範を示す存在なのです」

「私たちチベット人にとって、インドは精神的伝統の源であるだけでなく、66年以上にわたる住まいであり、故郷です。この場をお借りして、インド政府と国民の皆さまの温かく寛大なお心遣いに対し、深い感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」

法王は、祈りと祝福の言葉をもって書簡を締めくくられた。

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インド次期副大統領への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250911 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250911 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドの次期副大統領にC.P.ラーダークリシュナン氏が選出されたことを祝して書簡を送り、その中で次のように述べられた。

「1959年にチベットを離れることを余儀なくされて以来、私を含む多くのチベット難民がインドで温かく受け入れられてきたことに深く感謝しています。インド政府にとって最も長きにわたる客人として、私は各地を巡り、あらゆる分野の人々と出会う機会に恵まれてきました」

「何千年にもわたり、インドは “慈悲(カルーナ)” と “非暴力(アヒンサー)” の理念を守り続けてきましたが、今日ではこれらの理念への理解が広く世界に浸透しています。それは個人の内なる平和のみならず、世界全体の平和を育む可能性を秘めています。加えて、インドは宗教的調和の地であり、多様なコミュニティが共に暮らしています」

「私はしばしば、自らを『インドの息子』と表現しますが、それは、私の思考のあり方すべてが、古代インド思想の一部である仏教の修練によって形づくられてきたからです。ご存じの通り、チベット仏教文化は、ナーランダー僧院の学僧たちによって培われた理論と分析の伝統に深く根ざしています」

ダライ・ラマ法王は、インドという偉大な国の人々の希望と願いを実現する歩みにおいて、次期副大統領が大いなる成功を収められるよう、祈りの言葉で書簡を締め括られた。

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ダラムサラでの長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250910 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250910 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

本日、ダラムサラのツクラカンにて、ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要が執り行われた。ロカ文化福祉協会(Lhokha Cultural & Welfare Association)、ナムギャル仏教学研究所・イサカ(Namgyal Institute, Ithaca)および各国に暮らすチベット人青年たちによって捧げられたこの法要には、およそ4,000人が参列した。

背負った大太鼓を打ち鳴らしてダライ・ラマ法王を歓迎するゴンカル・チューデ僧院の僧侶たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

若いチベット人たちにとって今日の法王の長寿祈願法要は、今後3日間にわたり開催されるチベット青年フェスティバルの幕開けとなった。フェスティバルでは若者たちが法王への信仰と敬意を新たにする場として、「誓約」「繋がり」「祝福」に焦点が当てられることになっている。

ダライ・ラマ法王が法王公邸の門に到着されると、主催団体の代表者たちが出迎えた。中庭ではゴンカル・チューデ僧院の僧侶たちが背負った大太鼓を打ち鳴らして歓迎し、チベット人の女性たちが歌で敬意を表した。法王は満面の笑みを浮かべ、人々に手を振ってその喜びを示された。

ツクラカンの入口では、ペンパ・ツェリン主席大臣が前に出て法王を出迎え、ナムカイ・ニンポ・リンポチェがカタ(儀礼用の絹のスカーフ)を捧げた。法王が着座されると、正面最前列には、法要を先導するサキャ派プンツォク宮のアヴィティタ・ヴァジュラ・リンポチェと、ロダク・カルチュ僧院のナムカイ・ニンポ・リンポチェが並んで座した。

法要はグル・リンポチェへの七句の祈願文と、5人のダーキニーの招請から始まった。続いて、持明者たちへの祈請が行われ、「時は至れり。どうか不死の成就を授けたまへ」という祈りの言葉が繰り返された。供物が捧げられ、法王の長寿への祈願を込めて、長いマンダラ供養が行われた。

供物を手に祈りを捧げる主催団体の代表者たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王の長寿を願う人々が供物を携えて堂内を進む中、ナムカイ・ニンポ・リンポチェは、仏陀の身・口・意(お身体・お言葉・お心)を象徴する供物を献上した。法王が三世の諸仏を体現するラマとして観想され、長寿の壺、不死の甘露、長寿の丸薬、トルマ(チベット人の主食ツァンパで作られた儀式用のケーキ)、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財が次々と捧げられた。

ジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師によって作られた法王の長寿祈願文が唱えられ、続いて法王の二人の師による祈願文が読誦された。

「私たちにとって、これほど慈悲深い存在はほかにいません。テンジン・ギャツォ、ダライ・ラマ法王よ、どうか永遠にご健在でありますように。チベットにお戻りになり、祖国と世界に散らばるチベット人が再び一つとなれますように」、——チベット子ども村(TCV:Tibetan Children‘s Village)の学生たちが歌を捧げた。続いてロカ地方の大人たちも歌を披露し、両グループとも温かな拍手で迎えられた。

ダライ・ラマ法王に歌を捧げるチベット子ども村の学生たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

ダライ・ラマ法王は、法要の参列者に向けて次のように述べられた。

「本日ここに集った私たちは、皆、深い献身と誠実な心をもって臨んでいます。私は幼少の頃から、ギャルワ・テンジン・ギャツォ、すなわちダライ・ラマとして認識され、タクダ・リンポチェ、リン・リンポチェ、そしてティジャン・リンポチェから教えを受けてきました。また、討論の助教たちの助けを得て哲学と論理を学び、仏教哲学の探求には大いなる熱意をもって取り組んできました」

「やがて私は亡命を余儀なくされましたが、ノルブリンカを離れる前に、六臂マハーカーラの尊像の前でお祈りを捧げました。彼を置いていかねばならない事が心残りでなりませんでしたが、そのお姿は今も鮮明に心に残っています」

「亡命して以来、私は世界のさまざまな国を訪れてきました。そして今日ここダラムサラで、皆さんは比類なき献身と勇気、そして深い敬意をもって、私の長寿のための祈りを捧げてくださいました」

「私はアムドに生まれ、後に中央チベットへ移り、般若学や中観哲学などの学びに励みました。ヴァスバンドゥ(世親)による『阿毘達磨倶舎論あびだつまくしゃろん』については、世界の成り立ちなどの記述に対して、私自身あまり熱意や信頼を持てませんでしたが、般若学、中観、論理については、学ぶことでその本質に触れることができたと思っています」

ツクラカンで行われた長寿祈願法要の参列者に向け、話をされるダライ・ラマ法王。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私はこれまで多くの浮き沈みを経験してきましたが、それによって健康や決意が損なわれることはありませんでした。また、中国が何を言おうとも、自らのカルマに従って歩むという決意が揺らぐこともありません。中国本土では仏教の伝統に関心を寄せる人々が増えています。私はすべての人々に尽くすことを固く決意しているので、常に広い視野を持ち、誰ひとり区別することなく、万人の役に立つよう物事を見ようと努めています」

「本日ここインドにおいて、私の長寿を願う法要が、世界各地に暮らす若いチベット人たち、ロカ文化福祉協会、そしてニューヨーク州イサカのナムギャル僧院仏教学研究所によって行われました。私たちは今、衰退の時代にあり、多くの変化が起きていますが、その一方で、ダライ・ラマという存在は世界で広く評価されるようになりました。私自身が過去に積んできたカルマと祈りの結果として、私と出会ったり、私の法話を聴くことが、皆さんの心に強く肯定的な印象を残し、来世においても観音菩薩によって導かれ、護られることを願っています。もちろん、皆さん自身もそのための祈りを捧げるべきです」

「私たちがしばし集い、やがて散っていくのはごく自然なことです。しかし、皆さんの信仰と敬意は揺らぐことなく来世へと続いていくでしょう。今日ここで、皆さんが私の長寿を願って祈りを捧げてくださったことに対し、私自身もまた、チベットの人々、私たちの精神的伝統、そして人類全体のために、責務を果たし続けられるよう祈りを捧げました」

「私の言葉に敬意を払ってくださるのは、仏教徒だけではありません。キリスト教徒、科学者、さらには特定の宗教を持たない方々もそうです。皆さんが表明してくださった願いによって、私は長く生きるでしょう。そして、仏教が中国で広まり、繁栄していく中で、ダライ・ラマと関わる多くの地域の人々の信仰と敬意が、揺るぎなく、深く、安定したものとなるよう祈っています」

「先日、私は大きな堂内で仏陀と共にいるヴィジョンを見ました。仏陀は私に手招きをされ、とても喜んでおられるように感じました。私は、仏陀とその教えに仕えてきた者なのだと深く感じ、これからもその歩みを続ける決意を新たにしました」

ダライ・ラマ法王のお話に耳を傾ける参列者たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「世界には武力を用いて権力を行使する指導者がいます。しかし、ダライ・ラマは信仰と敬意によって人々を導きます。銃や刀ではなく、私はその方法でできる限り多くの人々のために尽くそうと思っています」

「中国では大きな変化が起きています。その一方で、私はインドに暮らし、私の名は世界各地で広く知られ、敬意をもって受け止められるようになりました。私は他者のために最善を尽くしています。皆さんも同じように歩んでください」

「私の長寿を願って捧げられた祈りによって、私はこれからも長く生きるでしょう。私は自らの身・口・意を、他者への奉仕に捧げています。朝目覚めるとすぐに、すべての有情の利益のために尽くすという誓いを新たにします。内に菩提心を育み、これらの目標を成就できるよう祈りを捧げるのです。ぜひ皆さんも同じように実践してください」

「私たちの善き願いが速やかに成就しますように」と、グル・リンポチェへの祈願文が唱えられ、感謝のマンダラが捧げられた後、仏法の興隆を願う祈願文の詠唱で長寿祈願法要は幕を閉じた。

法王が微笑みながら手を振って公邸へ戻られた後も、ツクラカンの中庭は佳き日の余韻で満ち、歌や踊りの披露が続いた。

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ヒマーチャル・プラデーシュ州のモンスーン豪雨被害に哀悼の意 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250909 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250909 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、ヒマーチャル・プラデーシュ州首相のスクウィンダー・シン・スクー氏に書簡を送り、今年の異常な豪雨により、同州の複数の地域で、尊い人命が失われ、前例のない規模の家屋の倒壊や、ライフラインの損傷が発生していることへの深い悲しみを表明され、書簡の中で次のように述べられた。

「この自然災害により愛する人を失くされたご遺族と、被災されたすべての方々に、お悔やみを申し上げ、祈りを捧げたいと思います」

「州政府ならびにすべての関係機関が、緊急の救援と復興活動に取り組まれていることを承知しております。私もヒマーチャル・プラデーシュ州の皆様との連帯の証として、ダライ・ラマ基金より救援と復興活動のための寄付を行うよう要請しました」

「ご存知の通り、ダラムサラは65年以上にわたり、私の故郷であり、私はしばしば、州首相を “私たちの首相” と呼んでいます。ヒマーチャル・プラデーシュ州のあらゆる分野の方々が、私とチベット人の同胞たちに長年にわたり示してくださっている友情と厚情に深く感謝しています」

法王は、祈りと願いの言葉で書簡を締め括られた。

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