ダライ・ラマ法王14世日本公式サイト https://www.dalailamajapanese.com/ en-us レーでの長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250817 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250817 インド、ラダック地方レー、シワツェル

本日、灼熱の太陽の下、シェワツェルの法王公邸に隣接したカーラチャクラ・グラウンドにおける法話会の2日目に、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願するため約5万人の人々が集まった。伝統的なラダックの太鼓とホルンの奏者が歓迎の音を奏でる中、法王は公邸から会場の奥にある講堂にゴルフカートで向かわれた。この長寿祈願法要は、ラダック仏教徒協会(LBA:Ladakh Buddhist Association)とラダック僧院協会(LGA:Ladakh Gonpa Association)の主催で執り行われた。

法王公邸からカーラチャクラ・グラウンドの講堂へゴルフカートに乗って向かわれるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

講堂に到着された法王が、法座の背後にある釈迦牟尼像に礼拝すると、ティクセ・リンポチェが一歩前に進み出て法王をお迎えした。法王は壇の前方に歩み出ると、集まった聴衆を見渡し手を振られてから着座された。

法王の長寿祈願法要は『釈迦礼讃』の祈願文で幕を開け、お茶と儀式用の甘いご飯 “デシ” が配られ、仏陀と菩薩たちが招請されて沐浴の儀、マンダラ供養の偈頌の読誦へと続いた。

長寿祈願の儀式は、仏陀の教えの護持を誓った十六人の聖者である十六羅漢の祈請を中心に執り行われた。次に、礼拝、供養、懺悔をはじめとする七支供養が続き、供養法要が捧げられた。法王は供物の一部を口にされた。

ラダック仏教徒協会とラダック僧院協会の代表者が法王に敬意を表し、ティクセ・リンポチェがマンダラ供養を行った。仏陀の身・口・意の象徴と、僧衣、果物の入った托鉢用の鉢と錫杖しゃくじょうを法王に捧げると、法王はそれぞれを眉の辺りまで持ち上げて敬意を表さたれた。そして、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財を載せたお盆が法王のご長寿を願って捧げられた。

ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要のための伝統的な供物を掲げる僧侶たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

供物を携えた地元の人々が列を成して次々に壇の前を通っていく中、『不滅の歌』と呼ばれる、法王の二人の家庭教師によって書かれた法王のご長寿を願う祈願文が唱えられた。この祈願文には以下の繰り返し部分が含まれる。


私たちは厚い信仰をもって祈願します
雪国(チベット)の守護者である御方、テンジン・ギャツォが
百劫ひゃっこうにわたって生きられますように
御方に祝福を注ぎ
長寿の願いが成就しますように


法王は参列者に向かって次のように述べられた。

「兄弟姉妹の皆さん、まず私が申し上げたいのは、地元ラダックの方々も他の地域から来られた方々、そして僧侶も在家信者も、私の長寿を祈るために揺るぎない信仰心をもってここに来られたということです。チベット仏教の伝統を護持するチベット人とヒマラヤ地域の人々が、私の長寿を祈願するというひとつの明確な目的でここに集ってくださっているのです」

「私自身について言えば、アムドのドメーで生まれ、中央チベットに移りました。チベットのすべての人々と護法尊は、強い信仰をもって私に信頼を寄せてくださいました。それゆえに、私はチベットの人々と神々に尽くす責任を担い、困難な状況下で人生を送り、多くの試練に直面してきました」

この時、供物を捧げる人々の最後尾に並んだ老人が祝福を授かろうと歩み出た。二つの帽子を重ねて被ったその老人の姿に、法王は思わず笑い出された。その後にチベットの旗を掲げたチベット人が続き、チベット旗を法王に捧げた。

長寿祈願法要で参列者に話をされるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法応護を誓約したネチュン・チューギェルのようなチベットの守護尊は、私がチベット問題に対するなかで、常に私と共にいてくださいました。チベットの守護尊たちは、ネチュンの導きのもと衆生に寄り添って来られました。私がチベットにいたときは、主にポタラ宮殿と夏の離宮であるノルブリンカで暮らし、チベットの人々と伝統のため努め、チベットとチベット仏教に対する責任を真摯に担ってきました。また、長い年月にわたって、私は出世間の護法尊と世間の護法尊を招請して、チベット問題解決への助力を祈願し、護法尊たちもまた、お力を尽くしてくださいました」

「私自身は、幼少期から家庭教師のもとで仏教を学びました。仏教基礎学から始め、心と意識、論理学、般若学、中観の見解、高度な知識であるアビダルマ(論書)を学びました。私は一部の点については懐疑的ですが、いずれにしても、中観思想(マーディヤマカ)、論理学、認識論、智慧の本質といったチベット仏教の伝統の真髄を学びました」

「心の内なる科学、すなわち心と感情の働きを理解することに関して、今では現代の科学者たちでさえ、私たちの伝統から学ぶことに非常に熱心です」

「私はチベットで20年以上暮らし、多くの困難に直面しました。かつて北京で毛沢東主席と会い、私たちは異なるイデオロギーと哲学的観点を持っていることを知りました。その後、チベットで起きた混乱のため、私は故郷を離れざるを得なくなり、以来インドで亡命生活を送っています」

「私は仏陀の教えを守り広めることにある程度は貢献できたと思っています。これまで、世界中からの助言を求める人々に応え、精神的な指導者としての評価をいただくようになりました。宗教を信じるかどうかに関わらず、多くの人々が私がこれまで実践してきたことに対して敬意を示してくださっています」

長寿祈願法要でダライ・ラマ法王のお話に聴き入る参列者たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私の生涯において、多くの人々が直接的または間接的に私に信頼を寄せてくださり、私はその人々のお役に立てるように祈ってきました。いま、ここで、皆さんにタシデレ(チベット語の挨拶)でご挨拶したいと思います」

「精神的な教えについて、また、世俗的な活動おいて、私が実践してきたことの如何を問わず、皆さんはここに集い、私の長寿を願って祈りを捧げてくださいました。私の長寿を皆さんが祈ってくださったように、私も皆さんの願いが叶うことを祈ります。皆さんの祈願と供物に感謝し、その願いが容易に成就されることを祈ります。ありがとうございます」

「注目すべき点は、世界でも最も人口の多い国の一つである中国本土で、仏教への関心が高まっていることです。過去には、私のことを反動分子だと言う人もいましたが、私は誰に対しても、決して恨みや悪意を抱いたりすることはありません」

「歴史的には、ソンツェン・ガンポ王の時代から、私たちは中国と強い絆を築いてきました。中国の人々が仏教への関心を持ち続ける限り、仏教は自然に広まっていくでしょう。私はこの広がりにできる限りの貢献をしたいと思います」

「私は菩提心生起の心を養うことを日々の修行の一部としています。この修行を深めるために、空の瞑想も実践しています。仏陀の深遠で広大なる教えが世界、特に中国に広まるにつれ、世界全体に平和と調和がもたらされることに期待を寄せています。また、ヒマラヤ地域の人々が安寧に暮らせ、インド・チベット国境に平和と平穏が訪れることを願っています。これは実現可能だと信じています」

「皆さんは、私の長寿祈願のために、信心と帰依の心で集ってくださいました。私もまた、堅固な決意を持って長く生きられるよう祈ります」と法王が述べられると、聴衆から拍手が湧き起こった。

長寿祈願法要で歌を披露するラダックのミュージシャンたち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

その後、法王の90歳の誕生日を祝福する歌をラダックのミュージシャンたちが歌い、次に地元のチベット子ども村(TCV:Tibetan Children’s Village)のグループが法王への感謝の印として温かい心を育むことを誓い、パフォーマンスを披露。法王のご長寿を祈願した。

法要の終わりに際して、十六人の聖者たちと四天王が再び招請され、法王のご長寿と仏法の繁栄を祈願する祈りが捧げられた。続いて、ガンデン僧院座主のジェツン・ロブサン・ドルジェ・リンポチェが、法王が長寿の願いを受け入れてくださったことへ感謝の意を込めて、感謝のマンダラを捧げた。そして、吉兆の祈願文がいくつか唱えられ、最後に法王のご長寿を願う偈頌で締めくくられた。


雪山に周りを囲まれたこの浄土には
すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
法王の御足の蓮華が何百刧もの間健やかにとどまられますように

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『心を訓練する八つの教え』と『中観の四念住』 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250816 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250816 インド、ラダック地方レー

今朝、ダライ・ラマ法王は、シワツェルの法王公邸から法話会場奥のパビリオンまで車で向かわれた。法王は過去2回この会場でカーラチャクラ大灌頂を授けられている。会場は約5万人の聴衆で埋め尽くされ、法王到着時には、子供たちがステージ前方で問答を披露していた。

法話会場のカーラチャクラ・グラウンドへ移動されるダライ・ラマ法王。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が着席されると、全員で『釈迦礼讃』『般若心経』を唱え、つづけて「法話を聞くことで得られる功徳により、私が仏陀となって一切衆生を利益することができますように」という祈願文も唱えた。お茶と甘いご飯が配られ、短いマンダラ供養も行われた。

はじめに法王は、ご自身が祖国チベットを失い、インドに亡命した当時に思いを馳せられた。亡命後も心の故郷であるヒマラヤ地域に住み続けられている法王は、この地域の人々は観音菩薩と特別な縁があると述べたあと、亡命時の様子について語られた。
「ラサのノルブリンカ離宮を後にし、キチュ川を渡り、峡谷を抜ける峠道を登りました。故国を離れることは悲しかったが、誰も皆同じ人間であることを思い返していました。誰もが幸せを求め、苦しみを避けたいと願っているのだと。私は亡命するかもしれないが、それでも人々に教えを伝えることはできる、と感じていました」

「ヒマラヤ地域では、どこに行っても人々が信仰深く敬虔で、心の修行に励んでいます。チベット人は大きな困難に直面し続けており、中国の規制はますます厳しくなっていますが、ヒマラヤ地域の人々は常に我々の友人です」

「私は、観音菩薩の加持を受け、菩提心と正しい見解を育む修行をしたことで、菩提心という悟りの心と空性についての洞察を得ることができました。これは、誰にでもできることです。こうした修行に熱心に取り組むことは、誰でもできます。私からの主なアドバイスは、いつも心に菩提心と空の見解を留めておいてくださいということです。私自身、朝起きるとすぐ、この二つのテーマついてしばらく瞑想します。ここで言う “悟り” は、チベット語で ”チャン・チュプ” という二つの音節の言葉で表わされます。最初の ”チャン” はすべての過失や欠点を克服すること、”チュプ” は獲得可能なすべての善き特性に満たされることを意味します」

「世界中で人々が苦しんでいます。宗教を実践しているか否かに関わらず、人は幸せを望み、苦しみを避けたいと願っています。苦しみの根源は二つあります。一つは自己中心的で自己愛着的な態度をとること、もう一つは事物が他に依存せず自らの力だけで存在していると考える誤った見解を持つことです。私は朝起きると菩提心 ― 他者を利益するために自分自身が仏陀の境地を得ようという強い決意の心を起こします。そしてチャンドラキールティの『入中論』の一節を思い浮かべて空性を瞑想します。菩提心と空性という二つの原理は、仏陀の教えの核心です」

法話会で聴衆に語りかけるダライ・ラマ法王。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「つい最近、私の前に仏陀のお姿が現れました。仏陀は顔を上げて私をご覧になると、手招きし、菩提心と空性を生起させる言葉を述べられました。私はとても幸せでした」

「仏陀の弟子である私たちは、菩提心と空性の見解を育むことを中心に据えて修行すべきです。敬虔な弟子として、毎日このことを思い返してください」

法王は、昨日がインドの独立記念日であったことに言及され、インドへの敬意を表されるとともに、この地に暮らす我々はここで享受している自由を喜ぶべきだと話された。我々は自分の人生を有意義にする機会を与えられている、と法王は述べ、それは他の生きとし生ける者を助けることによってである、と続けられた。インドの国には多くの宗教が栄え、調和が実現している。宗教の核心は、親切と非暴力、他者を傷つけないことの実践にある。だからこそインドは、世界の平和を確立するためにできる限りのことをすべきである、と法王は指摘された。

「今日は、大変多くの方々が集まってくださいました。訪れてくだった皆様、どうもありがとうございます」と法王は述べられた。
「私自身はチベット東北部のクンブム近郊に生まれ、のちにラサへ移り住みました。そこで家庭教師の先生方から仏教哲学を学んだことで、私は開眼しました。この世のすべての事物は幻のようなものであることを学びました。事物は、ある特定の姿や有り様で存在しているように見えますが、実際はそのようには存在していません。私は自分の人生を有意義なものにすることができたと感じています。私が話すことは、実体験に基づいています。どうか温かい心を持ち、他者を助けることの大切さを心に刻んでください」

ここで法王は『心を訓練する八つの教え』のテキストに目を向けられ、第4偈を読み上げられた。


悪い性質を持った有情たちが
悪行や辛苦に苛まれているのを見た時
貴重な宝を見つけたかのように
得がたいものとして大切に慈しむことができますように (第4偈)


著者のゲシェ・ランリタンパ師は、我々は他の生きとし生ける者達を慈しむべきであり、たとえ相手が悪い性質の者達であろうと、彼らが苦しむのを目にした時には彼らを慈しむべきである、と説いている。

法話会場で、聴衆に混ざってダライ・ラマ法王の話に耳を傾ける少年。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)


誰かが私に嫉妬して
罵倒し、侮辱するなどひどい目にあわせても
負けは自分が引き受けて
勝利を他者に譲ることができますように (第5偈)

私が助けてあげて
大きな期待を寄せていた人が
理不尽にも私をひどい目にあわせたとしても
その人を聖なる導師とみなすことができますように (第6偈)


他人から批判された時は、彼らに対して怒るのではなく、その批判が理に叶った指摘であるかどうかを検証すべきである。自分に何らかの過失がないか見返してみるべきであり、もし自分に過失があると気づいたならば、その点を指摘してくれた相手に感謝すべきである。


要約すると、直接的にも間接的にも
母なるすべて〔の有情たち〕に利益と幸せを捧げ
母〔なるすべての有情たち〕の被害と苦しみをみな
ひそかに私が引き受けられますように (第7偈)

これらのすべて〔の修行〕が
世俗の八つの思惑に汚されることなく
すべての現象は幻のごときものと知って
執着を離れ、束縛から解放されますように (第8偈)


我々が人生で遭遇する苦しみは、誤った認識から生じる、と法王は説明された。しかし、あらゆる事物は幻のようなものであると理解すれば、我々の思い違いや煩悩は空へ溶けて消え去ると想像できるだろう。

続いて法王は、『中観の四念住』を読み上げられた。四念住とは四つの注意深い考察、すなわち、師に関する注意深い考察、無上の悟りへと至る利他心に関する注意深い考察、聖なる身体としての身体に関する注意深い考察、空の見解に関する注意深い考察、であると法王は列挙された。

法王は、二番目の念住に関連して、我々が苦しみに直面する原因は、自分の心が制御できておらず、その乱れた心から煩悩が生じるせいである、と知るべきだと述べられた。我々を慈しみ守ってくれた父母を思い出すと心が安らぐが、彼らもまた苦しみの中にあり幸せを得ていない。


欲望と憎しみを断ち、愛と慈しみを瞑想しなさい
心を野放しにせず、慈悲の中に安住させなさい


法王は、ご自身もこの偈頌のアドバイスを実践していると明かされた。

ステージ上から法話会場を眺めた風景。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

四番目の念住 ― 空性の見解に関する深い考察 ― に関して、我々には事物が自らの力で独立して存在しているように見えるが、実際はそのようには存在していないと理解する必要がある、と法王は指摘された。

次に法王は、「チベットでは、顕教の修行と密教を融合させています」と語り始められた。
「密教においては本尊瑜伽、すなわち自身の身体を本尊の身体に変容させる観想をします。我々はまた、様々なレベルの微細な心についても学びます。通常の知覚感覚の基盤となる粗い意識レベルを超え、より微細な意識に到達し、その微細な意識を強めていきます。この澄み切った微細な意識は光明と呼ばれます。この光明の心こそが、空を体験することのできる心なのです」と述べられた。

「我々がチベットで守り伝えてきた仏教の伝統は、心理学の観点から見ても比類のないものです。無上瑜伽タントラにおいては、自身の微細な意識を認識し、その微細な意識を使って修行をします。他の伝統では、修行に関するこうした具体的な実践法は説かれていません。我々も他の伝統同様、悟りの心と空性の見解を育みます。しかし、光明と呼ばれる微細で内在的な心を育み、それを悟りへの道へと変容させることができるのは密教だけです」

「そのようにできるならば、粗いレベルの心は静まり、空を実体験できる微細な心を活用できるようになります。これは非常に深遠なことです」

「私はチベットのアムドで生まれ、ラサへ移り、そこで先生方から教えを受けました。教えについて勉強するだけでなく、それについて瞑想もしましたので、教わった内容を実際に体験することができました」

「今回、ヒマラヤ地域のこの地を訪れる機会を得ることができ、チベットと同じ伝統を受け継ぐ皆さんに教えを伝えることができました。今日に至るまで、チベットには素晴らしい聖者方が大勢いらっしゃり、傑出した大成就者もいらっしゃいました。皆さんも修行に励めば、彼らのようになれるかもしれません」

法王の後につづいて菩提心生起の偈頌を唱える聴衆たち。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「菩提心をおこす機会は今ここにあります。菩提心を起こすのは善なることです。広大な世界のすべての衆生を利益するために自分が仏陀になろう、と考えてください。私に続いて次の偈頌を唱えてください」


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします

仏陀・仏法・僧伽〔の三宝〕に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします

最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は、自身が伝授を受けている二つの経典の教えを説き、歴代上師方から加持を受けた菩提心生起の儀式も行うことができた、と述べられた。続けて法王は、仏陀釈迦牟尼、ターラー尊、薬師如来、文殊菩薩、グル・リンポチェ、ツォンカパ大師の各真言とミクツェマの礼賛偈の口伝を授けられた。

法話会の最後にあたり、法王に感謝の意を表すマンダラ供養が捧げられ、『真実の言葉』の祈願文と『普賢行願讃』が唱えられた。

法王は、聴衆に向けて微笑みながら手を振られ、ご自身の公邸へと帰路につかれた。

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『修行道の三要素』法話会 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250725 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250725 インド、ラダック地方ザンスカール、カルシャ僧院ポタン

今日、早朝の太陽がザンスカール川の谷間を照らしていた。ダライ・ラマ法王の法座はカルシャ僧院のポタン(高僧の住居)のベランダに設けられ、カルシャ僧院に面していた。法王の説法を聞くために集まった推定2万1千の人々のうち、僧侶たちは寺院内で法王の後方に座り、在家の人々は法王の前方の地面に日傘を差して座っていた。法王が到着されると、学校の子どもたち、僧侶や尼僧たちの複数のグループが問答に打ち込んでいた。法王は人々を見渡すと微笑みながら手を振って、着座された。

カルシャ僧院ポタンの法話会に集まった約2万1千人の聴衆を見渡されるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

チベット語で『般若心経』が読誦された後、『現観荘厳論』の偈頌が唱えられた。続いて宇宙全体を象徴するマンダラが捧げられ、次の偈頌が唱えられた。


大いなる仏法の太鼓が鳴り響き
有情の苦しみが取り除かれますように
あなたが何阿僧祇劫も留まり続け
仏法を説き続けてくださいますように


法王は、説法を始める前に地元の人々の一員であるかのようにザンスカールのラマの帽子を被られ、人々を喜ばせた。

法話を始める前に、ザンスカールの僧帽を被られるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、次のように話し始められた。
「今日、私たちはインドのこの地に法話のために集いました。仏陀の教えをみなさんに知ってもらうことが私の目標です。雪山に囲まれた地、チベットで仏教は広まりましたが、今は国を失ってしまいました。しかし、チベットで維持されてきた仏陀の教えは、今、ヒマラヤ地域に息づいています。仏陀の教えは、これからも長く栄え続けるでしょう。一方、科学的な考え方を持つ西洋で、私たちの伝統に多くの人が興味を抱いています」

「心を変容することは私たちにとって目新しいことではありませんが、世界の他の地域では仏陀の教えに新たな関心が集まっているのです」

「“私は仏陀に帰依します…” と言うとき、私たちは仏陀という言葉が何を意味するのかを知るべきです。チベット語の “サンギェ(Sang-gyé)” の最初の音節は、粗いレベルの煩悩だけでなく、煩悩の習気じっけ(残り香)というより微細なレベルの汚れ(所知障)まで、すべての汚れを克服した人を指します。2番目の音節は、二つの真理(二諦)など知るべきものをすべて明確に知っていることを意味します。したがって、仏陀とは、すべての捨てるべきものを捨て、すべての知るべきものについて完全かつ明確な智慧を得た人なのです」

チベット語で「ダルマ(法)」を意味する「チュー」とは、あなたを守護するものを意味する。何から守ってくれるのか、それを私たちは学び、そして見出すべきである。

「釈尊はまず四つの聖なる真理(四聖諦)を説き、最終的に涅槃に入られましたが、その間に広範な教えを説かれました。やがて、ナーガールジュナ(龍樹)のような導師たちが、論理に照らしてこれらの教えを解説されました」

「仏教はソンツェン・ガンポ王とティソン・デツェン王の治世にチベットにもたらされました。ティソン・デツェン王はシャーンタラクシタ(寂護)、カマラシーラ(蓮華戒)、そしてグル・パドマサンバヴァ(蓮華生)をチベットに招聘し、スートラ(顕教)とタントラ(密教)の経典および実践に基づく教えを紹介し、確立されました」

法話会で、大画面に映し出されたダライ・ラマ法王を見る人々。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法とは心の訓練をすることです。寺院や仏塔を建てることではなく、心を変容することです。例えば、忍耐を培うことができれば、問題や困難に直面しても落胆することなく対処できるようになります。仏陀が歩み、教えた道に従う勇気を持つことでしょう」

「苦しみとは何か、なぜ苦しみが生じるのかを理解する必要があります。先ほど申し上げたように、この教えは困難に立ち向かう勇気を与えてくれます。私の場合、先生方の優しさのおかげで幼い頃から仏陀の教えを学んできました。最初は教えの目的を理解していなかかったものの、成長するにつれて教えが人生においていかに実践的で役立つものかを理解するようになりました。様々な困難に直面した時、私の精神的な理解に大きな違いをもたらしてくれました。教えを理解することで、心が穏やかでいられるのです」

「私の修行は、主に菩提心と空の見解の2つを培うことです。空を理解するために分析を駆使していますが、これは本当に役立っていると感じています」

「仏陀の教えには何があるのでしょうか?それは、煩悩に圧倒されることなく、心を変容する機会を与えてくれます。大切なのは、教えを学び、理解し、実践することです」

法王は、カルシャ僧院の下にある巨大な新しい仏像を指し示しながら、仏像を見るときに仏陀の教えを思い起こすべきであると説明された。
「私は遠くアムドで生まれ、ラサに来ました。ラサで教えを聞き、考え、そして実践しました。仏陀の教えを実践することで、私たちは自分の心を変容するだけでなく、社会の調和にも貢献できると信じています」

「私たちはここザンスカールに、政治的な動機ではなく、信仰と過去の祈りのおかげで集まりました。私たちは教えを学び、考察し、その味を体得する必要があります。外見的な魅力ではなく、穏やかで平和な心と内なる強さを育むことが大切なのです。心の平和を保ち、意義深い人生を送ることが私たちの目標です。学べば、教えに対する確信が得られます。論理に基づいて洞察を得ることができれば、心を変容し、内なる平和を達成することができます」

ダライ・ラマ法王の説法に耳を傾ける聴衆。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「本日は、『修行道の三要素』という短いテキストについて話すように依頼されました。このテキストは、まず師への敬意を表してから、このように続きます。“勝利者(仏陀)のすべての教えの真髄を 聖なる勝利者の息子(菩薩)たちが讃える修行の道を 解脱を望む恵まれた者たちが入るべき門戸を 私ができる限り説くことにしよう”

「第3偈には、“純粋な出離の心がなければ 輪廻の海で快楽の果を求める心を鎮める手段はない 輪廻への愛着により、有情たちは完全に束縛されているのだから はじめに出離の心を求めなさい” とあります。そして第4偈に、こう続きます。“有暇と幸運を得ることは難しく 人生には無駄に費やす時間はない これに心を慣らしていけば、今世への執着は色褪せていく 因果の法に偽りはないことや輪廻のさまざまな苦しみを何度も考えてみるならば 来世への執着も色褪せていく”

「世界を見渡すと様々な人がこの世の喜びに執着していますが、それが苦しみの源になっているのではありませんか?真摯な出離の心があれば、心は穏やかになり、他者を傷つけようとはしなくなります。キリスト教やイスラム教など、世界の様々な宗教において、信者たちが真摯にその教えを実践すればそこに平和が訪れます」

「人間の生には18の特別な資質(有暇具足うかぐそく)があります。教えを学び、意義ある人生を送るいい機会です。教えは理解しなければ、自分と他者がより大きな幸福を達成する助けにはなりません」

「第3偈にあるように、“純粋な出離の心がなければ 輪廻の海で快楽の果を求める心を鎮める手段はない はじめに出離の心を求めなさい”

「私は子どもの頃、利他の心という感覚はほんのわずかしかありませんでした。しかし、師であるリン・リンポチェとティジャン・リンポチェから教えていただき、深く考えるうちに、他者への思いやりが育まれ、大きくなっていきました。その結果、今、人生を振り返ると、とても有意義な人生だったと感じています」

集まった人々に説法をされるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私は様々な困難に直面してきましたが、出離心、菩提心、そして正しい空の見解に支えられ、仏陀の教えに従うという揺るぎない決意を貫いてきました。世の中の争いを目にするたび、他者を助けたいという勇気と願いが強くなります。それは、落ち込むのではなく内なる強さを育み、自己中心的な縛りを緩めるのに役立ちます」

「輪廻においては、苦しみは様々な原因と条件の結果として、あらゆる場所で生じます。苦しみを目にすると、出離心が促されます。人は幸せになりたいと思いながら、ほとんどの場合、現世の快楽に心を奪われているように思います。自分の人生について考えてみると、このような執着がないことがいかに良いことかと気づきます。むしろ私は、他者のために働くことに重点を置いています」

「憎しみや執着に心を振り回されていると、苦しみと困難に直面するだけです。利他的な菩提心をある程度育めば、今生と来世に自信を持てるようになります」

「けして自慢ではありませんが、私は毎朝目覚めるとすぐに菩提心について深く考えます。そうすることで、他者の幸福のために働く自信を育むのです」

「第6偈には、“出離の心もまた 純粋な発菩提心に伴われていないと 無上のさとりという卓越した幸せの因とはならないので 智慧ある者たちは最もすぐれた菩提心を起こしなさい” とあります。第7偈と第8偈には、そのような心がどのように生じるかが概説されています。“〔欲望、執着、邪見、無知など煩悩の〕四つの激流に押し流されて 絶ちがたい業にきつく束縛され 我執という鉄の檻に閉じ込められて 無明の厚い暗闇に覆い尽くされている” “限りない輪廻の生を繰り返し 三つの苦しみに絶え間なく苛まれている このような母〔なる有情〕たちのありようを思い 最もすぐれた〔菩提〕心を起こしなさい”

「自分と同じように、他の誰もが苦しみたくない、幸せになりたいと願っています。しかし苦しみの原因と幸せの原因を理解していないため、貪欲、怒り、そして無知という三毒に圧倒されてしまいます。菩提心を心に馴染ませて他者の苦しみを目にするなら、悟りを得て他者のために尽くしたいと思うのです」

ダライ・ラマ法王の法話会が行われているカルシャ僧院ポタン。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「これは第8偈に反映されています。“三つの苦しみに絶え間なく苛まれている このような母〔なる有情〕たちのありようを思い 最もすぐれた〔菩提〕心を起こしなさい”

「すでに述べたように、誰もが幸せになりたい、苦しみたくないと願っていますが、苦しみは私たちに降りかかり、幸せは遠く離れているように思えます。ですから、苦しむ母である他者のために尽くすことを考えなければなりません」

「正しい見解を培う理由は、第9偈に明確に述べられています。“〔すべてのものの〕ありようを正しく理解する智慧がなければ 出離の心や菩提心を育んでいても 輪廻の源を絶ち切ることはできない それ故、縁起(依存関係によって生じること)を正しく理解するための努力をしなさい”

「縁起の “縁(因縁)” とは、何であれ、外的なものでも内的なものでも仏陀の最高の徳に至るまで、縁は〔それを観察することによって〕空性の理解を妨げないことを意味しています。“起(生起)” とは、原因と条件においてあらゆる事物がどのように存在するかを指します」

「幸せを目指し、幸せの原因を作り、苦しみの原因を克服することは、非常に良いことです。私がするように、目覚めたらすぐ菩提心と空性の見解について深く考えるならば、本当に実践的な恩恵がもたらされることが分かるでしょう。ここにいる誰もがみな、苦しみを望まず、幸せになりたいと思っています。苦しみは、私たちの自己中心的な考え方から生じます。これらに対抗するには、できる限り他者を大切にし、自己中心的な考え方を弱めるように努めなくてはなりません」

「この利他的な考え方を育んで心を変容させる方法は、本当に役立つと思います。他者を大切にすることについてよく考え、心に馴染ませると、内なる変容が明らかにもたらされます。ぜひ、これをできる限り実践してみてください」

ダライ・ラマ法王の説法に耳を傾ける経頭とその補佐たち。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「先ほど言ったように、私は幼い頃から心の訓練をしてきましたが、年を追うごとに自分の心が変化してきたことに気づきました。ですから、法友のみなさん、ぜひ菩提心を育んでください。これらの要点に親しむとごく自然に心に変化がもたらされます。無始以来、私たちは執着と憎しみに馴染んできました。もしこれらの煩悩への解毒剤を育むことができれば、自己中心的な考えと現実のありように対する誤った認識を減らすことによって、徐々に自分の心を変容できるようになるでしょう」

「第10、11、12偈では、このように説かれています。“輪廻と涅槃の一切の現象が 因果の法を決して偽らないことを知り 認識対象に〔自性があるという〕誤った考えをすべて断滅した者は 仏陀の喜ぶ修行の道に入る” “あらわれとは誤りなく縁起するものであり 空とは〔自性を〕受け入れないことである この二つの理解が別々にあらわれている限りは まだ成就者〔仏陀〕の真意を正しく理解していない” “〔この二つの理解が〕いつの日か交互でなく、同時にあらわれ 縁起に偽りがないことを見ただけで 認識対象には〔実体があるという誤った〕とらえかたをすべて滅したならば その時こそ〔空の〕見解の分析は完全なものとなる”

「内なる自己変容への修行道の三要素は、出離心、菩提心、正しい見解です。私はこれらを培うよう努めてきましたが、本当に役に立つと実感しています。仏陀の教えに関心を持つ人が増えています。私たちも仏教徒であり、世界の幸福のため、知っていることを伝えるために最善を尽くさなければなりません。利他的な考え方を心に馴染ませると、自己中心的な考え方は弱まっていくでしょう」

次に法王は、菩提心生起の短い儀式を執り行うと告げられた。まず法王は、出席者全員に、功徳を積んで浄化を願う七支供養を唱えるように、そして次の偈頌を自分の後に続いて唱えるようにと促された。


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします


仏陀・仏法・僧伽〔の三宝〕に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします


最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は、釈迦如来、観自在菩薩、文殊菩薩、ターラー、薬師如来、グル・リンポチェの真言、そして最後にツォンカパ大師の祈願偈の口頭伝授を授け、再び聴衆に自分の後に続いて唱えるように求められた。

ダライ・ラマ法王による法話会が終わり、会場を後にする人々。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、最後に『修行道の三要素』こそが真の仏教徒になるための究極の道であると述べられた。

感謝のマンダラが供養され、続いて法王の長寿を祈願する『真実の言葉』、チベットの護法尊への祈願文、そして吉祥の偈頌が唱えられた。

法王は、この行事の開催に携わったすべての人々と、出席者全員に感謝の意を表された。

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ザンスカールの人々による長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250723 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250723 インド、ラダック地方ザンスカール、パダム

晴れ渡る青空のもと、ダライ・ラマ法王はカルシャ僧院のポタン(高僧の住居)を後にし、ドゥジン・ポタンへと車で向かわれた。ここは、1988年7月にカーラチャクラ灌頂が行われた聖地として知られている。門前では太鼓の音が響き、沿道には絹のスカーフや花束、新鮮な杏を手にした人々の姿が見られた。法王の通過に際して、多くの人々が深く一礼し、敬意を表した。

ザンスカール・モンラム・チョルテン(仏塔)の礎石を据えるダライ・ラマ法王。インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ダライ・ラマ法王の車がカーラチャクラ法話会場に差し掛かると、僧たちが法螺貝、太鼓、シンバルを奏でて歓迎した。最初に法王が向かわれたのは、ザンスカール・モンラム・チョルテン(仏塔)の建設予定地である。そこでは、インド様式の半球型仏塔模型をご覧になった。説明ポスターには、図書館、美術館、ギャラリー、事務局、講堂、手工芸センターなどを備えた施設となる予定であることが記されていた。法王はプロジェクトを紹介する銅板を除幕されたのち、石工の鏝を使って礎石を据えられた。黄金の傘の陰に立たれた法王は、祝福の言葉を唱え、計画の成功を願って穀物を空に向かって撒かれた。

その後、法王はカーラチャクラ法話会場へと向かわれた。道中では、二つのグループが活発な問答を交わしていた。一方には学校の子どもたち、もう一方には民族衣装をまとったザンスカール出身の女性たちの姿があった。

法王は玉座の前に着座された。その右手には、シャルパ・チュージェ・リンポチェ、ナムギャル僧院長タムトク・リンポチェ、ガンデン僧院シャルツェ学堂僧院長とラギャル・ヤンシー・リンポチェが並んでいた。

続いて、ザンスカール仏教協会(Zanskar Buddhist Association)、ザンスカール僧院協会(Zanskar Gompa Association)、そして夏季大問答会の主催者によって組織された、地元の人々によるダライ・ラマ法王の長寿祈願法要が始まった。法要は三宝への帰依を唱える偈頌で幕を開け、法王の長寿を諸仏に願い、マンダラ供養が行われた。経頭たちによる十六羅漢の祈請が法要の中心となり、「我らの師の命が安泰でありますように」という祈願の句が繰り返された。

パダムのカーラチャクラ法話会場に到着されたダライ・ラマ法王。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

十六羅漢とは、仏陀の教えを護持することを誓った聖者たちである。最初に祈請されたのは、カイラス山に住むとされるアンガラだった。

「私たちの師が長寿であり続け、法を説き続けられるよう、この供養を捧げます」と偈頌が唱えられる中、ダライ・ラマ法王には、精緻なマンダラ供養と僧衣、錫杖しゃくじょう、果物などの伝統的供物に加え、八吉祥宝、転輪聖王てんりんじょうおうの七宝、八吉祥財が捧げられた。

地元の要人や支援者たちは、法王に敬意を表し、祝福を受けるために進み出た。様々な供物を携えた地元の人々の行列がお堂の前を通り、周囲を巡った。その最後尾には、チベットの旗を高々と掲げた一人の老翁の姿があった。

祈願は続いた。「世界の平和を導く偉大な舵取りよ、百劫の寿命を保たれよ。観音菩薩の化身、偉大なる慈悲の体現者たる御方よ、六道すべての衆生のために、どうか久しくご在世を。世界の平和の灯火よ、どうかご長寿を。信仰深き者たちは心の奥底からあなたに祈りを捧げています。どうか我らの師の命が安らかであり、仏法が繁栄し広まらんことを」

長寿祈願法要にて、ダライ・ラマ法王に供物を捧げる地元の人々。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

十六羅漢および四方の守護尊が、再び招請された。アンガラに加え、ピンドーラバーラドヴァージャ、カナカヴァッツァ、カナカ、スビンダ、バクラ、バドラ、カーリカ、ヴァジュラプトラ、シュヴァパーカ、パンタカ、ラーフラ、ナーガセーナ、ヴァナヴァーシン、アジタ、チューラパンタカが列席している。

「我らの師の命が安泰でありますように 仏法が繁栄し、広まりますように」聖者の山の前方にある水晶の森に住まい、百羅漢に囲まれて静かに坐す長老アジタのもとへ祈願が捧げられた。続いて、長老カーリカとヴァナヴァーシンが招請され、「願わくは我らの師が長寿を保ち、仏法が栄え、広まりゆかんことを。偉大なる尊者方の吉祥が満ちあふれんことを」と祈りが続いた。

回向の祈願が唱えられた後、『真実の言葉』の祈願が続けて唱えられた。

次に、ダライ・ラマ法王が参列者に向けて語られた。
「今日、この吉祥なる地で、皆さんは私に盛大な長寿供養を捧げてくださいました。私は、衆生と仏陀の教えのために長く生き続けるでしょう。これまで、私がチベットにいた時も、中国やモンゴル、ヒマラヤ山脈を越えた地域や他の多くの場所を訪れた時も、人々は揺るぎない信仰と深い敬意をもって、私を『勝者テンジン・ギャツォ、ダライ・ラマ』と呼んでくれました。こうした多くの方々が、私の長寿を祈ってくれています」

カーラチャクラ法話会場にて行われたラダックの人々による長寿祈願法要で、参列者に語りかけられるダライ・ラマ法王。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チョジョル / 法王庁)

「今生において、私はチベット人として生まれ、チベットで育ちました。自分自身が満足できるようなことは、あまり成し遂げられていないかもしれませんが、このヒマラヤ山脈を越えた地域では、老若男女、出家在家を問わず、すべての人々が心の底から私を信頼してくれています。そしてまた、仏陀の教えが繁栄するよう、祈りを捧げてくれています」

「ここでもまた、私の長寿を願う儀式を行ってくださいました。チベットの周辺に暮らすヒマラヤ山脈以北の人々は、私に対して揺るぎない信仰を抱いてくれています。しかし、それはこの地に限ったことではありません。仏教が伝統的に根付いていない西洋においても、仏陀の教えを深く理解したうえで信仰する人々がいます。そうした進歩的な知識人の多くが、ダライ・ラマである私を敬愛してくれています。これは特別なことであり、とても珍しいことです」

「チベットの伝統では、ラマたちは高い玉座に座り、人々はその足元にひれ伏して敬意を表します。しかし西洋では、人々は科学的な思考を持っています。彼らの敬意は、単なる信仰に基づくものではなく、仏陀の教えを理解したうえでのものです。彼らは『これは私のラマだ、ラマがこう言っているから従おう』というように、ただ盲目に従うことはありません」

「私自身について言えば、私は常に誠実であろうと努めてきました。仏教全体の教えや、私たちの多様な精神的伝統、そして全ての衆生の利益のために尽くしてきました。その結果として、私の言葉を心から受け止め、信頼を寄せてくれる人々がいます」

「この吉祥なる地においても、多くの信心深い人々が集まり、私の長寿を願う祈りを捧げてくれました。皆さんの心からの信仰の力によって、私の長寿の祈願が成就しますように」

「ザンスカールの皆さんと私は、長年にわたって深い繋がりを持ってきました。私はダライ・ラマという称号を持っていますが、子どもの頃から論理学や認識論(プラマーナ)を学んできました。また、般若学や中観思想(マーディヤマカ)、その他の学問も学び、最終的には、ラサで大祈願祭(モンラム・チェンモ)の期間中にゲシェ・ララムの学位を取得しました。それ以来、私は仏教の教えと一切有情のために、心から尽力してきました」

カーラチャクラ法話会場で行われたラダックの人々による長寿祈願法要にて、伝統衣装を身にまとい、ダライ・ラマ法王のお言葉に耳を傾ける地域住民たち。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「1954年に中国を訪れた時、私は毛沢東とかなり親しくなりました。ある時、彼は私に『宗教は毒だ』と言いましたが、私は心の中で、それは愚かな考えだと思いました。私たちが実践している仏教の伝統、すなわちスートラ(顕教)とタントラ(密教)を融合したものは、非常に科学的なアプローチを取っています。だからこそ、科学者たちが私のもとを訪れ、感情や心についての議論を交わすのです。仏教には理性と論理によって証明できる知的な側面があります」

「私は子どもの頃からこの伝統のもとで学んできました。そして、身(身体)・口(言葉)・意(心)のあり方において、師たちが示してくれた美徳を思い起こすたびに、深い感謝の念が湧いてきます」

「私たちが守り続けているこの仏教の伝統は、理性に基づいたものです。ここに多くの皆さんが集い、揺るぎない信仰と誠実な思いで、私の長寿を祈ってくださいました。私自身としても、まだ長く生きるだろうと感じています。私の寿命については予言もありますし、夢の中にもその兆しが現れています」

「これまで私は、仏法と衆生のために最善を尽くしてきました。また、世界の平和と非暴力のためにも働きかけてきました。これは、人類の幸福のために私が一心に実践してきたことです。そしてどうやら、土地の精霊や護法尊たちも、私の行いを喜んでくださっているようです」

「皆さんは私がさらに何十年も生きられるよう、心の奥底から祈りを捧げてくださいました。私はこれまで仏陀の教えを広めること、そして世界全体への貢献にもなかなか良い働きをしてこられたと思っています。私自身の科学的な見解を通して、仏陀の教えを現代の科学者たちとも分かち合ってきました。彼らは私が話すことに敬意を示してくれます」

「仏陀は私たちに大いなる慈悲を注いでくださいました。その教えは、ナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)などの偉大な師たち、そしてチベットにおけるさまざまな伝統の比類なき師たちによって説かれてきました。私たちは、このスートラ(顕教)とタントラ(密教)を兼ね備えた完全なる仏陀の教えが末永く在続し、世界の衆生の助けとなるよう祈っています。皆さん、本当にありがとうございました」

ダライ・ラマ法王は近くにあるパダム人民宮殿(パダム・ミマン・ポタン)まで徒歩で向かわれ、昼食をとられた後、カルシャ僧院のポタンへと車で戻られた。

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ダライ・ラマ法王からのお礼のメッセージ https://www.dalailamajapanese.com/news/20250711 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250711 親愛なる兄弟姉妹の皆様へ

私の90歳の誕生日に寄せて温かなお祝いの言葉をいただき、心より感謝申し上げます。皆さんのお心遣いに私は深く感銘を受けています。

90歳の誕生日は人生において重要な節目とされています。私はこれまで、思いやりと優しさを広めることに専念してきました。それこそが、この世界における平和と幸福の土台であると信じており、これからもその歩みを続けていくつもりです。

私が日頃から友人や支援者の方々にお伝えしているように、皆さんにもぜひこの取り組みに加わっていただきたいと願っています。思いやりの心で他者を助ける意味ある人生を歩んでください。それこそが、私にとって最高の誕生日プレゼントとなるでしょう。

私の人生が世界中の人々に少しでも役立ってきたのであれば、それは何よりの喜びです。残りの人生も私は他者のために尽くしていくつもりです。

感謝とともに、皆様の幸せを心よりお祈りしています。


ダライ・ラマ
2025年7月10日

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満九十歳を迎えるにあたって https://www.dalailamajapanese.com/news/20250706 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250706 このたび満九十歳を迎えるにあたり、チベット人コミュニティをはじめとする様々な場所で、支援者の皆さん、友人の皆さんが祝賀のためにご参集くださっているものと思います。多くの方がこの機会を活用され、思いやり、やさしい心、そして利他の心の大切さを率先して見つめ直そうとされていることに、心から感謝したいと思います。

私自身は一人の仏教僧に過ぎず、普通は誕生日を祝うこともありません。しかし、皆さんが私の誕生日に際して様々な行事を催して下さっていますので、私も皆さんといくつかの考えを共有できればと思います。

物質的な発展のために努力するのは重要なことですが、同時に、心の平安を重視することが大切です。親しい人だけでなく、すべての人に対して思いやりを持ち、善い心を育む。そうすることで、皆さんはこの世界をより良い場所とすることに貢献できるでしょう。

私自身のことについて述べるならば、私は引き続きこれまでの使命に取り組んでいきたいと考えています。それは、人間的価値を高めること、異なる宗教間の調和を促進すること、心や感情のはたらきを説く古代インド哲学の智慧にさらに脚光を与え、チベット文化とその遺産をより多くの皆さんに知って頂くことです。チベットの文化遺産は、世界に貢献できる可能性を大いに秘めているのですから。

私は、釈尊やシャーンティデーヴァ(寂天)のようなインドの学匠たちの教えを通して、日々の生活における決意や勇気を育んでいます。


この虚空が存在する限り
有情が存在する限り
私も存在し続けて
有情の苦しみを取り除くことが出来ますように
シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』第10章55偈


心の平和と慈悲の心を育むため、私の誕生日という機会をご活用いただき、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。タシデレ。祈りをこめて。


ダライ・ラマ
2025年7月5日

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第15回チベット宗教指導者会議 最終日 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250704 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250704 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州 ダラムサラ

今朝、ダライ・ラマ法王公邸の謁見室では、第15回チベット宗教指導者会議の、最後から2番目のセッションにあたる第8セッションが行われた。

謁見室正面の奥に着座されたダライ・ラマ法王の右側には、法王の隣から、サキャ派座主、メンリ・ティチェン・リンポチェ、ディクン・チェツァン・リンポチェ、タクルン・シャプドゥン・リンポチェの代理としてタクルン・マトゥル・リンポチェが着席し、左側には、法王の隣から、ガンデン僧院座主、ミンドリン僧院座主の代行であるミンリン・ケンチェン・リンポチェ、ドゥクパ・カギュ派の法主の代行としてケンポ・ゲド・リンポチェ、チョナン派法主のジョナン・ギャルツァプ・リンポチェが座った。中央チベット政権(CTA:Central Tibetan Administration)の各大臣と職員は、部屋の側面の椅子に着席した。

法王公邸の謁見室で行われた、ダライ・ラマ法王と第15回チベット宗教指導者会議の参加者との会談で、開会の辞を述べるペンパ・ツェリン内閣首席大臣。2025年7月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ペンパ・ツェリン内閣主席大臣は、法王と他の精神的指導者たちに敬意を表してから、会議で採択された3つの決議を以下のように読み上げた。

  1. 法王が先日発表された声明に対して、会議の参加者全員が同意と支持を表明した。
  2. 化身制度は宗教的な事柄である。中国はこれを政治的目的のために利用しており、私たちはこの事態を承認しない。
  3. 会議の参加者全員が法王の決定を受け入れる。

法王は、会議に参加した代表団と記念撮影をするため、仏壇と対面する位置に移動された。

第15回チベット宗教指導者会議の代表団と記念撮影をされるダライ・ラマ法王。2025年7月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

そして、法王は集まった人々に向かって話を始められた。
「私たちが亡命してから長い年月が経ちますが、チベット人は比類のない精神力をずっと保ち続けています。私たちは亡命先で暮らしながら、私の先導の下、チベットの宗教と文化を守るために本当によくやってきました」

「私に関して申し上げるなら、毎朝起きるとすぐに、この偈頌を唱えて菩提心を生起しています」


自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします


「菩提心は他者のために働く勇気を与えてくれます。これまで私は落胆することなく、完全に決然とした態度で行動することができてきました」

「皆さんが、この第15回チベット宗教指導者会議を招集してくれたことに感謝します」

「私はシリンからラサに行き、チョウォ・リンポチェ像の前で戒を授かりました」

第15回チベット宗教指導者会議の代表団との会談において話をされるダライ・ラマ法王。2025年7月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私たちは皆、チベットの大義を追求する決意を固めています。チベット三域(中央チベット・アムド・カム)の人々が団結を保っていることは、素晴らしいことです。私はこの団結した人々全体の指導者とみなされています。私はすべての決意と勇気をもってこの責任に取り組んできました」

「チベット仏教の伝統には、経典の教えの側面と体験に基づく教えの側面があります。私の仏法の兄弟姉妹たち、ラマと僧侶である皆さんには、これを護持していく責任があります。どうか尽力し続けてください」

ドゥドゥル・ドルジェ宗教担当長官が謝辞を述べ、法王、各伝統の長と、僧院の代表者たちなどに感謝の意を表した。

精神的指導者たちもまた、いくつかの言葉を添えた。サキャ派座主は、法王の長寿を祈り、法王のお言葉や願いを実現するために努力する必要性について触れた。ガンデン僧院座主は、「チベット人が輪廻に留まる限り、法王猊下、あなたが私たちを悟りへと導いてくださいますように」と述べた。

第15回チベット宗教指導者会議の代表団と会談されるダライ・ラマ法王。2025年7月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

メンリ・ティチェン・リンポチェは、法王のお言葉に感謝し、法王の助言に従うよう参加者全員に呼びかけた。ミンリン・ケンチェン・リンポチェは、法王がチベットを訪問し、もう一度チベットの地を踏まれることを願っていると言及した。ディクン・チェツァン・リンポチェは、「法王猊下は菩提心の動機によって、私たち有情のなかに姿を現してくださいました。私たちは本当に幸運です。そして90歳になられても、有情のために働く決意を固めてくださっています。猊下のご長寿をお祈りいたします」と述べた。

ケンポ・ゲド・リンポチェは、法王が、ダライ・ラマ化身制度を継続し、法王の転生者が出現することを望む多くの要請を受けていると報告されたことに留意し、「今回の会議で、私たちはこれを支持する決議を採択しました」と述べた。

タクルン・マトゥル・リンポチェは、先日、法王がこの声明を発表されたことに感謝し、法王の長寿を祈って以下の偈頌を読み上げた。


至高で崇高な、蓮華の保持者(パドマパーニ)であるあなたに祈願します
あなたは、言葉を自在に操る、金剛石のような穏やかな光です
あなたの卓越した洞察の水瓶は、高貴な智慧の甘露で満たされています
そしてあなたは、仏法の護持者たちの、広大で遊戯ゆげなる大海を美しく荘厳しょうごんする飾りです


チョナン・ギャルツァプ・リンポチェは、法王のやさしさと、その悟りの行いは、チベット人だけにとどまらず、すべての有情に向けられていることを皆に思い起こしていただきたいと述べた。そして、法王のご長寿と、法王がチベットで法輪を回すためにポタラ宮に戻られることを祈願した。

宗教担当長官は、この会談に参加したすべての人々に感謝し、至らない点に関する謝罪を述べた。そして、「世界のすべての善と幸福の源である仏法が末永く存続し、ラマ方がご長寿であり、チベット人が団結していますように」と言ってスピーチを締めくくった。

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ダライ・ラマ化身制度の継続確約についての声明 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250702 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250702 (チベット語の原文を英訳した記事からの和訳)

2011年9月24日に開催されたチベット伝統宗教高僧会議において、私は、チベット内外の同胞の皆さん、チベット仏教を信奉する皆さん、そしてチベットやチベット人とご縁のある方々に向けて、ダライ・ラマの化身制度を継続すべきかどうかについて声明を発表しました。その中で私は、「すでに1969年の時点で、ダライ・ラマの化身制度を将来において続けるべきかどうかは、それに関わる人々が決めるべきであると私は明言した」旨を伝えました。

また、「私が90歳くらいになったら、チベット仏教の高僧たち、チベット人をはじめとするチベット仏教を信奉する関係者と話し合い、ダライ・ラマの化身認定制度を継続するか否かを再検討したい」とも述べました。

私はこの問題について公に議論したことはありませんが、今日までの14年間、チベット仏教の伝統宗派の指導者である高僧たち、チベット人行政機構における議会、特別委員会、公務員、非政府組織、ヒマラヤ・モンゴル・ロシア地域にある地方僧院、中国本土の漢人たち、アジアの仏教徒たちが、ダライ・ラマの次世代の継続を切実に望み、その理由を書いた手紙を私に送ってくれました。とりわけチベット本土のチベット人の皆さんからは、様々な通信手段を用いて大変多くの継続の要請をいただきました。これらすべての要請に従い、私はダライ・ラマの次世代の継続を確約します。

将来のダライ・ラマの化身認定方法については、2011年9月24日の声明に明確に定めた通り、その責任はダライ・ラマ法王庁ガンデン・ポタン信託財団の執行役員に置かれています。彼らは、チベットの伝統仏教の各宗派の指導者である高僧の方々やダライ・ラマの系譜と切り離せない関係にある護法尊たちの助言を仰ぎながら、これまでの伝統に従って化身者の捜索・認定を実行する必要があります。

ここに私は、ガンデン・ポタン信託財団は将来の転生者を認定する権限を有する唯一の存在であり、他のいかなる人もこの問題に干渉する権限はないことを改めて表明いたします。


ダライ・ラマ

2025年5月21日
ダラムサラにて

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新ローマ教皇レオ14世に祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250509 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250509 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は今朝、ローマ・カトリック教会の新たなリーダーに選出されたローマ教皇レオ14世を祝して書簡を送られた。その中で、法王は次のように述べられた。

「貴殿の前任者の中には私が会って話をしたことがある方々もおられ、打ち解けた会話を楽しんだことを私は大変嬉しく思っています。また私は40年以上にわたり、さまざまな伝統宗教の代表者やキリスト教徒の兄弟姉妹の皆さんと有意義な意見交換を行ってきました。私は、人類はひとつの人間家族という信念を持って異なる宗教間の調和を促進することは、私自身の人生の使命のひとつであると考えています。実際、1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がアッシジで主催された世界の諸宗教による『世界平和を祈る集い』に参加したときには深い感銘を受けました」

「世界中の人々が多くの試練に直面している今、貴殿がローマ教皇に選出されたことは、カトリック社会だけでなく、より幸せな生活をより思いやりのある平和な世界に求めているあらゆる人々に新たな希望をもたらすものです」

法王は、祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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ローマ教皇の逝去に哀悼の意を表明 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250221 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250221 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

カトリック教会の頂点に立つローマ教皇フランシスコの逝去を受けて、ダライ・ラマ法王は、駐印ローマ教皇大使レオポルド・ジレッリ師に書簡を送り、哀悼の意を表明された。書簡の中で法王は、フランシスコ教皇の精神上の弟たち、妹たち、そして世界中の信徒たちに向けて、次のような祈りとお悔やみの言葉を捧げられた。

「フランシスコ教皇は、他者への奉仕にひたむきに取り組まれました。ご自身の行動によって、シンプルでありながら意義のある生き方を示してこられたのです。私たちが教皇に捧げることのできる最高の敬意は、心の温かい人になること、どこにいても、どのような形であれ、人のために尽くせる人になることです」

「祈りをこめて」と記して、法王は書簡を結ばれた。

ここダラムサラのチベット寺院ツクラカンでは、チベット人コミュニティによる追悼式が行われている。

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ミャンマー大地震の被災者に哀悼の意を表明 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250329 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250329 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、ミャンマーを襲った大地震によって多くの尊い命が失われ、多くの負傷者が発生していることに深い悲しみを表明された。

「愛する人を亡くされたご遺族の皆様にお悔やみを申し上げたいと思います。ミャンマーをはじめ、タイなど近隣諸国のすべての被災者のために祈りを捧げたいと思います」

「一方で、国連機関だけでなく、インドなどの国々が被災地に人道的支援を送り、救援活動を助けているのは実に心強いことです」

「ミャンマーの人々との連帯のしるしとして、私もダライ・ラマ基金に対し、適切なルートを通じて救助と救援のための寄付を行うよう依頼しました」

メッセージの締め括りに、法王は祈りを捧げられた。

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チベット地震の被災者に深い悲しみを表明 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250107 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250107 チベット自治区のシガツェ市ティンリ県とその周辺地域が今朝、壊滅的な地震に襲われたことを知り、私は深く悲しんでいます。多くの人命が失われ、多数の負傷者が出て、広範囲にわたり家屋や建物が倒壊しています。

亡くなられた方々のために祈りを捧げるとともに、負傷された方々の一日も早いご回復をお祈りしたいと思います。

ダライ・ラマ
南インド、バイラクッペにて

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カーター元米大統領の逝去に哀悼の意 https://www.dalailamajapanese.com/news/20241230 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20241230 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

米国のジミー・カーター元大統領の訃報を受けて、ダライ・ラマ法王は本日、そのご子息であるチップ・カーター氏に宛ててカーター・センターに書簡を送り、哀悼の意を表明された。

ジミー・カーター元大統領とダライ・ラマ法王。2002年

書簡の中で、法王は次のように述べられた。
「カーター大統領は、貧しい人々や社会的弱者を助け、紛争の平和的解決を模索し、世界中で民主主義と人権が向上するよう、何十年にもわたりたゆまぬ努力を続けられました。これほど長い年月を現役で走り続けるお姿は、他者のためにいかに生きるべきかという手本となりました。2002年にはノーベル委員会も人類の幸福に対する元大統領の貢献を認めて、ノーベル平和賞を授与しました」

「また、カーター大統領がチベットの状況に深い関心と懸念を寄せてくださったこと、そしてチベットの人々の苦境を和らげるためにイニシアチブをとってくださったことに、私たちチベット人は感謝の念を抱き続けています」

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ドナルド・トランプ氏を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20241107 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20241107 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、米国大統領選挙の勝利を祝してドナルド・トランプ氏に書簡を送られた。その中で、法王は次のように述べられた。

「私は長年にわたり、民主主義・自由・法の支配の擁護国であるアメリカ合衆国を称讃してきました。世界中が米国の民主的な展望とリーダーシップに大きな期待を寄せています。世界のあちこちで大きな不安と激動が起きている今、貴殿が平和と安定をもたらすためにリーダーシップを発揮されることを私は心から願っています」

「平和・非暴力・慈悲の文化であり、人類全体に恩恵をもたらす可能性を持つチベット古来の仏教文化の保持に努めてきた私たちチベット人に対して、歴代の米国大統領と国民の皆様から支援をいただいてきたことを私たちは光栄に思っています」

そして法王は、「貴殿がアメリカ国民の願いを実現し、世界の平和に貢献するために、目の前に立ちはだかる多数の問題を解決することができるよう祈念したいと思います」と結ばれた。

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オマール・アブドゥラ氏を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20241016 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20241016 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インド北部の連邦直轄領ジャンムー・カシミール地方の議会選挙の結果を受けて、オマール・アブドゥラ氏が率いる連立政権の勝利と州首相就任を祝して同氏に書簡を送られた。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「以前にもお伝えしたように、私はシェイク・アブドゥラ氏の時代から貴方に至るまで、三世代にわたって貴方の一族と知り合う機会に恵まれました。私はこの友情を大切に思っています」

「貴方が目の前に立ちはだかるあらゆる困難を乗り越えて、ジャンムー・カシミール地方の人々の願いを実現するための好機とすることができるよう願っています」

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